「質問」と「詰問」
教育・能力開発
評価面談をするときに、上司と部下で次の目標を設定する場面だと想像して下さい。
コーチングのスキルをつかって、目標設定していく時の会話の中から、上司の質問だけを取り出してみると、
「評価結果を踏まえて、来期の目標設定をしよう。」
「売上目標は?」
「具体的にどんな顧客を開拓しようと思う?」
「開拓件数目標はどうしようか?」
「今までの営業方法からステップアップするためにできることは?」
「具体的には?」
「で?」
「じゃあ、早速明日から何をしようか?」
このように、具体化するような拡大質問をしていくことになります。
あえて質問の文言だけを並べてみると、少し息苦しくなるような気がしませんか?
コーチングは、上手に質問をしながら相手から答え(考え)を引き出すことが目的ではありますが、一歩間違えると「質問」ではなく、「詰問」に陥る可能性があります。
上司にしてみれば、一生懸命に考えを引き出そうと聴いているのですが、部下からしてみれば、少し「しんどいな」と感じるかも知れません。
今まで考えていなかったことをじっくり考えながら対応しているのですから、余裕は一切ありません。まして部下からすれば、上司の存在は大きく、それでなくても緊張するものです。
こんな時に重要なポイントは、「部下が安心してじっくり考える空間を創りだすこと」です。
具体的には、
・きちんと余裕をもった時間をとること
・周囲に気をつかわず、二人だけで話せる空間であること
・質問をしたら、じっくり間を与えること
などが、面談の際に最低限、配慮すべきことでしょう。
更に、部下から見て「上司が自分のためにサポートしてくれている、一緒に考えてくれている」という安心感をもつことができれば、より一層効果的です。
そのためには、
・部下が考えることに敬意をはらい、心から興味、好奇心をもって聴くこと
・表情や声のトーンなどに配慮し、温かく接すること
・「一緒に考えようか。」「ゆっくり考えればいいから」など、安心感を持ちやすい言葉を率直に伝える
などの方法があります。
「そんなこと普段の自分と違って気持ち悪がられる・・・」「俺のリーダーシップポリシーに反する」
などの声が聞こえてきそうですが・・・・、そこを何とか、ほんの少しでよいので、普段と違うやり方で実践してみて下さい。
違う行動をすれば、違う結果が得られるかも知れません。
執筆者
川北 智奈美
(人事戦略研究所 マネージングコンサルタント)
現場のモチベーションをテーマにした組織開発コンサルティングを展開している。トップと現場の一体化を実現するためのビジョンマネジメント、現場のやる気を高める人事・賃金システム構築など、「現場の活性化」に主眼をおいた組織改革を行っている。 特に経営幹部~管理者のOJTが組織マネジメントの核心であると捉え、計画策定~目標管理体制構築と運用に力を入れている。
※コラムは執筆者の個人的見解であり、人事戦略研究所の公式見解を示すものではありません。
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