人事制度とは?

 人事制度とは、「社員の貢献レベルや実現度合いの向上を図るために下支えする仕組み」であり「何ができれば、どのように報われるのかを明確にして社員に伝えるための手段」です。

1:人事制度とは、「社員の貢献レベルや実現度合いの向上を図るために下支えする仕組み」である

 そもそも我々企業組織は、製品・商品あるいはサービスを、社会やお客様に提供することを通じて、何かしらの価値や満足を得て頂き、そこに対価を頂くことによって成り立っています。(図表①参照)そして、そこには、必ず社員一人一人の何かしらの貢献があります。

 例えば、営業、販売、研究、製造、開発、人事、経理等々の職種、或いは社長、部長、課長、係長、一般社員といった立場など、企業組織においてそれぞれに分担された役割があり、その役割を全うすることそのものが貢献と言えます。そして、期待される貢献の内容やレベルは人によって異なり、仮に同じ貢献の内容やレベルを期待されていたとしても、人によってその貢献度合いは違ってくるのが現実です。

図①:人事制度とは?

図①:人事制度とは?

 つまり人事制度とは、「各社員の貢献レベルや実現度合の向上を図るために下支えする仕組み」と言うことができます。すなわち、会社が社員に求める貢献を明示し(等級制度)、その求める貢献度合を公正に評価し(評価制度)、その結果に基づき公正に処遇すること(賃金制度)、を通じて、各社員の貢献レベルや実現度合の向上を下支えする仕組みです。

 但し、この貢献は会社によって異なります。先ほど示した職種や立場などの「役割」だけでなく、「期待する行動」や「保有しておいてほしい能力」、あるいは「姿勢」や「態度」など様々です。どんな要素を貢献として定義するかによって、各社それぞれの人事制度の特徴も変わってきます。

2:人事制度とは、「何ができれば、どのように報われるのかを明確にして社員に伝えるための手段」である

 人事制度は、大きく分けると①等級制度、②評価制度、③賃金制度で構成されます。この3つの枠組みで解説していきましょう。

図②:人事制度のイメージ

図②:人事制度のイメージ)

■会社が社員に求める貢献を明示する(=等級制度)

 まず、上図の左側のステップに着目すると、1等級は一般で定型・補助業務遂行を行う者、2等級は主任で主体的業務遂行を行う者、3等級はリーダーで企画・指導監督を行う者、4等級は課長で管理統率を行う者、5等級は部長で部門牽引・経営補佐を行う者という階層による貢献レベルの違いを示しています。上の階段に行くほど賃金も高くなるということになります。これがいわゆる等級制度のイメージとなります。当然、階段の数は各社によって異なりますし、マネジメント以外に専門職を目指すための別の階段がある場合もあります。いずれにせよ、どういう貢献レベルを求めているかを示し、人事制度の骨格となるのが等級制度です。

■求める貢献を公正に評価する(=評価制度)

 次に等級や職種ごとに、どのような貢献が求められるかを具体的に定義して評価するのが評価制度です。図②には、業績評価、行動評価、能力評価とあります。これも会社によって定義の仕方は様々です。

図③:評価の例

図③:評価の例
  • 業績評価は、アウトプット、すなわち、求められる役割遂行に基づく、具体的な結果や成果を評価するものです。例えば、売上、利益、顧客訪問件数、ミス件数、期限遅れ件数等の業績指標を評価したり、期初に各自が目標テーマと達成基準を設定し、その達成度を成果として捉えて評価したりする方法などがあります。
  • 行動評価は、プロセス、すなわち、具体的な職務遂行行動。求められるアウトプットを出すために重要となる行動を評価するものです。例えば、階層別や職種別に求められる業績や成果を実現するために必要となる行動を評価したり、会社・組織の一員として共通的に求められる“価値観(=バリュー)”や“行動基準”を評価したりする方法等があります。
  • 能力評価は、インプット、すなわち保有している職務遂行に必要な知識やスキルを評価するものです。(行動評価と違い、実際に行動として表れていなくても、保有していると判断されれば評価されることになります)

 これらの観点から、自社で求める貢献に基づく内容を選択(上記3つの要素すべてを入れるパターンもあれば業績評価と行動評価のみとするパターンなど様々あります)し、具体的な評価項目や評価基準に落とし込んだうえで、人事評価表の形にして評価する仕組みが評価制度です。

■評価結果に基づき公正に処遇する(=賃金制度)

 最後に、人事評価表もとに評価した結果、つまり期待する貢献の実現度合いを定量化(評価点数やSABCD等の評語として表現)して、その度合いに応じて、どのように処遇するかを決定する仕組みが賃金制度です。具体的には、評価結果に応じて、基本給の給与改定の額を変えたり、賞与の支給額にメリハリをつけたりします。あるいは、評価結果をもとに昇降格を判断する材料にもします。また、評価結果を反映させずに、期待役割に応じて支払う役職手当や職務手当、あるいは属人的要素に基づいて支払う年齢給・勤続給や子ども手当・地域手当等の諸手当から賃金体系を構成することもあります。これらも会社が何を大切にしたいか、何で報いたいか、各社の考え方によって設定することになります。

 つまり人事制度とは、前述のような仕組みを構築することで「何ができればどのように報われるのかを明確にして社員に伝えるための手段」ということもできます。

~人事制度は、十社十色である~

 最後に、人事制度を考える上で最も大切なことは、会社によって様々であり、“十社十色”であるということです。他社の人事制度を参考にするのはよいですが、「自社にとっての貢献とは何か」、「それに対してどう報いたいか」を考えることが重要です。


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執筆者

飯塚 健二 
(人事戦略研究所 副所長)

独立系システム開発会社にて、システムエンジニア・人事・経営企画等の実務を経験。その後、大手金融系シンクタンク、監査法人系ファームにて人事・組織コンサルティングに従事した後、現職。主に人材・組織開発領域において、中小企業から大手企業まで規模・業界を問わず、15年以上の幅広いコンサルティング実績を持つ。
これまでに培った実践知と学際的な理論知(社会科学、認知科学、行動科学、東洋哲学等)を駆使しながら本質的・統合的・実践的なコンサルティングを行う。一社一社に真摯に向き合い、顧客目線に立った支援スタイルを信条とする。
キャリアコンサルタント。GCDF-Japanキャリアカウンセラー。iWAMプラクティショナートレーナー。