人事評価制度運用7つのポイント

人事評価制度を運用する際のポイントを7つにまとめました。自社の人事評価制度を効果的に運用していくことによって、社員モチベーションの向上、人材育成の加速、企業収益の向上等、様々な目的の実現に繋げていきましょう。

人事評価制度運用の7つのポイント:コンテンツ

①常に、評価表のブラッシュアップを行う

評価表には、自社が事業を展開していく上で、社員の皆さんに取り組んでもらいたい“特に重要な項目”が表現されているかと思います。
これら評価表の内容は、人事評価制度を効果的に運用していくために2つの観点を持って、常にブラッシュアップを図っていくことが重要です。

1つ目の観点は、自社にマッチする表現を追求することです。評価の項目や基準の表現に正解はありませんが、仮に社員から同じような問い合わせが繰り返し上がってくるようであれば、その表現には見直しの余地があるのかもしれません。
人事評価制度を効果的に運用していくためには、社員の皆さんに少しでも評価の項目や基準の理解を深めてもらうことが重要です。「評価表は社員にとって分かりやすい表現となっているのか」ということを念頭に置いてブラッシュアップを図っていただければと思います。

2つ目の観点は、経年変化に対応することです。ビジネスを取り巻く環境は目まぐるしく変化しており、今後もその状況はより加速していくものであると考えられます。数年前までは“特に重要な項目”であった評価の項目や基準も、場合によっては見直しが必要かもしれません。
人事評価制度を効果的に運用していくためには、社員が評価の項目や基準に納得していることが重要です。「評価が現場の実態に合っていない」とならないように、評価表は「自社の方針の変化に対応できているのか」ということを念頭に置いてブラッシュアップを図っていただければと思います。
なお、「評価表を作成してから長い時間が経過している」「ビジネスの転換に伴い求める人材像に変化が生じている」等のように、評価表のブラッシュアップのみでは対応しきれない場合は、“現在抱えている課題”や“目指すべき姿”を踏まえた上で、場合によっては等級制度や賃金制度と併せて、評価制度を一から見直すことも一つかもしれません。

以上、評価表のブラッシュアップを継続的に実施していくことで、人事評価制度の効果的に運用に繋げていただければと思います。

②期末には、処遇(昇格・降格、給与改定、賞与)への反映をルールに従って行う

人事評価の結果を何かしらの形で処遇(昇格・降格、給与改定、賞与)に反映している企業は多いかと思います。
社員のモチベーションや人事評価制度へのコミットメントを高める上でも、「頑張って良い評価を得た結果、どうなるのか?」ということを示すことは効果的であると考えられます。

但し、人事評価の結果を処遇に反映させる仕組みがある中で、そのルールを逸脱して運用している場合は注意が必要です。

例えば、賞与において人事評価の結果に応じて掛け率が変動するといったルールを設定しているものの、結局のところ、「経営陣の一声で評価の結果の掛け率を越えてひっくり返ってしまう」という事態は避けねばなりません(ルールとして、人事評価の結果よりも経営陣の裁量が重視されると謳っているのであれば話しは別ですが…)。
人事評価は必ずしも“処遇への反映”のために行っている訳ではありませんが、社員にとっては人事評価制度と向き合い、取り組む上での重要な目的の一つとなります。そこに不信感が生じてしまうと、人事評価制度自体の運用にも支障を来たすことが容易に想像できます。

人事評価制度を効果的に運用していくためには、評価の処遇反映ルールを自社の方針や考え方に合わせて仕組み化し、ルールに基づいて運用していくことが求められます。
もちろんルールの中に、経営陣の裁量や調整が一定の割合で加味されることを示してしまうことも一つですが、不透明な調整が大部分を占めているようであれば、その不透明な部分の調整内容を明文化し、より納得性の得られる人事評価の処遇反映ルールを構築することを検討されてもいいのかもしれません。

③期中には、評価に関する部下の行動を収集する

「期末を迎えて部下の評価を行う際に、各評価項目に対していずれの評価点をつけていいかが分からず、結局のところ真ん中の評価点をつけてしまう…」
このような傾向が見て取れる評価者を抱えている企業も多いのではないでしょうか。評価される側である部下からすると、評価点に対する納得性は得られず、結果として人事評価に対する不信感から制度自体が上手く機能しなくなるということも起こりかねません。

このような事態を防ぐためにも、評価者の方々には、期中から部下の行動を評価項目と紐づけて観察していくことが求められます。
この際にポイントとなるのは、観察した内容を何かしらの形で記録化しておくことです。評価期間が仮に1年間であるとすると、評価者は1年前のことも思い出しながら評価を行うこととなります。
何もない中で評価点をつけるには限界がありますが、何かしらの記録が残っていれば具体的な内容を思い出しながら評価点をつけていくことが可能となります。

なお、記録化を推進していくにあたっては、会社として何かしらの仕組みを用意することも重要です。例えば、記録用のシートを作成・配布したり、期中に評価者間で部下の状況(記録の内容)を共有する機会を設けたりすることも一つです。

期中の評価に関する部下の行動を記録し、人事評価に対する納得性を高めていくことで、人事評価制度の効果的な運用に繋げていっていただければと思います。

④期中には、定期的なレビュー面談を実施する

人事評価において、評価者と部下がしっかりと場を設けて話しをする機会は、期末の評価結果に関するフィードバック面談のみという企業も多いのではないでしょうか。もちろん期末の面談も大切ですが、 個々人の評価項目の達成を支援するためには、期中にレビュー面談の機会を設けることも重要となります。

期中のレビューでは、主に評価項目(取り組み事項)に関する進捗について話すことが想定されます。例えば、期末に目指している数字(状態)に対して、現在どの程度の取り組み状況なのか、といったことを話すイメージをもっていただければと思います。
但し、この際にレビュー面談の目的を忘れてはいけま せん。仮に取り組み状況が思わしくなくとも、責め立てたり、問い詰めたりするのではなく、前向きな話しを心がけることが大切です。評価項目の達成に向けて適切な助言ができるか否か、まさに評価者としての腕の見せどころと言えるでしょう。

「人事評価の内容は、達成が困難な上に、評価者は何も支援してくれない」
このような不満が積もっていくと、人事評価制度は見向きもされず、やがて形骸化していきかねません。人事評価制度を効果的に運用していくためにも、是非、定期的なレビュー面談を有効に活用していただければと思います。

⑤期末には、評価調整会議を実施する

「所属する部や課によって、人事評価に有利・不利が生じている」 人事評価に対する不満として、よく耳にするフレーズです。皆様の会社においてはいかがでしょうか。

このような不満(評価の甘い・辛い)が生じる原因の一つとして、評価者による価値観の違いが挙げられます。もちろん、全員の価値観を統一し、どの評価者が誰の評価点をつけたとしても同じ結果となるよう状態を作り上げることは難しいですが、ある程度の目線合わせを行うことは必要です。

そこで実施をお勧めしたいのが、この評価調整会議です。会議の概要として、例えば、以下のようなフローをイメージいただければと思います。

  1. ① 評価者間で、それぞれがつけた部下の評価点を共有する
  2. ② 他の評価者がつけた評価点に違和感のある項目があれば、その評価点をつけた評価者に根拠を確認する
  3. ③ 当該の評価者は、その部下の期中の取り組みに基づいて、その評価点をつけた根拠を説明する
  4. ④ その根拠が妥当と判断されればそのまま、妥当でないと判断されれば当該の評価者は再考する

評価者間における人事評価の目線合わせは、1回実施したから大丈夫ということにはなりません。評価結果に対する納得性を高め、人事評価制度を効果的に運用していくためにも、是非継続的に取り組んでいただければと思います。

⑥期末には、評価結果のフィードバック面談を実施する

人事評価の結果を部下にフィードバックしていくことは、部下の人事評価に対する納得性を高め、更には人材育成に活用していく上で、非常に重要な位置づけとなります。

但し、中途半端にフィードバック面談を実施してしまうと、その効果は半減するどころか、部下の人事評価に対する不信感を増幅させることに繋がりかねません。フィードバック面談を実施する際には、例えば、以下のような点にご注意いただければと思います。

①部下に押しつけるような発言はしない
フィードバック面談では、つい評価者が多くの発言をしてしまいがちです。部下に対する想いがゆえにということは分かりますが、評価者という立場を利用して、一方的にこちらの評価や意見を押し付けるような発言には注意が必要です。
今後、部下が自ら自発的に行動していくためにも。部下自らの口で語らせることも大切です。
②部下に迎合するような発言はしない
フィードバック面談において、いざ部下を目の前にすると、なかなか厳しいことは言いづらいと感じる評価者も多いのではないでしょうか。気持ちは分かりますが、そのようなときには是非、中長期的な視点を持って臨んでいただければと思います。
できていないことを「できている」と評価してしまうと、その部下は現状に満足してしまいます。部下の成長機会を評価者が奪うことがないようにご注意いただければと思います。
③人事評価制度を批判するような発言はしない
フィードバック面談において、評価者が制度に対する不満を口にしてしまうと、制度に対する信頼感が損なわれ、部下のモチベーション低下に繋がる恐れがあります。仮に、評価者が制度に不満を抱いているのであれば、部下に対してではなく、改善案として経営者や人事部に意見を上げてもらうことが重要です。
良い意見であれば採用し、社員全員で人事評価制度をより良いものへとブラッシュアップしていくことができると理想的と言えるでしょう。

以上、3つの注意点をご紹介いたしました。フィードバック面談を適切に実施していくことで、人事評価制度の効果的な運用に繋げていただければと思います。

⑦評価者研修を実施する

ハード面とソフト面に分けて、これまで6つのポイントをご紹介してきました。いずれのポイントも大切なものとなりますが、その中でも特に、ソフト面における評価者のパフォーマンスが重要であることが言えるかと思います。

そこでお勧めしたいのが、「評価者研修」を実施することです。評価者研修では、例えば、「評価スキル」や「コミュニケーションスキル」、「面談スキル」等、人事評価を実施していく上で必要となる知識やスキルを評価者の方々に学んでいただきます。
短時間であれば数時間から、長時間であれば数日間に分けてシリーズで開催する等、企業の課題感や目指すべき評価者像によって様々な内容やスケジュールで実施されます。

もちろん、研修を受講したから「人事評価が適切にできる」とは言えませんが、今回ご紹介してきた内容のように、知っているに越したことはない知識・スキルはその他にも多く存在します。

会社として、評価者の方々に評価の実施を役割・仕事としてお願いしているのであれば、最低限の教育機会は設けてあげることも必要なのかもしれません。
評価者のレベルを向上させ、自社の人事評価制度を効果的に運用していくことで、社員モチベーションの向上、人材育成の加速、企業収益の向上等、様々な目的の実現に繋げていきましょう。

人事コンサルティング支援について

人事戦略研究所では、人事評価・賃金制度設計から運用支援まで、各種人事コンサルティング支援を行っております。ご相談は無料です。まずはお気軽に お問い合わせ ください。

執筆者

辻 輝章 
(人事戦略研究所 コンサルタント)

自らの調査・分析を活用し、顧客の想いを実現に導くことをモットーに、国内大手証券会社にてリテール営業に従事する。様々な企業と関わる中で、社員が自ら活き活きと行動できる企業は力強いことを体感。"人(組織)"という経営資源の重要性に着目し、新経営サービスに入社する。
第一線での営業経験を活かして、顧客企業にどっぷりと入り込むことを得意とする。企業が抱える問題の本質を見極め、企業に根付くソリューションを追及することで、"人(組織)"の活性化に繋がる実践的な人事制度構築を支援している。