評価と教育をリンクさせる ⑤

評価者研修を充実させる
 
繰り返しますが、人事評価制度がうまくいくかどうかのカギを握るのは、評価者です。評価者が優秀であれば、一般的な人事評価表を使ってもうまくいきますし、評価者が優秀でなければ、どんなに人事評価表を作りこんでもうまくはいきません。そういった意味で、評価者のレベルアップは非常に重要です。
 
少し前のブログで、「評価傾向」について述べました。よく耳にする「ハロー効果」「寛大化傾向」「中心化傾向」「対比誤差」などです。
※詳しくは評価傾向への対策参照
 
私共が行う評価者研修でも、これらについて説明し、評価者に注意を促します。研修の受講者も、「なるほど」という表情で聞いていますが、自分がどんな評価傾向を持っているかは理解できていないようです。
 
それらを客観的に伝えるには、評価結果を集計・分析し、それぞれの評価傾向を他人と比較するのが効果的です。人事評価結果をオープンにしていない会社では難しいですが、ある程度オープンにしている企業では可能です。
 
分析するにあたっては、評価者自身が下した評価について、下記の2つを確認します。
観点①…のべ評価項目数(=部下の数×評価項目数=)のうち、どの評価評語に何割が配分されているか
(例) 各評価項目を1~5点で評価するなら、1点=○%、2点=○%、3点=○%、4点=○%、5点=○%
 
観点②…部下の自己評価(実施している場合に限る)の点数について、アップさせたか、ダウンさせたか、維持したか
(例) 部下の自己評価点を引き上げた=○%、引き下げた=○%、変えなかった=○%
 
こうやって可視化していけば、例えば「中心化傾向」なら観点①において3点の割合が増えますし、「寛大化傾向」なら観点①において1・2点より4・5点の割合が増えます。また、「厳格化傾向」なら観点②において部下の自己評価点を引き下げる傾向が強く出るかもしれません。これらを他の評価者と比較すれば、自分がどんな評価傾向を持っているのか、より理解しやすくなります。
 
ただし、分析においては、(1)部下の自己評価が高過ぎないか、低過ぎないか、(2)部下の仕事レベルが相対的に高過ぎないか、低過ぎないか、(3)評価項目の記述内容に大きく影響を受けていないか、等を確認する必要がありますが、しっかりと分析をすると、評価者自身に良い気づきを与えられます。一度、お試し下さい。

執筆者

森谷 克也 
(人事戦略研究所 所長)

5~10年先の内部・外部環境を想定し、企業の成長を下支えする 「組織・人事戦略」 の策定・運用が図れるよう、 ≪経営計画-人事システム-人材育成≫ を連動させる組織・人事戦略コンサルタントとして実績を積んでいる。また、カタチや理論に囚われない、「中小企業の実態に即したコンサルティング」 を身上とし、現場重視で培った独自のソリューションを多く開発している。

※コラムは執筆者の個人的見解であり、人事戦略研究所の公式見解を示すものではありません。

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