会議は「場の目的」を明確にする

会議では、その目的を達するために、互いの意見を率直に伝える・論ずることが大切です。
しかしながらお客様先の会議に出席させていただくと、論ずるというよりは、互いに戦っているがごとく、相手の言葉尻を捉えて言い負かそうとしている光景を見かけることがあります。会話の「キャッチボール」ではなく、まるで「ドッチボール」です。
そのような会議の結末は、「次回修正した案をもってきます」など、修正の方向性すら不明確なまま結論が先送りになる、或いは「今日のお話を踏まえて頑張ります」など具体性がないまま根性論で終わる、ということが少なくありません。
 
このような現象が起こる要因としては、「出席メンバーの信頼関係が弱い」「組織全体が課題追求型の風土(いわゆるあら捜し)になっており、それが会議においても常態化している」「対立論をまとめるファシリテーターがいない(或いは力不足)」など、いくつか考えられます。恐らく複雑な事情が絡んでおり、「こうすれば即解決!」という手段はありません。
 
とはいえ、このような状態が長く続けば、参加者たちは”発言すること”自体が億劫になり、「意見を言わないで済むなら、黙っておこう」と思ってしまいます。そうなると会議を開く意義すらなくなってしまいます。
そこで、ファシリテーターが会議を進める上で、ひとつ大事にしてもらいたいことがあります。それは、会議の冒頭で「この場(会議)がどのような場であるか」について、メンバーと共有しておくことです。
 
例えば、上司が部下を集めてチーム目標や個人目標の進捗管理を行う会議の場合を考えてみましょう。
会議の目的は、「目標の進捗と課題を共有し、次の行動・解決策を明確にする」です。 その上で、さらに「今日の会議の場は、相互サポートの場である」ということを明確に伝えます。問題追求をする場でなく、それぞれの成功体験、障害要因を共有し、よりうまくいくようアイディアを出し合う場であることを強調してから始めます。
 
これにより、参加者が「サポートする場である」ことを意識して発言するようになります。つまり発言者が「クライアント」、発言者以外の全員が「コーチ」としての意識をもって臨むという場の構造を創り出すことです。「なぜできなかったのか?」などの問題追求をしてサポートという枠組みから外れようとした参加者がいれば、ファシリテーターが素早く是正を促します。「何が障害になっていますか」と言い換え、場の目的をもとに戻していきます。続けていくと、参加者全員の意識が常に「サポート」を意識できるようになります。
 
より効果的な、意義のある会議にしていくため、一度意識して取り組んでみてください。

執筆者

川北 智奈美 
(人事戦略研究所 マネージングコンサルタント)

現場のモチベーションをテーマにした組織開発コンサルティングを展開している。トップと現場の一体化を実現するためのビジョンマネジメント、現場のやる気を高める人事・賃金システム構築など、「現場の活性化」に主眼をおいた組織改革を行っている。 特に経営幹部~管理者のOJTが組織マネジメントの核心であると捉え、計画策定~目標管理体制構築と運用に力を入れている。

※コラムは執筆者の個人的見解であり、人事戦略研究所の公式見解を示すものではありません。

バックナンバー