組織コミュニケーション⑥:意義を考える(4)関係構築

前回に続き、組織におけるコミュニケーションの意義について考察していきたい。前回まで、「目的共有」「分業調整」「創造・学習」について取りあげてきたが、今回は最後の「関係構築」について述べたいと思う。

 

まず、「関係構築」の重要性を示す考え方として、ダニエル・キム教授が提唱した「組織の成功循環モデル」というものがある。このモデルは、図に示すように、「関係の質」がよくなれば、そこから良い考えやアイデアが生まれ、それが良い行動につながり、成果が出るという好循環が生まれる。逆に、「関係の質」が悪ければ、言いたいことも言えず、そこから良い考えやアイデアは生まれず、良い行動に結びつかないため、成果も出ずと悪循環に陥ってしまう。ここでのポイントは、すべては「関係の質」からはじまるということである。これは、お互いが言いたいことや言うべきことを、遠慮せず・恐れずに、言えるような関係であり、その構築のために「コミュニケーション」をいかにとるかが重要である。

 

図:組織の成功循環モデル(ダニエル・キム)

 

組織の成功循環モデル(ダニエル・キム)

 

では、関係構築に向けて、どのように「コミュニケーション」をとればよいか。ここでご紹介したいポイントは2つ。「頻度」と「傾聴」である。

 

まずは「頻度」。組織内でのコミュニケーション頻度を高めることが一つ目のポイントである。「単純接触効果」と呼ばれる心理学の理論がある。これは、繰り返し接すると好意度や印象が高まる効果があるというもの。一年に一度会う人よりも、毎月会っている人の方が身近に感じるというのは誰しも経験したことがあるだろう。これを利用して、コミュニケーションの頻度を意図的に増やすのである。最近では、上司と部下が定期的に面談を行う「1on1ミーティング」が取り沙汰されているが、これも関係構築のために有効な手段の一つである。
 

2つ目のポイントは「傾聴」。(これは、前のブログ(組織コミュニケーション④:意義を考える(3)創造・学習その1(https://jinji.jp/hrblog/2548/))で述べた「しっかりと聴く」と同じことなので、そちらも併せて参照されたい)
 
次のような姿勢・態度や心構えで聴くことができているだろうか?
 

 ・相手の目を見て聴く

 ・うなづきやあいづちをしながら聴く

 ・何かをしながら聴かない

 ・相手の話の腰を折らない

 ・椅子に腰をもたれさせて聴かない

 ・腕組み、肘つき、脚組みをして聴かない

 ・相手の話を否定せずに最後まで聴く

 ・共感的にしっかりと聴く 等々
 

上司と部下の関係に限らず、組織内でのコミュニケーションにおいて、こういった傾聴する姿勢・態度が前提にあることが、関係構築に向けて重要なポイントである。

 

以上ここまで6回に分けて、組織におけるコミュニケーションの意義について、「目的共有」「分業調整」「創造・学習」「関係構築」の4つの観点から考察してきた。これらは、組織を運営していくうえで必要不可欠なコミュニケーションであり、決してテレワークかどうかは問わない。改めて、4つの意義をもったコミュニケーションが組織内でできているか、チェックして頂ければ幸いである。

 

執筆者

飯塚 健二 
(人事戦略研究所 副所長)

独立系システム開発会社にて、システムエンジニア・人事・経営企画等の実務を経験。その後、大手金融系シンクタンク、監査法人系ファームにて人事・組織コンサルティングに従事した後、現職。主に人材・組織開発領域において、中小企業から大手企業まで規模・業界を問わず、15年以上の幅広いコンサルティング実績を持つ。
これまでに培った実践知と学際的な理論知(社会科学、認知科学、行動科学、東洋哲学等)を駆使しながら本質的・統合的・実践的なコンサルティングを行う。一社一社に真摯に向き合い、顧客目線に立った支援スタイルを信条とする。
キャリアコンサルタント。GCDF-Japanキャリアカウンセラー。iWAMプラクティショナートレーナー。

※コラムは執筆者の個人的見解であり、人事戦略研究所の公式見解を示すものではありません。

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