評価シートの作り方
評価シート(人事評価表)の作り方を、一例を取りあげながら、6つのステップとしてまとめました。人事評価を人材育成や社員のモチベーション向上、処遇判定に活用していくために、社員の貢献を適切に評価できる評価シートを作成していきましょう。
-もくじ-
1.職種・階層を整理する
現場の仕事内容に則した評価項目・基準を設定していくために、まずは自社の職種・階層を整理することが肝要です。職種とは、営業、営業事務、企画、開発、製造、生産管理、品質管理、総務、経理、人事といったような仕事内容の違いを指します。階層とは、初級社員、中級社員、上級社員、管理職といったような仕事レベルの違いを指します(等級制度として整備されている企業も多いかと思います)。
このように職種・階層を整理することは、現場の仕事内容に則した評価項目・基準を設定していくためだけではなく、社員の成長ステップを示す道標として活用していくためにも有効です。評価の目的として人材育成を掲げている場合は、特に自社の職種・階層を整理することをお勧めします。
2.評価体系を整理し、評価項目を検討する
評価体系の整理とは、どのような観点で自社の評価項目を構成していくか、すなわち”結果”や”プロセス”といった観点をどのようなバランスで評価していくのかを整理することを指します。
評価体系の整理イメージ
また、評価項目の検討とは、整理した”結果”や”プロセス”のバランスの中で、どのようなものを評価項目として評価していくのかを検討することを指します。”結果(以降、成果・業績評価と表現)”については、例えば売上や利益といった定量的な指標や目標達成度、”プロセス(以降、職務・プロセス評価と表現)”については、例えばリーダーシップやコミュニケーション力といった定性的な項目を設定するイメージをお持ちいただければと思います。これら評価項目について自社の職種・階層ごとに検討していきます。
【成果・業績評価項目の検討】
①定量的評価
成果・業績評価において最もイメージしやすいのは、例えば、営業職における売上高や粗利益高、新規顧客の開拓件数等といった定量的な評価項目です。職種や階層ごとに何を成果・業績として求めていくのか、本人の努力次第で改善可能であることを前提としながら整理していくことが肝要です。
②定性的評価
成果・業績評価を定量的に評価しづらいケースも多々あります。例えば、製造職や間接部門ではそもそも定量的な指標を管理していなかったり、定量的な指標を管理していたとしても評価に活用するには公平感に欠けていたりすることもあるでしょう。このようなケースでは成果・業績評価を、例えば、仕事の量・質・スピードといった定性的な評価として設定することも一案です。
③目標達成度評価
成果・業績評価を職種・階層ごとに一律に設定しづらい場合は、個別に目標を設定し、その達成度合いを評価として活用していくことも可能です。但し、自由度が高い手法となるため、目標達成度評価は一般的に運用難度が高い評価と言われています。公平性や納得性を担保するためにも、「設定目標は適切な難易度であるか」「達成水準が明確に表現されているか」を押さえることが運用のポイントです。
【職務プロセス評価項目の検討】
上記の成果・業績評価を達成するために必要なプロセスや職務能力を、職種や階層ごとに10~15項目程度を目安に整理していきます。社員が目先の結果だけに囚われることなく、継続的に成長して成果を上げていくことができるように、その過程を評価していくことも肝要です。
3.評価基準を検討する
成果・業績評価と職務プロセス評価の項目を設定した後は、評価基準を設定していくことになります。項目だけを決めても、どれくらいの基準であれば、何点に値するのかということを決めておかなければ、評価者によって点数の付け方にバラツキが生じるためです。
【成果・業績評価基準の検討】
成果・業績評価項目において、例えば、個人売上目標達成率という項目を設定したとします。この場合、目標達成率が100%であれば評価点は何点に値するのかを決めていきます。評価点の設定は、0~4点の5段階であったり、0~10点の11段階であったり様々ですが、押さえておくべきポイントは評価点の違いを明確に説明できるか否かです。定量的な評価項目であれば達成率が明確となるため、本人の努力を具に反映できるように評価点を0~10点の11段階で細かく設定することも一案です。
【職務プロセス評価について】
職務プロセス評価において、例えば、社内連携という項目を設定したとします。この場合、どの程度の連携ができれば標準点をつけてあげられるのかを決めていきます。職務プロセス評価では、定性的な表現で評価基準を設定していくことになります。ゆえに、評価点の違いの説明可否を考慮し、3~5段階程度で評価点を設定していくことが一般的となります。
4.ウェイトを設定する
評価項目と評価基準が決まれば、次に評価項目ごとのウェイトを設定します。ウェイト設定のポイントは、評価点も考慮してウェイト合計を設定し、合計点ありきで各評価項目にウェイトを配分していくことです。例えば、評価点を0~10点の11段階としたのであれば、ウェイト合計を10と設定すると合計点が0~100点になります。合計点の位置づけを感覚的に理解しやすくするために、切りのいい合計点となるよう工夫することが肝要です。
5.最終評価点を算出する
ここまで成果・業績評価と職務プロセス評価が各々100点満点となるように評価シートを設計してきました。最後に、これら2つの合計点を合算して最終評価点を算出していく必要があります。シンプルに足し算することで最終評価点を200点満点としても良いですが、それでは評価体系を整理した際の成果・業績評価と職務プロセス評価のバランスを反映することができません。そこで、「2.評価体系を整理し、評価項目を検討する」で示したウェイトで加重平均することも一案です。この工夫を行うことで最終評価点も100点満点とすることができるため、最終評価点の位置づけを感覚的に分かりやすくする上でも有効です。
6.評価ランク決定のルールを設定する
評価結果を各種処遇に反映する場合、一般的には最終評価点を評価ランク(S、A、B、C、D等)に置き換えて反映します。評価ランク決定のルールを設定するにあたっては主に2つの考え方があります。
【絶対的な考え方】
1つ目は、最終評価点に応じて評価ランクを決定する考え方です。他の社員の評価点に左右されることなく、取得した最終評価点に応じて絶対的に評価ランクを決定することができます。但し、高評価者が想定以上に発生した場合には、給与改定や賞与の原資が膨らむ恐れがあることに注意が必要です。
絶対的な考え方に基づいたルール設定のイメージ
評価点目安 | 評価ランク |
---|---|
75点以上 | S |
60点以上 75点未満 | A |
40点以上 60点未満 | B |
25点以上 40点未満 | C |
25点未満 | D |
【相対的な考え方】
2つ目は、社員の最終評価点を並べ、その順位に応じて評価ランクを決定する考え方です。例えば、上位5%が最上位評価ランクといったような設定ができるので、人件費のコントロールが容易となります。但し、各種評価ランクを付与できる人数が決まっているため、本来の貢献・実力とは異なる形で評価ランクを決定せざるを得ないケースも想定されます。社員のモチベーションを損ねることがないように注意が必要です。
相対的な考え方に基づいたルール設定のイメージ
分布目安 | 評価ランク |
---|---|
5% | S |
15% | A |
60% | B |
15% | C |
5% | D |
以上、評価シートの作り方を6つのステップでご紹介しました。あくまで一例ではありますが、評価シートづくりのご参考にいただければと思います。
人事コンサルティング支援について
人事戦略研究所では、人事評価・賃金制度設計から運用支援まで、各種人事コンサルティング支援を行っております。ご相談は無料です。まずはお気軽に お問い合わせ ください。
執筆者
辻 輝章
(人事戦略研究所 コンサルタント)
自らの調査・分析を活用し、顧客の想いを実現に導くことをモットーに、国内大手証券会社にてリテール営業に従事する。様々な企業と関わる中で、社員が自ら活き活きと行動できる企業は力強いことを体感。"人(組織)"という経営資源の重要性に着目し、新経営サービスに入社する。
第一線での営業経験を活かして、顧客企業にどっぷりと入り込むことを得意とする。企業が抱える問題の本質を見極め、企業に根付くソリューションを追及することで、"人(組織)"の活性化に繋がる実践的な人事制度構築を支援している。