退職金制度コンサルティング
退職金制度コンサルティングの概要
退職金制度は人事制度の一部であり、自社の人事ポリシーや人事戦略に基づいた設計がなされるべきです。しかし、退職金制度が長らく見直されていない企業も多く、人事ポリシーや人事戦略に沿わない退職金制度を運用しているケースも少なくありません。
また改正高年齢者雇用安定法の施行により、自社の定年年齢や再雇用制度(継続雇用制度)の見直しに着手されている企業では、賃金制度の変更と並行して、退職金制度の見直しが必要となるケースが生じています。
人事戦略研究所の退職金制度コンサルティングは、①退職金制度を新しく導入される場合、②人事制度の見直しに伴って必要となる退職金制度の変更、③定年延長や再雇用制度の変更に伴う退職金制度の見直しまで、各企業のおかれる背景・事情に応じた制度設計を行います。
退職金制度コンサルティングのステップ
Step1 現状分析
現状分析では、定量・定性的な観点から、貴社の退職金制度の問題や想定されるリスクを洗い出します。
①定量分析
退職金制度が既に規定されている場合は、世間水準データを参考に貴社の退職金水準の外部競争力を確認します。また現時点における退職金要支給額が、準備資金(外部積立や内部積立)と大きく乖離していると想定される場合は、その不足額を把握しておく必要があります。退職金は年度ごとに発生する額は少額でも、退職時に支払う際にはまとまった額になっているため、あらかじめ十分な準備をしておくことが必要です。将来のリスクを最小限にしておくためにも、不足額が大きい場合は解消方法の検討が必要です。
②定性分析
現行の退職金制度の退職金規程や規約の内容を確認し、人事戦略やその他の人事制度との整合性を確認します。またヒアリングを通じて、制度導入当時の設計思想を確認すると同時に、現在の人事ポリシーや人事戦略に照らし合わせて課題を抽出します。
Step 2 方針策定/制度設計
現状分析結果を踏まえて、貴社の退職金ポリシーをプロジェクト内の議論を通じて明確化していきます。その上で、退職金ポリシーに沿った退職金制度の概要をカタチにしていきます
①退職金制度の方針策定
退職金制度は、法律で義務付けられているものではなく、あくまでも企業が任意で導入するものです。ただし一度就業規則に規定すれば、会社側に支払いの義務が生じることになります。よって新規で導入を検討する場合は、本当に導入する必要があるのか、また導入の目的は何かを明確にしておきます。既存の退職金制度変更する場合も、現状課題を明確にした上で、新しい退職金の軸となる目的・方針を明確にしたうえで、制度設計に着手します。
②退職金水準
定量分析結果や方針をもとに、退職金のおおよその水準を固めます。在職時の能力や役割、評価などを加味する場合は、標準者や優秀者別に支給すべき水準を検討します。また一般的によく定められている退職事由(会社都合や自己都合)による支給差を設けるか、などについてもここで検討を行います。
世間水準データ
③算定方式
退職金の算定方式は、パターンごとに特徴があり、勤続要素を中心とするか、在職時の評価や役割を加味するかなど、自社の人事ポリシーと照らし合わせながら検討します。また退職金は長期に亘って人事管理面に影響があるしくみであり、運用管理体制なども考慮しながら、各方式のメリット・デメリットを踏まえて決定します。
主な退職金算定方式の考え方と特徴
勤続年数定額方式 | 退職時給与連動方式 | 別テーブル方式 | ポイント方式 | |
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考え方 | 勤続年数に応じて定められている一定額を支給する方法です。給与とは切り離した形のため、あくまでも「何年勤めたか」という勤続貢献に対して支給する方式です。 | 退職時直前の給与額を基に一定の支給率を乗じて計算する方法です。支給率は勤続年数に応じて大きくなるケースが多く、年功的な要素が比較的高い計算方式です。 | 退職時給与連動方式と計算方法は似ていますが、別テーブル方式は月例賃金とは別に「退職金制度専用のテーブル」を設ける点が異なります。その別テーブル金額をもとに支給率を乗じて計算する方式です。 | 貢献要素別(職能等級別、役職別、評価ランク別など)に設定したポイントを、毎年個人別に付与し、退職時までに付与されたポイント合計に、ポイント単価を乗じた形で算出される計算方式です。 |
特徴 | 勤続年数=定額のため、シンプルでわかりやすい。複雑な計算が不要。ただし勤続年数のみで決まるため、在職時の成果や担った役割などを退職金制度上で考慮したい場合は適さない。 | 退職時の給与をベースに決まるため、計算方法は比較的シンプル。ただしこの方式は、もともと長く勤めると給与が上がることを前提に作られたしくみであり、退職前に給与が下がることを想定していないケースが多い。給与が変動しやすい制度や、年功要素を排除した人事制度を導入している場合は在職中の貢献度を反映しにくい。 | 月例賃金とは切り離して算出されるしくみのため、月例の賃金制度を変更しても影響を受けない。別テーブルが勤続年のみで設計されているケースが多いが、役割によるテーブル設計も可能となる。このため年功的に決定されるか、その他の要素が加味されるかは、制度の設計方法による。 | 月例賃金とは切り離して運用されるため、賃金制度変更の影響を受けない。また、ポイント付与理由を複数の観点で設定できるため、会社が意図する貢献度を複合的に見て支給することが可能。ただし毎年ポイント計算をして退職時まで管理する必要があるため、運用面ではやや手間を要する。 |
算定方式別の参考例
④資金積立
制度設計と同時に、退職金の資金積立の方法を検討します。外部積立で確定拠出年金や確定給付企業年金、各種共済制度を活用するか等、メリット・デメリットを比較検証しながら確定します。
Step3 簡易シミュレーションの実施
制度設計の内容をもとに、企業年金の掛金など会社側が毎年負担するコスト額のシミュレーションを行い、人件費に与えるインパクトを確認します。シミュレーションの結果をもとに、必要があれば制度設計の内容を微修正し、制度としての完成度を高めていきます。 また、現行退職金制度からの改定となる場合は、移行措置に関する方針や実施方法も併せて検討を行います。
Step4 制度導入
制度導入に向けて、社員説明用資料や現行制度からの変更通知書など、必要な資料の作成を行います。細かな運用ルールや移行措置についてもここで検討を行い、最終的には制度内容やルールを「退職金制度ガイドブック」として1冊にまとめた上で、社員に周知するための説明会を実施します。また経営陣への答申や金融機関との調整といった退職金制度導入に向けた諸手続きについても、必要に応じて都度アドバイスやフォローを行います。
ガイドブックサンプル
社員説明会の実施
※本サービスでは、企業年金の運営管理機関のご紹介は承っておりません。弊社では、独立系のコンサルティング会社として、特定の制度や特定の金融機関に誘引することなく、中立的な立場で制度設計を行います。
※運営管理機関が主として実施する年金規約策定等の実務および退職金規程の作成は本サービスの内容に含まれておりません。