役職手当(役付手当)の相場と設計ポイント
賃金制度
昨今の賃上げ動向を踏まえ、賃金制度改定に関するお問い合わせやご依頼が増えています。そこで今回は、役職手当の相場や設計の際の留意点について考えてみたいと思います。
1.役職手当(役付手当)の検討ポイント
賃金制度の改定を行う際、役職手当(役付手当)については、一定の頻度で重要な議論になります。役職手当額の決定にあたっては、何かルールや決まりが存在するわけではありませんので、その支給額や役職毎の差額についても、会社が自由に定めることができます。
そのため、「主任」「係長」といった役職別の手当額も各社さまざまであり、どの程度の金額にすべきか、悩まれることもあるかと思います。
例えば、過去の人事制度設計例では、入社後3~4年で独り立ちして仕事ができれば「主任」になれる企業もあれば、経験10年以上経過しないとできないと言われる1つのプロジェクトマネージャーができるようになって初めて「主任」になれる企業もあります。
よって、役職手当の基本的な考え方は、担ってもらうべき役割を明確にした上で、その役割に見合った(社員さんから見て納得できる)金額を設定する、ということになります。そのため検討する際には、あらためて自社の役職ごとの「役割基準(役割責任の重さ)」を明確した上で設計することがポイントです。
□役職毎に求める役割を整理した例
また、役職手当設計時によく議論になる課題として「管理職と非管理職の給与逆転現象」があります。この問題が生じている企業の典型的な事例は以下のような形となっています。
例)建設業X社の事例
このケースでは、管理監督者である課長の基本給が高く、役職手当額も一定の差がついています。しかしながら時間外労働や休日出勤が一定量(月平均30時間程度)あるがゆえに、管理監督者ではない係長の時間外手当を含んだ月額給が、課長の月額給を超えています。
そのような事象が生じていると、いわゆる「管理職になりたくない」という声が若手社員から上がってくるのも無理はありません。法的な問題はもちろん、重要な役割を担っている課長への職務価値への対価、という意味でも望ましい状態とはいえないでしょう。
このような事象が生じている企業の経営者や人事担当の方の多くは、当然ながら問題視されているものの、実際には改善に向けて着手できていないケースが多くあります。
このように、役職手当の検討の際には、給与逆転問題が生じていればその課題解決をしながら設計していく必要があります。
2.役職手当(役付手当)の相場
前述のように、役職の定義や役割責任は、各社さまざまです。ゆえに、繰り返しになりますが、手当設計の留意点としては、自社の役割責任の重さに見合っているか、社員の納得感が得られるかどうかがポイントとなります。
よって役職手当の世間的な水準が必ずしも役に立つわけではありません。但し、参考情報として一通り確認はしておかれるとよいでしょう。
役職手当の世間水準を調査したデータは、いくつかあります。どれも調査対象企業が少しずつ違うため、複数の調査データを参考にしておくとよいでしょう。
■役職手当(役付手当)の相場
一方で手当額だけを見て決めてしまうと問題があります。基本給やその他の賃金水準により、社員さんの給与支給総額も変わってきます。手当額が世間水準であっても、役職者としての平均的な給与総額も見ておいた方がよいでしょう。以下のデータは、厚生労働省の賃金構造基本統計調査による役職別の所定内給与額の平均です。これらの水準と照らし合わせ、自社の役職者の手当額の妥当性を判断していくことが必要です。
今回は、役職手当の設計ポイントと役職手当の相場についてご紹介しました。
執筆者
川北 智奈美
(人事戦略研究所 マネージングコンサルタント)
現場のモチベーションをテーマにした組織開発コンサルティングを展開している。トップと現場の一体化を実現するためのビジョンマネジメント、現場のやる気を高める人事・賃金システム構築など、「現場の活性化」に主眼をおいた組織改革を行っている。 特に経営幹部~管理者のOJTが組織マネジメントの核心であると捉え、計画策定~目標管理体制構築と運用に力を入れている。
※コラムは執筆者の個人的見解であり、人事戦略研究所の公式見解を示すものではありません。
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