ヒトと組織の戦略に『パーパス』を活用する②

■企業がパーパスを策定し、機能させた場合のメリットについて(その1)
 
今回は、企業がパーパスを策定し、機能させた場合のメリットについて述べていきたいと思います。

まず1つめは、近年、これまで以上に『パーパス(purpose)』が働く人材側から見て、企業を選択する基準として着目されだしたというトレンドがあり、『パーパス(purpose)』の策定が人材採用や人材活用に良い影響を及ぼすことが挙げられます。『パーパス(purpose)』の策定と提示が企業にとって、人材採用面でメリットを生み出すといえます。

 

実際に、WEBなどで近年発表されている「パーパスに対する意識調査」の様々な結果をみても、おおよその傾向として、入社時にパーパスの内容を選択基準として考える人が増加していること、現在就業中の社員にとっても自社のパーパスについて意識する社員が増えていることが見えてきます。

 
 
1.ウォンテッドリー株式会社による企業の「パーパス」と採用をテーマに行った調査結果から援用

 

◆ 調査概要

 ・調査名:企業のパーパスと採用に関する調査
 ・対 象:求職者 及び 採用担当者(Wantedly利用者/非利用者の双方とも含む)
 ・期 間:2022年4月15日〜4月22日
 ・人 数:1,340名(求職者1,182名 及び 採用担当者158名)

 
【調査結果のポイントなど】

(1)入社時にパーパスを「かなり重視した」人は年々増加し、直近5年間で倍増している

(2)給与よりもパーパスを重視して転職した事がある人は43%。今後そうすることがあると思う人は63%

(3)パーパスに共感している人とそうでない人とでモチベーションが高い人の割合に2.5倍の差がみられる

 
 当該HPのリンクは以下となります

 https://www.wantedly.com/hiringeek/recruit/pr_purpose/

 

 

2.株式会社学情による2024 年 3 月卒業(修了)予定の大学生・大学院生を対象とした、「パーパス」に関する調査結果から援用

 

◆ 調査概要

・調査期間:2022 年 11 月 12 日~11 月 24 日

・調査機関:株式会社学情

・調査対象:「あさがくナビ 2024(ダイレクトリクルーティングサイト会員数 No.1)」へのサイト来訪者

・有効回答数:370 件

・調査方法:Web 上でのアンケート調査

 
【調査結果のポイントなど】

(1)「パーパス」を制定する企業は、「好感が持てる」と回答した学生が7割を超える

(2)「パーパス」を知ると「志望度が上がる」と回答した学生が6割を超える

(3)約6割が、就職活動において「パーパス」や「社会貢献に関する考え方」を意識

(4)自身の「パーパス」や、自身が解決したい社会課題を意識している学生が4割を超える

 

 当該HPのリンクは以下となります

 https://service.gakujo.ne.jp/221129

 
 
上記の調査だけでなく、パーパスに関する他の意識調査でも、若い世代を中心に「パーパス」への注目度が高くなっている傾向がうかがえます。

 

生産年齢人口の減少と共に、若手人材の獲得競争は今後もずっと続くこと、そして若手人材こそが企業の将来基盤を創っていくことをふまえると、若い世代の価値観や感性からも注目度の高い『パーパス』に対して、企業としてしっかり示せるものがあることは重要な要素となってきます。

言葉を換えれば、働くヒト(自社に関わるヒト含む)に対して、「共感を生み出す」ことのできるしっかりとした『パーパス』を持ち、それらを示せることは社員の採用力や定着率の向上を考えた場合、大きなメリットをもたらすでしょう。

また、採用力や定着率だけでなく、近年、パーパス同様に着目されている組織のエンゲージメントにおいても好影響や良い効果をもたらします。

 

今回のブログでは、現在の時流やトレンドの視点から観た『パーパス』策定のメリットについて、解説しましたが、次回は、トレンドや一時の流行とは関係なく、『パーパス』が原理原則的に組織や企業にもたらすメリットについて解説していきます。

執筆者

花房 孝雄 
(人事戦略研究所 上席コンサルタント)

リクルートグループにて、社員の教育支援に従事。その後、大手コンサルティング会社にて業績改善のためのマーケティング戦略構築などの支援業務に従事。現在は新経営サービスにて大学の研究室、人材アセスメント機関などとの連携による組織開発コンサルティングを実施中。
主な取り組みとして、人的資源管理研究における最新知見を背景とした「信頼」による組織マネジメントや企業ビジョンを構造的に機能させるビジョン浸透コンサルティングを展開中。

※コラムは執筆者の個人的見解であり、人事戦略研究所の公式見解を示すものではありません。

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