評価と教育をリンクさせる ④
人事考課(人事評価)
評価者教育を兼ねた人事評価表づくり
人事評価制度を機能させるためのカギを握るのは評価者です。評価者のレベルが高ければ、どんな人事評価表でもうまくいきますし、逆に評価者のレベルが低ければ、人事評価表をいくら作り込んでも無駄だと言えるでしょう。そう考えると、人事評価制度を導入・変更する際には、評価者への教育が欠かせません。
評価者のレベル向上を考えるに当たり、まず教育すべきは「評価基準の理解」です。ただし、これが非常に難しいことで、作った基準を浸透させるには時間がかかります。では、どういう方法があるでしょうか?
それは、評価基準をつくる段階から、評価者に関わらせることです。実際に、様々な企業のご支援をしていると、人事評価項目自体に大きな差はありません。人事評価項目は、
① 経営理念や行動指針など、会社が大切にしていること
② 職種(営業、製造など)毎に必要なこと
③ 役割レベル(管理職、専門職など)毎に必要な事
といった観点で作っていきますが、仕事をする上で大切なことは、各社でそれほど変わるわけではありません。違いが出るのは、評価項目の”定義”と”評語”です。
【例】
・ 評価項目: 報連相
・ 評価定義: 報告・連絡・相談を的確に、タイムリーに行っていたか
・ 評価評語: D…報連相がなく、トラブルになることが多かった
C…報連相はあるが、遅れることが多く、トラブルになることがあった
B…業務に支障をきたさない程度には報連相を行っていた
A…報連相を積極的に行い、業務を円滑に進めることができた
S…報連相を的確に行い、トラブルを未然に防ぐことが多かった
これでも問題ない基準だと言えますが、実際に評価をしようとすると、「どの程度まで報連相を求めるか?」「一般社員と主任級では求めるレベルが違うんじゃないか?」「支障をきたさないレベルと、円滑に進めるレベルの違いは何か?」といった疑問が出てきます。そういった疑問について、経営者クラスと管理者クラスで話し合いながら、求めるべき基準を擦り合わせていくことが、評価基準を理解・浸透させるという作業です。
社員教育を進める際に、「共通言語をつくる」というステップを踏みますが、これはその典型だと言えるでしょう。上記【例】をベースにしながら、”定義”や”評語”について話し合い、自社オリジナルの人事評価表を作っていくことは、非常に有効な教育手段となります。
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執筆者
森谷 克也
(人事戦略研究所 所長)
5~10年先の内部・外部環境を想定し、企業の成長を下支えする 「組織・人事戦略」 の策定・運用が図れるよう、 ≪経営計画-人事システム-人材育成≫ を連動させる組織・人事戦略コンサルタントとして実績を積んでいる。また、カタチや理論に囚われない、「中小企業の実態に即したコンサルティング」 を身上とし、現場重視で培った独自のソリューションを多く開発している。
※コラムは執筆者の個人的見解であり、人事戦略研究所の公式見解を示すものではありません。