目標管理 第18回 OKR

OKRとは「Objectives and Key Results」の略称で、目標と主要な結果(成果や業績)とでも訳しましょうか。Intel、Facebook、Google等のシリコンバレー企業が採用し、ここ数年で日本でも注目を集めています。
 
その説明には、一般的な目標管理(MBO;Management By Objectives)とは違い、会社(あるいは部門)が掲げる目標と主要な結果をリンクさせて、さらに下位組織・個人の方向性や目標を掲げる、というもので、この「リンク」というのが最大の特徴とされています。
 
MBOとOKRは異なる!という説明をしていることが非常多いですが、目標管理も昔から「目標の連鎖」という言葉で上位目標と個人を含む下位目標がリンクすることが求められていました。また、「方針と目標」を明確にすることで、方向性と結果も分けられて、かつ、リンクされていました。こうしたことは、1961年のE.C.シュレイによる『Management by Results(結果の割り付けによる経営)』の著書にも触れられており、現代のMBOはシュレイが体系化したと言われています。
 
OKRで定義づけされているようなことを会社としてはMBOの目的でやっているけれども、日本の多くの社員の認識は目標管理=個人評価システム、という間違った認識が根強く、機能しないことが見られます。また、MBOを本来の目的通りにやっていても、結果的に上手く運用ができない、形骸化するということも多く見られます。
 
このことから、目先の「OKRという新しい言葉」に飛びついても、結局は運用次第となり、本質的な部分が変わらない限り、一緒ということになります。
 
人事制度にしろ目標管理にしろ、仕組み自体は2000年以上前に古代中国でほぼ出来上がっているもので、「言葉や表現」を新しくしただけのものに惑わされないようにしたいものです。

執筆者

佐藤 耕一 
(人事戦略研究所 パートナーコンサルタント)

鉄道会社にて信号通信設備及びITシステムの設計業務を担当し、その後、教育事業会社で管理本部長として学習塾の運営と教育機関向け経営コンサルティング業務に携わる。前職では、電子部品メーカー系列のコンサルティングファームにて人事コンサルティング業務に携わるとともに、部長として同事業部門を率いる。国内外にて、中小企業から一部上場の大企業まで様々な規模を対象にし、あらゆる業種業態への人事諸制度の導入・運用実績がある。経営統合や分社化、経営破綻後人事、新設労働組合対応、海外法人、医療、介護、特殊法人など、豊富な事例と経験があり、特に運用に強みを持つ。

※コラムは執筆者の個人的見解であり、人事戦略研究所の公式見解を示すものではありません。

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