組織コミュニケーション①:テレワークから考えるコミュニケーション

新型コロナウィルスの影響で、否応なくテレワークを実施したという企業もあると思うが、時間を経るにつれ、テレワークにおけるコミュニケーションの実態が浮き彫りになっている。ここでは2つの調査結果を紹介する。
 
一つ目の調査(*1)によれば、「テレワークでの不安」として、「非対面のやりとりは相手の気持ちがわかりにくく不安」が最も多く、「上司から公平・公正に評価してもらえるか不安」「上司や同僚から仕事をさぼっていると思われていないか不安」「相談しにくいと思われていないか不安」と続く。いずれも、コミュニケーションや人間関係に関わる面で不安を抱えていると言えよう。一方で、「テレワーク実施のメリット」として、割合として多くはないものの「人間関係の摩擦や煩わしさが少ない」や「会議で発言しやすくなった」「職場内のコミュニケーション頻度が上がった」といったものが挙がっており興味深い結果となっている。
 
二つ目の調査(*2)によれば、テレワークにおいて、「職場でコミュニケーションは取れていると思いますか?」という質問に対して、全体の約7割はとれていると回答しているものの、年代別にみると、年代が上がるほどコミュニケーションがとれていないと感じている人が多い結果となっている。また、コミュニケーションがとれることにより、「働きやすさ」「チームワーク」「仕事の効率」等の面で効果がある一方で、コミュニケーションがとれないことにより、「ストレス」「チームワーク」「働きやすさ」等の面に影響があるという結果となっている。
 
以上の調査結果からわかることは、テレワークによって、コミュニケーションがプラスに働いている企業・人もいれば、マイナスに働いている企業・人もいるということであり、コミュニケーションの内容によっても変化に違いがあるということである。
 
ところが、つい我々は、ネガティブな面ばかりが強調されてしまったり、環境変化に着目するあまり、コミュニケーションをこれまでとどう変えればよいかという方法論を探し求め、右往左往してしまったりする。
 
いま、我々が未曽有の経験を強いられている現況を一歩引いてみてみると、テレワークを実施している、していない関係なく、改めて、「組織におけるコミュニケーションのあり方」を考える良い契機になっているのではないかと思うのである。だからこそ、急がば回れ。短絡的なコミュニケーションの方法論に飛びつくことなく、組織におけるコミュニケーションの意義について、次回より何回かに分けてその本質を考察していくことで、これからのヒントを探ってみたいと思う。
 
 
 
*1:パーソル総合研究所 「第四回・新型コロナウイルス対策によるテレワークへの影響に関する緊急調査」(調査期間:2020年11月18日~11月23日)
 
*2:『エン転職』1万人アンケート(2020年6月)「テレワークにおける社員コミュニケーション」実態調査

執筆者

飯塚 健二 
(人事戦略研究所 副所長)

独立系システム開発会社にて、システムエンジニア・人事・経営企画等の実務を経験。その後、大手金融系シンクタンク、監査法人系ファームにて人事・組織コンサルティングに従事した後、現職。主に人材・組織開発領域において、中小企業から大手企業まで規模・業界を問わず、15年以上の幅広いコンサルティング実績を持つ。
これまでに培った実践知と学際的な理論知(社会科学、認知科学、行動科学、東洋哲学等)を駆使しながら本質的・統合的・実践的なコンサルティングを行う。一社一社に真摯に向き合い、顧客目線に立った支援スタイルを信条とする。
キャリアコンサルタント。GCDF-Japanキャリアカウンセラー。iWAMプラクティショナートレーナー。

※コラムは執筆者の個人的見解であり、人事戦略研究所の公式見解を示すものではありません。

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