ヒトと組織の戦略に『パーパス』を活用する⑧

■企業がパーパスを策定し、機能させた場合のメリットについて(その5)

前回に続き、企業として共感を生み出すことのできる『パーパス(purpose)』があることによって生まれる7つのメリットの6つ目について解説していきます。

 

6.現場の様々な場面での判断軸が生まれる

 

自社にとって中長期的にも効用をもたらす『パーパス(purpose)』が存在することによって、トップから末端まで(経営者から新入社員、正社員だけでなくパート社員などまで)自社としての大切な価値観、行動基準が共有され、現場の様々な場面での判断軸が生まれます。

そして、現場の様々な場面で自社が大切とする価値観・行動基準に基づく判断軸が機能することで、現場ごとの判断やその後の行動がバラバラとなって矛盾やロスが生じたりすることも減少し、会社全体においても、より全体最適の判断が機能しやすくなります。

また判断軸が揃うことによって、

どんなときでも、関わる人が変わっても、企業として常に『一貫性』ある対応ができるようになります。

前回のブログで触れたコンプライアンスの問題においても、

『この場面ではコンプライアンスを遵守したが、このときは遵守しなかった・・・

あの人、あの部署はコンプライアンスを遵守したが、この人、この部署は遵守しなかった・・・』というバラツキも発生しにくくなります。

 

自社としての大切な価値観、行動基準が共有されることによって現場の様々な場面での判断軸が生まれ、判断や行動に企業の『パーパス(purpose)』を反映した『一貫性』が機能し始めると、想像している以上に様々な付加価値や資産が企業内に生まれてきます。

このようなことが本質的かつ継続的に機能している数少ない企業・組織に関わる機会を私も過去、運よく持つことができましたが、このような組織は業績が素晴らしいだけでなく、正社員だけでなく、パート社員の方まで、現場での判断や対応が一糸乱れず一貫性を持って揃っており、明らかに競合他社とは次元が違った組織、ヒトとヒトとの集合体となっていることが非常に印象的でした。

実際、このような企業では顧客や取引先が、『〇〇さんの社員さんはどなたと接してもレベルが高いね!そして、どなたも○○さんらしさが出ていて、他社と一味違って見事だね!』という言葉を漏らす場面を何度も見ました。このレベルになると、顧客や取引先からの信頼が競合他社の群れから抜きんでたものとなり、企業独自の『ブランド』が形成されているレベルとなっているように思います。

(尚、ここで触れた『ブランド』という言葉については、別の機会にまた触れますが、顧客や市場からの『長期間にわたる信頼性』という意味合いで述べています。近年は、広告の大量露出による認知度の向上をもって『ブランド』の形成と捉えているような、間違った文脈で語られるケースもあるように思いますが、そもそも『ブランド』とはそのようなものではありません。)

 

顧客や市場、関わる人々からの『長期間にわたる信頼性』を得るためには、『一貫性』が必要となってきます。中長期に渡って、商品や品質、サービス、提供姿勢などにおいて、質の高さに加えて、企業としてぶれることなく常に『一貫性』を継続して示し、『揺るぎない信頼』が生まれるとそれが『ブランド』や『のれん』というものになっていきます。

このように『信頼』がブランドを形成する重要要因となるわけですが、前提として『一貫性』のない行動には『信頼』が生まれないものです。

例えば『言っていることとやっていることとが違う』、『このときはこう言うが、別の場面ではまた違ったことを言う』ということに対して、人間は一貫性を感じず、信用することができなくなってくるからです。

しかしながら、近年、そのようなことは日常的に多くの企業の現場で少なからず発生しているように思います。

例えば、現場で何か判断して対応を迫られたとき、

部門や役職、正社員、パート社員などの様々な立場や役割がありますが、対応する人によって、対応内容が違うということがしばしばあります。

裏返せば、部門や役職、正社員、パート社員など多様な立場や役割の人達が集う組織において、判断する基準がバラバラになっているということがあります。

このような組織では、問題が起こった際の判断も対応も『一貫性』がなかったり、『優先すべき基準』が共有されていないなどがあり、問題やトラブルの解決がスムースに進まず、問題が更に大きくなってしまうことになる場合もあります。

このような組織は顧客から観ても、最終的にあまり信頼できない組織=企業として見えてくると思います。

 

一方で、『パーパス(purpose)』を軸とした、根本的な優先基準=優先すべき判断基準、常に継続的に努力すべき行動規範が明確となっており、組織の中で重要なものとして共有されている組織は、多様なメンバーによって形成されている集団の中で共通の判断軸を生み出すことが可能となってきます。その結果、様々なヒトの集合体である組織が大きくなって行っても、大切なことに対しては、組織内で常に『一貫性』が機能しやすくなり、対顧客や取引先などへの対応に一貫性が生まれるだけでなく、自社の組織内での意思疎通やヒトとヒトをつなぐ『信頼関係』が良くなるというメリットも生まれます。

そして、判断軸が揃うことによって、以前のブログにて『4つ目のメリット』として述べた

 

4.意思決定やコミュニケーションスピードが上がる

『パーパス(purpose)』が組織内の意思疎通や判断の際の共通軸として機能するようになると、多様な人材が集う組織内の意思疎通がスムーズになります。

(ヒトと組織の戦略に『パーパス』を活用する④ 2023.0403ブログ)

 

ということにもつながり、組織内の情報共有や意思決定スピードが速くなるとともに顧客や市場への対応スピードも速くなります。そして、『パーパス(purpose)』をもとにした現場での判断軸、判断基準が揃うことによって、バラツキやウソ、矛盾のない正確な情報共有やより全体最適の判断も行いやすくなります。

 

次回も、引き続き企業がパーパスを策定し、機能させた場合のメリットについて述べていきます。

 

 

お知らせ

『パーパス(purpose)』を反映させた役割等級制度のページをリニューアルしました。

くわしくはこちらをご覧ください。

https://jinji.jp/hrconsulting/grade_system/

執筆者

花房 孝雄 
(人事戦略研究所 上席コンサルタント)

リクルートグループにて、社員の教育支援に従事。その後、大手コンサルティング会社にて業績改善のためのマーケティング戦略構築などの支援業務に従事。現在は新経営サービスにて大学の研究室、人材アセスメント機関などとの連携による組織開発コンサルティングを実施中。
主な取り組みとして、人的資源管理研究における最新知見を背景とした「信頼」による組織マネジメントや企業ビジョンを構造的に機能させるビジョン浸透コンサルティングを展開中。

※コラムは執筆者の個人的見解であり、人事戦略研究所の公式見解を示すものではありません。

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