人事戦略策定のポイント

-もくじ-

  1. 人事戦略とは?
  2. 人事戦略の位置づけ
  3. 人事戦略策定のポイント

1.人事戦略とは

人事戦略とは、

【外部環境適応】 外部環境の変化や動向に適応しながら
【内部環境適応】 企業理念や経営・事業戦略を実現するために
【価値観・企業文化】 どんな価値観や企業文化を大切にし
【求める人材像】 どのような人材(求める人材要件)を
【人材フレームワーク】 どのようなフレームワーク(orキャリアパス)で
【要員・人件費】 どれくらいの人数や人件費をかけて
【人材マネジメントポリシー】 どのように採用・配置・育成・代謝、評価・処遇するか

についての考え方や方向性と言えます

 この人事戦略がないと、例えば、

  • 経営理念や経営戦略の実現を阻害してしまう
    (新規事業でチャレンジが必要なのに失敗すると悪い評価となる等々)
  • 流行りの制度論に右往左往してしまう
    (最近話題の“ジョブ型”をうちにも。“定年延長”しないと…等々)
  • 社員の不満・要望にあたふたしてしまう
    (手当がない・昇進したくない・転勤したくない等にどうしよう?…等々)

といったことが起きやすくなります。

 折角、労力をかけて経営者や人事部が行なっている人事施策(採用、配置異動、人材育成、人事制度等々)が功を奏さず、良い人材が入社しない、入社してもうまく育てられない、あるいは優秀な社員ほど辞めてしまうといった問題は、「人事戦略」が欠けているからかもしれません。そうならないためにも、「人事戦略」を明確にし、それに基づく人事施策を立案・実行し、PDCAを回しながら、継続的にブラッシュアップしていくことが肝要です。

2.人事戦略の位置づけ

 人事戦略の位置づけは、以下の通りです。

人事戦略の位置づけ

3.人事戦略策定のポイント

 人事戦略の策定ポイントは、以下の通りです。

整合性

■ 経営戦略やビジネスモデル、業務・組織体制と整合性がとれていることが大切です

適合性

■ 労働法規制(長時間労働、65歳超雇用etc.)や社会情勢(働き方改革、ワークライフバランス、テレワークetc.)等の外部環境に適合していることが大切です

一貫性

■ 人事制度(等級・キャリア、評価、賃金)や採用・育成・配置・代謝等の各種人事施策間に一貫性があることが大切です

 これらのポイントを押さえて「人事戦略」を策定し、それに基づく具体的な人事施策を講じていくことが肝要です。この際に、留意すべき点は、各人事施策の特性を踏まえておくという点です。

 図に示す通り、人事施策の特性として、すぐに社員数を増減させることはむずかしいという「量的なタイムラグ」があります。事業戦略上、必要であれば採用したり、不要になれば解雇したりすることが容易にはできません。特に、昨今の慢性的な人材不足である労働市場や、解雇規制や同一労働同一賃金等の労働法制が、この量的タイムラグに拍車をかけています。
 あるいは、すぐに社員を育成することはむずかしいという「質的なタイムラグ」もあります。研修を実施したからといって、次の日から成果に転化できるとは限りません。それが1ヶ月後かもしれないし、1年後かもしれないし、数年後かもしれません。経験を積んだとしても、人によって大きく成長する社員もいれば、あまり変わらない社員もいます。だからといって、育成施策を怠れば将来が危ぶまれます。地道に忍耐強く続けていくことが求められます。
 そして、人事施策と効果の因果関係の特定がむずかしく、「不明瞭な因果関係」という特性があります。例えば、「この人事施策がこれだけの売上向上に寄与した」といったことが一概に言い切ることができません。故に、つい後回しにしがちですが、中長期的に見た場合、人事施策の実施の有無が大きな差となってしまう可能性があります。

 このように人事施策は、「量的なタイムラグ」、「質的なタイムラグ」、「不明瞭な因果関係」という特性があります。また、現状の問題を解消するだけでなく、将来のありたい姿を実現していくための施策になっていることが重要です。だからこそ、「人事戦略」を基軸としながら、中長期的視点を持って、先手先手で策を講じながら、継続的に改善していく、“戦略的な試行錯誤”が求められます。

人事戦略策定のポイント

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人事戦略研究所では、人事評価・賃金制度設計から運用支援まで、各種人事コンサルティング支援を行っております。ご相談は無料です。まずはお気軽に お問い合わせ ください。

執筆者

飯塚 健二 
(人事戦略研究所 副所長)

独立系システム開発会社にて、システムエンジニア・人事・経営企画等の実務を経験。その後、大手金融系シンクタンク、監査法人系ファームにて人事・組織コンサルティングに従事した後、現職。主に人材・組織開発領域において、中小企業から大手企業まで規模・業界を問わず、15年以上の幅広いコンサルティング実績を持つ。
これまでに培った実践知と学際的な理論知(社会科学、認知科学、行動科学、東洋哲学等)を駆使しながら本質的・統合的・実践的なコンサルティングを行う。一社一社に真摯に向き合い、顧客目線に立った支援スタイルを信条とする。
キャリアコンサルタント。GCDF-Japanキャリアカウンセラー。iWAMプラクティショナートレーナー。