ヒトと組織の戦略に『パーパス』を活用する①

近年、若い世代を中心に、『社会に役立つ仕事であるか?』を重視する人が増えているようです。またSDGsへの取り組みのように、中長期的な視点で社会と関わる企業活動を行うこともより重要視されるようになってきました。このような時代背景もあり、最近あらためて、企業の存在目的である『パーパス』というキーワードが話題に上ることが多くなってきたように思います。
 
『パーパス(purpose)』とは、一般的には『目的』や『意図』として訳される言葉ですが、近年では企業や組織が何のために存在するか?という『存在意義』としての位置づけで使われることが多くなりました。
人事コンサルティングの現場でも、これまで言われてきた『経営理念』や『ミッション』、あるいは『ミッション・ビジョン・バリュー(M・V・V)』などと何が違うのか?といった質問を受けることも増えてきています。
上記の質問に対して、言葉の定義やとらえ方によって違いを説明する場合もありますが、大まかにとらえた場合は、企業の根本的な『軸となる何か』をもとに企業活動を行ったり、組織やヒトとの協働を展開していくという文脈においては、『経営理念』も『ミッション』も『パーパス』も表現こそ若干違いますが、おおよそ似たようなものとして観ても問題はないと思っています。
というのは、これまでも多くの企業で『経営理念』あるいは『ミッション』という言葉で、内容や表現は様々であっても、企業として大切にする『軸』、あるいは『根本となるもの』については同じような意図・文脈で制定されてきたことが多いからです。
 
個人的には、企業として何を行うべきか?という『DO』を軸にした表現の場合は『ミッション』、企業としてどのように在りたいか?という『BE』を軸にした場合は、『パーパス』という言葉が馴染みやすいのではないかと思います。但し、どのような表現を使うかについては、特に明確なルールなどもありませんので企業ごとに自由に選択、定義して活用すればよいでしょう。
 
このようなこともふまえた上で、次回以降のブログでは、企業の根本的な『軸』となる何かについて、いったん『パーパス』という言葉を用いて、『パーパス』と人事戦略や人事諸制度、教育制度との構造的なつながり、各種制度との連動のさせ方等について述べていきます。
 
次回は、企業がパーパスを策定し、機能させた場合のメリットや影響力について話を進めたいと思います。

執筆者

花房 孝雄 
(人事戦略研究所 上席コンサルタント)

リクルートグループにて、社員の教育支援に従事。その後、大手コンサルティング会社にて業績改善のためのマーケティング戦略構築などの支援業務に従事。現在は新経営サービスにて大学の研究室、人材アセスメント機関などとの連携による組織開発コンサルティングを実施中。
主な取り組みとして、人的資源管理研究における最新知見を背景とした「信頼」による組織マネジメントや企業ビジョンを構造的に機能させるビジョン浸透コンサルティングを展開中。

※コラムは執筆者の個人的見解であり、人事戦略研究所の公式見解を示すものではありません。

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