ヒトと組織の戦略に『パーパス』を活用する③

■企業がパーパスを策定し、機能させた場合のメリットについて(その2)
 
前回は現在の時流、トレンドから『パーパス(purpose)』が企業にもたらすメリットについて述べましたが、今回はトレンドや流行等とは関係なく、『パーパス(purpose)』が原理原則的に組織や企業にもたらすメリットについて解説していきたいと思います。
 
企業として共感を生み出すことのできる『パーパス(purpose)』があることによって、以下のようなメリットが企業に生じます。
 

1.組織・集団の進むべき方向が明確になり、成長力が高まる

 

2.多様な人材のベクトル合わせができ、力が結集できる

 

3.社員モチベーションを喚起し、組織への共感、ロイヤリティを生み出すことができる

 

4.意思決定やコミュニケーションスピードが上がる

 

5.企業としての独自性が文化として定着する(フィロソフィーが定着する)

 

6.現場の様々な場面での判断軸が生まれる

 

7.顧客や市場の共感と支持を引き出すことができる

 

共感を生み出すことのできる『パーパス(purpose)』があることで・・・
 
1.組織・集団の進むべき方向が明確になり、成長力が高まる
日々変化していく市場環境の中で、明確な『パーパス(purpose)』やビジョンがあれば、組織や集団がどの方向に向かっていくべきか?お客様や市場に対して何を大切とするのか?何を最優先とするのか?といったことが明確になっていきます。先行き不透明な時代になるほど、企業経営においてもそのようなモノが必要となってきます。なぜなら、未来が全く分からない状況であっても、何らかの基準となる「軸」や「拠り所」、「原点」があるほうがどの方向に行くべきかを定めやすくなるからです。ヒトも組織も迷った時ほど、自身の現在位置とこれから進むべき方向について照らし合わせる基準やポイントがあることで、不確実性の高いモノゴトについても探索しやすくなり、冷静に次の一歩を踏み出していくことができるようになります。
加えて、先行きが見えない時代ほど多くの人は方向性を求めます。先行きが見えない時代であったとしても、我々はこの方向へ向かうのだ!我々はこれを強みとしてお客様や社会に役立っていくのだ!という方向性を明確に示せるところに人は集まるものです。
明確な『パーパス(purpose)』を示すことによって、企業に求心力が生まれ、求心力はやがて成長力へとつながっていきます。
 
2.多様な人材のベクトル合わせができ、力が結集できる
環境変化に対応していくためには、組織の中に多様な人材がいて、変化に応じて多様な機能や役割を発揮してもらうことがとても重要です。
近年、ダイバーシティという言葉もよく使われるようになり、ダイバーシティを意識した各種制度の導入も増えつつあるように思います。しかしながら、ただ単に制度上でのフレームやしくみをつくるだけでは、多様性を活かした組織とならないことも多いように思います。
性格、能力、経歴、価値観や働く条件等、様々に異なる多様な人材が集まる組織において、多様性を活かし相乗効果を上げていくためには、本質的な部分で(=根底で)組織における共通の軸(=中心となる軸)や基準が存在すること、加えてそれらが組織内で共有できていることが大変重要なポイントとなってきます。
『パーパス(purpose)』が組織における共通の軸(=中心となる軸)として機能することによって、多様な人材がバラバラになったり、対立や分裂せずに機能補完や役割分担ができ、相乗効果が生まれやすくなります。
言葉を換えれば『パーパス(purpose)』が在ることによって、多様な人材から生み出される力を企業目標の達成に向けて効果的に結集することができるようになるとも言えるでしょう。
 
今回は『パーパス(purpose)』が原理原則的に企業にもたらすメリットについて2点述べましたが、次回は、3番目以降のメリットについて紹介したいと思います。

執筆者

花房 孝雄 
(人事戦略研究所 上席コンサルタント)

リクルートグループにて、社員の教育支援に従事。その後、大手コンサルティング会社にて業績改善のためのマーケティング戦略構築などの支援業務に従事。現在は新経営サービスにて大学の研究室、人材アセスメント機関などとの連携による組織開発コンサルティングを実施中。
主な取り組みとして、人的資源管理研究における最新知見を背景とした「信頼」による組織マネジメントや企業ビジョンを構造的に機能させるビジョン浸透コンサルティングを展開中。

※コラムは執筆者の個人的見解であり、人事戦略研究所の公式見解を示すものではありません。

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