評価制度の改善に着手する前に①
人事考課(人事評価)
私たちのお仕事は、「人事制度がうまく機能していない」というようなご相談を受けるところから始まります。具体的には、「年功的なしくみのままで成果や貢献度に応じた処遇体系になっていない」「現行人事制度が古く、事業や組織の変化に対応できなくなっている」といったお悩みです。
そんなご相談をいただく中で、時々お聞きするのが「評価基準があいまいで、社員の納得度が低いので評価制度を改定したい」という主旨のお話です。一瞬、「なるほど」と思う課題ですが、さらに具体的に聞いていくと、評価制度が直接的原因ではないと考えられることがあります。実際に評価項目を見せていただくと、評価基準が多少大括りになっているものの、それほど問題とは思えません。
そこで更にご事情を深堀していくと、実は評価者のフィードバック力に問題があり、そのことが社員の納得度に影響している、という話に展開していくことがそれなりの頻度で起こります。また稀なケースですが、フィードバック面談を実施している部署とそうでない部署がある、といったこともあります。
このようなの状態で運用がなされている場合、評価項目を改定したとしても、結果的に数年後に同じ状態に至るのは目に見えています。前述のケースでは、評価項目の改定に着手する前に(或いは同時に)、本質的な問題である評価者のフィードバック力を高めるための施策を講じていく必要があります。
評価者のフィードバックがうまくいっていない場合、その原因として考えられる観点を列挙してみると、
①評価者が、そもそもフィードバックの目的やゴール、進め方などを理解していない。
(ゆえに、フィードバック面談の必要性を軽視していることもある。)
②評価者が評価項目の内容、意図を正しく理解していない(共有できていない)。
③フィードバック時に、評価者のコミュニケーションの取り方が一方的、または押し付けの発言が多く、被評価者が納得できる面談になっていない。
④そもそも評価者である上司と部下の間に信頼関係が成り立っておらず、部下の「面談臨む姿勢」が整っていないため伝わらない。
などがあります。これらに当てはまる点が多いほど、新しい評価制度を作成してもその改善効果は低くなります。
ではどうすればよいのでしょうか。次回は、これらの課題への対応について考えてみたいと思います。
執筆者
川北 智奈美
(人事戦略研究所 マネージングコンサルタント)
現場のモチベーションをテーマにした組織開発コンサルティングを展開している。トップと現場の一体化を実現するためのビジョンマネジメント、現場のやる気を高める人事・賃金システム構築など、「現場の活性化」に主眼をおいた組織改革を行っている。 特に経営幹部~管理者のOJTが組織マネジメントの核心であると捉え、計画策定~目標管理体制構築と運用に力を入れている。
※コラムは執筆者の個人的見解であり、人事戦略研究所の公式見解を示すものではありません。
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