なでしこジャパンと佐々木監督の指導法
教育・能力開発
ロンドンオリンピックが閉幕しました。
今までメダルが取れなかった競技や長年メダルから遠ざかっていた競技でメダルを獲得できたこと、またチーム競技によるメダル獲得と、日本人にとって嬉しいニュースの連続でしたね。
特によく話題になった「なでしこジャパン」。
佐々木監督率いるチームの強さの秘訣・・・そのひとつは佐々木監督の指導法であると言われています。
佐々木則夫監督の著書「なでしこ力」(講談社)の中で、彼はこう述べています。
「コーチの語源は、「馬車」だ。コーチという言葉には、「人をある地点まで送り届ける」役目を担う人、という意味がある。
ではコーチが馬車なら、選手はなんだろう。答えは「乗客」だ。
間違っても、選手は「馬」ではない。コーチ、つまり指導者の仕事とは、選手を馬のようにムチで叩いて走らせることではなく、乗客である選手たちを目標の地まで送り届けることだ。」
まさにコーチングの根幹となる考え方です。
コーチの役割とは、決して自分の思うように選手を動かすことではなく、「選手の望む目的地まで送り届けること」であり、選手の望みを聴き取り、その目的地に行くための手助けをするにすぎない、ということです。
佐々木監督は、その言葉通りに選手の自発的な考えを聴き取り、積極的に取り入れて試合や練習を進めるそうです。そうした指導であったがゆえに、選手が自ら考え、工夫するチームとなっていったのでしょう。
また佐々木監督は、普段からざっくばらんな態度で、親父ギャグをとばし選手を和ませることが得意であり、いいプレーの際にはよく褒め、落ち込んだ時にはフォローをする人だそうですね。そうした対応と選手達を信じる監督の想いが選手達に通じ、強い信頼関係が培われていったのでしょう。そして、その信頼関係があったからこそ、前述のようなコーチングアプローチが機能しているのだと思います。
企業における上司、部下の間においても、普段からのコミュニケーションによる信頼関係がなければ、部下への効果的な指導はできません。そして部下の想いに耳を傾け、部下をよく知り、部下を信じてサポートする気持ちが、部下の自発性、やる気を引き出すのだと思います。
以前にも書きましたが、コーチングは「質問する」ことに囚われてしまいがちです。 しかしながら、今回のなでしこの活躍と彼女達の笑顔を見ていて、コーチングの本質とは、「強い信頼関係を築くこと」や「コーチ側が目標達成の手助けをするんだ!という強い意識を持つこと」である、ということをあらためて認識しました。
執筆者
川北 智奈美
(人事戦略研究所 マネージングコンサルタント)
現場のモチベーションをテーマにした組織開発コンサルティングを展開している。トップと現場の一体化を実現するためのビジョンマネジメント、現場のやる気を高める人事・賃金システム構築など、「現場の活性化」に主眼をおいた組織改革を行っている。 特に経営幹部~管理者のOJTが組織マネジメントの核心であると捉え、計画策定~目標管理体制構築と運用に力を入れている。
※コラムは執筆者の個人的見解であり、人事戦略研究所の公式見解を示すものではありません。
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