企業の成長段階と人事改革③
戦略的人事
前々回から3回にわたり、戦略的人事を進めていくプロセスに焦点をあて、企業の成長段階を3段階に分け、その段階に応じた人事改革の進め方のポイントについて取り上げています。前回は、企業の成長段階として「組織化(権限委譲)による統制」段階を取り上げ、現場の声に耳を傾けながら改革を進めることが肝要であることをお伝えしました。
今回は、3つ目の成長段階を取り上げてみたいと思います。権限移譲が進み、組織がさらに拡大していくと、属人的な仕事のやり方による非効率さが露呈してきます。そうすると次の成長段階である「標準化・ルール化による統制」が必要になってきます。
この成長段階における改革は、組織が複雑化・肥大化しており、社員のベクトルをいかに合わせていくかが重要なポイントになってきます。そのため、アイデンティティ(自社らしさ)としての人事理念(過去ブログを参照http://jinjijp/hrblog/1604/)を言語化していくことが肝要です。
現場の巻き込み方ですが、この成長段階では、現場のバラバラ感が大きいケースが多く、事なかれ主義やあきらめ感が蔓延っている傾向にあります(いわゆる”大企業病”)。そのため、現場の声を聴いても本音を隠したり、アンケートやインタビューに慣れ切っており表層的な結果になってしまったりすることも多くなってきます。人事部だけで改革を進めていくと、机上の空論になってしまうリスクもあります。したがって、現場のキーパーソンを含めた、プロジェクトチームを組成して改革を推進していくことが肝要です。また、利害関係者も多くなり、合意形成に時間を要する傾向にあります。数字などのファクトベースでの論理的な議論や分かりやすい資料といったことも重要なポイントになってきます。そして、プロジェクトチームが改革を進めていきやすいように、トップの強力な後ろ盾・お墨付きを得ることが必要です。
なお、この成長段階の企業が、さらに官僚主義(杓子定規で硬直的な対応)による非効率さや変化対応力の低下が露呈してくると、トップによる強力なリーダーシップに基づく、思い切った改革が必要になってきます。
今回は、企業の成長段階として「標準化・ルール化による統制」の段階を取り上げ、現場のキーパーソンを巻き込んだプロジェクトチームにより改革を進めていくことが肝要であることをお伝えしました。
以上、全3回にわたり、戦略的人事を進めていく「プロセス」に焦点を当て、企業の成長段階に応じた改革の進め方のポイントをお伝えしてきました。これから、改革を進めていく際のヒントになれば幸いです。
執筆者
飯塚 健二
(人事戦略研究所 副所長)
自社の経営に携わりながら、人材・組織開発、経営計画策定、経営相談など、幅広くクライアント業務に従事。中小企業から大手企業まで規模・業界を問わず、17年以上の幅広いコンサルティング実績を持つ。これまでに培った実践知と学際的な理論知(社会科学、認知科学、行動科学、東洋哲学等)を駆使しながら、バランス感覚を備えた、本質的・統合的・実践的なコンサルティングを行う。一社一社に真摯に向き合い、顧客目線に立った支援スタイルを信条とする。
キャリアコンサルタント/GCDF-Japanキャリアカウンセラー
iWAMプラクティショナートレーナー
※コラムは執筆者の個人的見解であり、人事戦略研究所の公式見解を示すものではありません。
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