パート・アルバイト人事制度 設計のポイント
-もくじ-
1.パート・アルバイト雇用を取り巻く背景
同一労働同一賃金、最低賃金の上昇、社会保険の適用拡大、無期転換ルールの適用。
一昔前までは、部分的に、流動的に、そして安価に雇用するための手段であったパート・アルバイトを取り巻く就業環境は、ここ数年で大きく変化しており、当然のことながら、企業は毎年のようにその対応に負われています。
今後もこういった流れは止まらないであろう状況下において、パート・アルバイト雇用にどのようなポリシーを持つかで、彼ら・彼女らを戦力化できるか否かが決まります。
どうせなら、これを「費用」ではなく「投資」と捉え、どうやれば良いパート・アルバイトを採用できるのか、育成できるのかを考えるフェーズに入ったと言えます。
2.パート・アルバイト人事制度 設計のポイント
やってもらう仕事のレベルを上げる
パート・アルバイトに対する人件費は上昇しています。これまでと同じ仕事をやってもらっていては、労働生産性は下がる一方です。
多くの正社員は、「アルバイトには出来ない」「パートさんはやってくれない」という固定観念が強いものですが、それがパート・アルバイトの成長を阻害している要因にもなります。
携帯電話小売業の例
まずは正社員とパート・アルバイトの仕事内容を整理し、客観的な目線でパート・アルバイトに委譲できる仕事がないかどうかを確認し、整理します。
これができれば、パート・アルバイトに高い人件費を割く意味が生まれますし、正社員はその仕事がなくなることで、より高度な、生産的な仕事に時間を割くことができるようになります。
人事制度では、これらの内容を職務要件や人事評価表(人事考課表)に落とし込んでいくことになります。
評価は「出来る・出来ない」ではなく「出来る」にフォーカスする
一般的に、正社員と比較し、パート・アルバイトは会社に対する帰属意識が高くありません。すなわち、「少々辛い思いをしてでも、自身の成長のため、会社のために頑張ろう」と思う人材は相対的に少ないものです。
本来の人事評価(人事考課)は、出来ることと出来ないことを明確にするツールですが、パート・アルバイトに「出来ない」を明確にしてしまうと、士気が下がってしまい、退職の原因にもなり得ます。
評価項目 | 着眼点 | 評価ポイント | ||||
---|---|---|---|---|---|---|
1:努力が必要 | 2:問題なし | 3:良くできていた | 4:非常に良くできていた | |||
姿勢 | 明るさ、元気よさ | お客さま、取引業者、同僚への、元気が良く明るい対応 | できていないことが目立った | できていた | 常に完ぺきにできていた | 周囲にも良い影響を与えた |
責任感 | 与えられた仕事を最後までやり遂げようとする意識・行動 | 不十分なことが時々あった | 問題はなかった | 行動から責任感の強さが感じられた | 周囲にも良い影響を与えた | |
ルール順守 | 店舗のルールを守っている | 守れていないことが時々あった | 問題はなかった | 常に完ぺきに守っていた | 周囲にも良い影響を与えた | |
仕事 | 身だしなみ | 基準に則した清潔な 身だしなみ |
基準どおりでない時が 時々あった |
100%基準を満たしていた | 100%基準を満たし、 清潔感があった |
周囲にも良い影響を与えた |
クリンリネス | 売場、バックヤードの清掃、整理整頓 | できていないことが多かった | できていた | 常に率先して取り組んでいた | 周囲にも良い影響を与えた |
これは、「出来ない」の評価は最低限にし(原則、問題の大きい人にしか使わない)、「出来る」を多く評価できるようにした人事評価表の例です。
人事評価表を、出来る人の見極め・承認の手段として使うことで、パート・アルバイトの活性化につなげています。
リスクヘッジの手段を持っておく
無期転換ルールが適用されて久しいですが、各企業の対応は様々です。無期雇用を機に正社員と同等に扱っていく企業もあれば、無期転換逃れのために5年で雇止めをする企業もありますが、後者については冷静な判断が求められます。
パート・アルバイトの雇用は地元密着で行うことが多いですが、5年雇止めを続けていては、自社で働いてくれる人材が枯渇してしまいます。もちろん、クーリング期間(一定期間雇用しなければ無期転換せずに再雇用できる)のルールはありますが、それを自社のメリットのためだけに使う企業で仕事をしたいと思う人は少ないでしょう。特に、優秀な人材ほどそう考えます。
ただし、無期転換ルールに対しては、リスクヘッジの手段は必要です。無期転換後の最も大きなリスクは、本人の仕事レベルが下がった場合に雇止めができないことでしょう。それに備えるためには、人事評価を確実に行い、人事評価結果が芳しくなければ時給がダウンしたり、月の労働時間が減ったりする仕組みを持っておく必要があり、そうすることでリスクは少なくなります。デメリットは出来る限り小さくし、メリットを最大限に活用できる人事制度にしたいものです。
以上、パート・アルバイトの人事制度策定について、ポイントのみご紹介しました。具体的なコンサルティングの内容や流れは、下記関連リンクにてご確認ください。
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人事戦略研究所では、人事評価・賃金制度設計から運用支援まで、各種人事コンサルティング支援を行っております。ご相談は無料です。まずはお気軽に お問い合わせ ください。
執筆者
森谷 克也
(人事戦略研究所 所長)
5~10年先の内部・外部環境を想定し、企業の成長を下支えする 「組織・人事戦略」 の策定・運用が図れるよう、 ≪経営計画-人事システム-人材育成≫ を連動させる組織・人事戦略コンサルタントとして実績を積んでいる。また、カタチや理論に囚われない、「中小企業の実態に即したコンサルティング」 を身上とし、現場重視で培った独自のソリューションを多く開発している。