評価と教育をリンクさせる ②

管理者にとって、リーダーシップとは「役割」か?「能力」か?
 
◆評価基準の分類
前回は、「教育」前提の人事評価と、「査定」前提の人事評価は、観点が異なることを述べました。今回から、その違いを更に明確にしながら、具体的な人事評価制度のつくり方を考えてみます。
 
社員を評価する基準として、「数字」で評価できるものと、「仕事ぶり」で評価するものがあります。弊社では、前者を「成果・業績評価」、後者を「職務プロセス評価」と呼んでいます。
この2つを更に「結果」と「プロセス」に分解すると、以下のように5つの観点を得ることができます。
 
成果・業績基準
①業績 … 数値評価での結果
②成果 … 数字評価でのプロセス
 
職務プロセス基準
③役割 … 仕事ぶり評価での結果
④能力 … 仕事ぶり評価でのプロセス(応用)
⑤姿勢 … 仕事ぶり評価でのプロセス(基本)
  
◆成果・業績評価
①は、「売上」と「利益」です。社員目線なら売上、会社目線なら利益といったところでしょうか。様々な取組みの”最終結果”として表せるものです。
 
②は、いわゆるKPI(key performance indicator)です。営業職なら「見積件数」、製造職なら「歩留率」、企画職なら「企画立案数」など、業績をアップさせるためのプロセス指標と言えます。
 
これらは主に、営業会議や責任者会議で扱われるため、人材育成よりも、経営戦略の進捗度や営業管理に使用されます。人事評価の視点においても、一定期間内の結果として評価され、人事評価表内のウエイト配分では上位職になるほど責任を重くする傾向があります。
 
◆職務プロセス評価
ここまでは難しくないと思います。では、「職務プロセス評価」を3分類する意味は何でしょうか? それが、冒頭で投げかけました、「リーダーシップとは、役割か?能力か?」の違いです。筆者が講師を務めるセミナー内でこの質問をすると、半数以上は「リーダーシップは能力である」と回答されます。「リーダーシップ力(りょく)」という言葉がありますので、間違ってはいません。
 
ただし、査定ではなく教育を前提とした人事評価では、リーダーシップは役割、すなわち「結果」だと捉えておく方がよいでしょう。「リーダーシップを発揮していたか」を評価基準とすると、発揮していたか否かの結果を問う事になります。処遇のみを考えるのであれば、問題はありません。
 
人材育成においては、結果ではなくプロセスの改善を行います。プロセスを評価するのであれば、リーダーシップを構成する要素を抽出する必要があります。例えば、方向性を示せるか、強い想いを持っているか、率先垂範しているか、部下の仕事レベルや個性を理解できるか、必要なモチベーション施策を打てるか、等になります。「君はリーダーシップ力が不足しているから磨きなさい」と言われても、漠然とし過ぎていて部下は理解できません。すなわち、成長にはつながりません。
 
前回述べました「企画力」も同様です。ましてや、「判断力」なる評価項目は、それが備わっているなら「全ての仕事が完璧にできる」と一言で集約できるほどの評価項目です。
あえて設定するなら構いませんが、何気なく設定しているのであれば非常に評価しづらい項目です。是非、貴社の人事評価表をチェックしてみて下さい。

執筆者

森谷 克也 
(人事戦略研究所 所長)

5~10年先の内部・外部環境を想定し、企業の成長を下支えする 「組織・人事戦略」 の策定・運用が図れるよう、 ≪経営計画-人事システム-人材育成≫ を連動させる組織・人事戦略コンサルタントとして実績を積んでいる。また、カタチや理論に囚われない、「中小企業の実態に即したコンサルティング」 を身上とし、現場重視で培った独自のソリューションを多く開発している。

※コラムは執筆者の個人的見解であり、人事戦略研究所の公式見解を示すものではありません。

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