いよいよテレワーク廃止!? 企業の悩みの種になる

テスラのイーロン・マスクCEOが、実質的な「リモートワーク禁止令」を社内に通知したということで話題になっている。先月にはホンダがテレワークから原則出社へ移行することが取り上げられたところである。新型コロナウイルス感染症の影響で一気に増えたテレワークという働き方。また元に戻っていくのだろうか。

 

総務省の調査によると、図表①の通り、2020年(令和2年)からテレワークの導入が鰻登りに増えている。テレワーク促進助成金や政府が「出勤者数の7割削減」を呼びかけた影響もあってか、いまでは半数の企業が導入している。新型コロナウイルス感染症以前のことを思い返せば、テレワークは、育児や介護等限られた人の働き方として認識されていた傾向が強かったが、いまでは対象を問わずに利用されている。

 

テレワークの導入状況

 

以前から「働き方改革」は叫ばれていたわけだが、新型コロナウイルス感染症の影響により、皮肉にも一気に進んだ形となる。そして、「勤務者の移動・通勤時間の短縮や混雑回避」「業務の効率性(生産性)の向上」「ワークライフバランスの向上」等のテレワークによるメリットも体感的に明らかになった。語弊を恐れずに言えば、この未曽有の出来事を通じて、テレワークの“良さ”を発見した・体感したという方も多いのではないだろうか。

実際、⽇本⽣産性本部の調査によると、図表②の通り、「自宅での勤務に満足しているか」という質問に対して、「満足している」「どちらかと言えば満足している」と回答した人の割合は、この2年で増加傾向にあり、最新データ(2022年4月)によると、約84%の方がポジティブな回答をしていることが分かる。

 

自宅での勤務に満足しているか

 

また、同じ⽇本⽣産性本部の調査によると、図表③の通り「コロナ禍収束後もテレワークを行いたいか」に対して、「そう思う(34.5%)」「どちらと言えばそう思う(37.3%)」と回答(2022年4月)しており、約70%を超える割合になっている。さらに、電通総研と電通未来予測支援ラボの調査でも、図表④の通り、約70%超の人が今後もテレワークを続けたいと回答しており、テレワークという働き方は今後定着していくかのようにも感じる。

 

コロナ禍収束後もテレワークを行いたいか

 

新型コロナウイルス感染症に対する対策として

 

ゆえに、「テレワーク廃止」となると、以前の働き方に戻ってしまい、混雑した状況下での移動や通勤時間の発生、ワークライフバランスの低下など、一度知ってしまった“良さ”を手放さなければならず、抵抗感を持つ人も多いことが予想される。だからこそ、味を占めた人たちにとっては「テレワーク廃止」のニュースはセンシティブになってしまう。テレワークを条件に求職している人も増えているという。テレワークが推奨される企業への入社や転職が進んでしまうかもしれない。そういう意味で、テスラやホンダのニュースは本当に大丈夫かと思ってしまう側面がある。

 

 

一方で、テレワークのデメリットも体感している。特に大きいのは、コミュニケーションの問題である。例えば、すぐにそばにいれば気軽に話せることも、テレワークとなれば、メールやチャット等の文字情報にわざわざ変換しなければならない。電話をするにしてもいまして良いものかはばかられる。即ち気軽な「即コミュニケーション」ができない。あるいは、オンライン会議だと、その場の雰囲気を掴みながら話したり、相手の表情を汲みながら聞いたりすることが難しい。視覚・聴覚に依存するオンライン会議よりも、体感覚も駆使したオフライン会議の方が生産的であったり、創造的であったり、一体感を味わえたりする。即ち効果的な「体感コミュニケーション」ができない。

こういった「即コミュニケーション」や「体感コミュニケーション」はやはり出社して顔を突き合わせてこそできるものである(ちなみに、“複合現実”なるテクノロジーが生まれてきており将来的には解消できるかもしれないが、いま現段階では難しい)。だからこそ、テレワークに依存し過ぎないことは、よりよい仕事をしていくためも、組織としての一体感を持つためにも必要不可欠だと言える。

さらに、忘れてはならないことは、テレワークができる業種や職種は限定されるということである。例えば、管理職や事務職、専門職・技術職、営業職等はテレワークを相対的に行いやすいがそれ以外の職種はそもそも難しい。これまでは、「出勤者数の7割削減」という大義名分があった。だからこそ、会社としてその大義名分を果たすために、テレワークができる人はテレワークにするということで、社員の納得感を得ることもしやすかった。いや納得せざるを得なかった。ところが、今後アフターコロナとなり、その“大義名分”がなくなったとき、職種間による不公平感が露になることが予想される。その時に、テレワークが当たり前の職種に対して、あるいはテレワークができない職種に対して、どう説明するのか、会社としての難しい判断が求められることになる。そういう意味で、テスラやホンダのニュースは頷ける側面もある(実際、テスラは管理職、ホンダは営業部門を対象にしているようである)。

 

十把一絡げに論じることはできないが、テレワークが非常時だけの限定的な働き方=原則出社とするのか、常態的な働き方にするのか、いよいよこれから難しいかじ取りが求められる。おそらく、二者択一的な判断ではなく、“ハイブリッドワーク”という言葉も出てきているように、そのバランスをどう図っていくか、その匙加減が試されている。いずれにせよ、まだ先行きは分からないが、早めに会社としてのスタンスを明確にし、制度や環境整備に着手することが肝要と言えよう。

 

 

・出所:総務省「令和3年通信利用動向調査」

・出所:公益財団法⼈ ⽇本⽣産性本部「第9 回 働く⼈の意識に関する調査」(2022年4月22日)

・出所:電通総研と電通未来予測支援ラボ「クオリティ・オブ・ソサエティ年次調査2021」
https://dentsu-ho.com/articles/8178
 

 

執筆者

飯塚 健二 
(人事戦略研究所 副所長)

独立系システム開発会社にてSE・人事・経営企画等の実務を経験。その後、大手金融系シンクタンク、監査法人系コンサルティングファームにて人事コンサルタントとして従事した後、現職。中小企業から大手企業まで規模を問わず幅広い人事・人材育成コンサルティング実績を持つ。 経営戦略の実現に向けた人事制度改革・定着化や要員・人件費マネジメント等のハードアプローチに加え、言語科学や行動科学の知見を活かした人材開発(コミュニケーション研修やビジネススキル研修、コーチング・ワールドカフェ等)を手掛ける。
キャリアコンサルタント。GCDF-Japanキャリアカウンセラー。iWAMプラクティショナートレーナー。

※コラムは執筆者の個人的見解であり、人事戦略研究所の公式見解を示すものではありません。

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