【就活生必見】手当に惑わされるな!-就活サイトや転職サイトの給与・報酬データの見方①-

就活生・求職者にとって、就職先の給与・報酬内容は非常に関心の高い項目だと思われます。
最近の新卒向け就活情報サイトや転職情報サイトでは、検索結果の一覧上で企業の給与・待遇を閲覧できる仕様になっていて、詳細なページを確認しなくても、他社と比較しやすい状態になっています。
しかし、詳細な企業ページの「採用後の待遇情報」や「給与・報酬情報」を見ても、自分の求める待遇なのかどうかの判断は、なかなか難しいものです。
 
例えば、次のような2社の求人情報があった場合、あなたはどちらが “良さそう” だと感じられますか。
 

2社の求人情報比較

 
本記事では、新卒入社される方や求職者に向けて、就活サイトや転職サイトの給与・報酬データ、採用後の待遇ページの見方を人事コンサルタント視点で解説します。ぜひ、企業内の人事担当者も、気にかけてみてください。
今回は、「手当に惑わされるな」編。手当が多く記載されていると、一見お得に感じますが、実際のところはどうなのか、を解説します。
 
■手当の有無に惑わされない
冒頭に掲載した例をご覧ください。B社に一律支給の手当に「住宅手当」があります。一方、A社には住宅手当がないようです。手当に厚いB社のほうが良く見えるかもしれませんが、今回の例ではそうとも限らないのです。
例の住宅手当は一律支給となっていて、実家住まいでも賃貸住まいでも関係なく、社員全員に支給されることになります。15,000円の支給が全員に約束されているのであれば……それは、基本的に支給される給与(基本給)と意味合いは変わりません。冒頭のケースでは、A社は基本給24万円、B社は基本給+住宅手当=24万円で、この金額の点だけを比較すれば、同じ条件になります。
手当は、その手当名称から想起される実態に合ったものとして支給をするのが相応しいと思いますが、設定自体は各企業の自由です。大卒の新入社員の月収総額を24万円と仮定し、基本給24万円としても、基本給+住宅手当(全社員一律)で24万円としても、何ら問題はありません。企業側からすると、このように切り分けて支給をすることで、手当に手厚い姿勢を見せたり、社員に向けて「衣食住の安心感に配慮している」というメッセージを出したりもできるわけです。
 
■毎月支給されない手当が記載されていないか
就活情報サイトや転職情報サイトの仕様上、仕方ないことなのですが、諸手当の記入欄は、ほぼ自由記述となっています。よって、毎月決まって支給する手当のみに限って掲載している企業もあれば、条件達成時に支給する給与を掲載している企業も、少なからずあります。(トラブルを避けるため、毎月支給の手当でない場合は、そのことがわかるように付記されていることもあります。)名称だけではなかなか判断できないことが多いので、必ず毎月支給される、といった早とちりは禁物です。
例えば、冒頭のB社側に記載しているように、「資格取得支援手当」等といった名称の手当などは、判断が難しいところです。資格取得時の支援として手当を支給するものなので、資格を取得しない場合は対象外となる可能性もありますし、特定のひとつの資格に対して1度だけ、支給されるものかもしれません。
ほか、達成手当(例:一定期間内の目標達成時に支給)、特殊作業手当(例:特殊な環境および器具を用いて作業する際に支給)、寒冷地手当(例:〇〇地域所管の営業所において、11~4月のみ支給)などが考えられます。
※手当名称やその内容は一例だとお考えください。
 
■時間外手当の記載がなくても、気にしなくて基本はOK
こちらも、新卒向け就活情報サイトや転職情報サイトに、どのように記述するか次第の話ですが……。
各サイトの企業ページを確認すると、時間外手当の記載について次のような違いが見られました。
 
 ・諸手当欄に「時間外手当」を記載していない
 ・諸手当欄に「時間外手当」と記載している
 ・諸手当欄に「時間外手当」「休日出勤手当」などと記載している
 
時間外手当は法定外残業に対する手当であり、労働基準法に基づく法律用語です。時間外手当の割増率は1.25倍以上と決まっており、時間外労働が発生した際は支払う必要があります。
よって、「当然支払うつもり」で記載していない企業もあれば、少しでも手当欄を充実させるために、他にも法律上支給の必要性を定めている「(法定休日に対する)休日出勤手当」など、時間外手当のバリエーションを記載している企業もあります。
ただ、「休日出勤手当」の記載があると、休日出勤の必要があるのかも、と思ってしまいますよね。作戦上、あえて記載されていないこともあるかもしれませんので、残業実態などは、サイトに掲載されている働き方データなどを確認されると良いでしょう。
 
時間外手当などの法定上のものを除けば、前述の通り、手当の設定自体は各企業の自由です。支給総額が同じ場合でも、シンプルな支給項目で求人情報を掲載している企業もあれば、複数の手当を記載している企業もあります。
支給されている手当の種類を見れば、どのような場合に報酬を支給したいと考えているか、その会社の人事方針(人に対する考え方)を垣間見ることができます。内容をよく知って、自分に合った企業選びの参考にしましょう。
 
次回は、「年間休日を要チェック!」編です。

執筆者

西澤 美典 
(人事戦略研究所 シニアコンサルタント)

前職の製造系ベンチャー企業では、営業・人事・総務・WEB制作担当等の実務に従事。
経営者の間近で幅広い業務に携わり、様々な企業や人との出会いを経て、「働く人々の毎日や職場を、より生きがいを感じることのできるものにしたい」という志を持ち、新経営サービスに入社。
経営者と共に、人事制度をキッカケにして、組織で働く人を元気にできるコンサルティングを心掛けている。
設計段階から、先々の運用をイメージした、組織になじみやすい制度づくりを行っている。
全米・日本NLP協会認定 NLPマスタープラクティショナー。

※コラムは執筆者の個人的見解であり、人事戦略研究所の公式見解を示すものではありません。

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