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採用競争力の向上に向けた「賃上げ」について(3)

2017年10月20日 カテゴリ:賃金制度

執筆者:岩下 広文

人事戦略研究所 コンサルタント

大学卒業後、国内事業会社において人事・総務等の実務に従事。その後、人事アウトソーシング会社、及び、外資系大手コンサルティングファーム(※監査法人系)にて人事コンサルティング業務に従事した後、現職。人事評価・賃金制度構築や退職金制度設計だけでなく、組織・人事面における幅広いテーマでのコンサルティング経験を有する。人事の実務経験を活かした運用性の高い制度設計に定評がある。

前回のブログでは、採用競争力の向上に向けた「賃上げ」について、その"要否"や"可否"を判断する際の具体的な検討ステップについて解説した。それを踏まえて本ブログでは、「具体的にどのような引き上げ施策を採用するべきか、できるのか?」というテーマで論じていくこととする。

 

前回提示した4つのステップに基づく調査・分析を実施した結果、採用競争力の向上に向けて「賃金水準を引き上げるべき、引き上げることができる」という結論が導き出されれば、次に具体的な賃金引き上げ施策について検討を行うことになる。その際、賃金引上げの方向性として、「固定費として"恒常的な"賃上げを行うのか」それとも「賞与など業績に応じてコントロールできる賃金を"一時的に"引き上げるのか」という2つの大きな選択肢がある。

前者の「固定費としての恒常的な賃上げ」とは、例えばベースアップがそのさいたるものである。これができれば、採用競争力の向上だけでなく既存社員の定着化の面でも効果的であることは、言うまでもない。しかしながら、もしその選択が将来的な業績リスク/財務リスク等の理由により難しい場合、すなわち「今は業績がよいので賃上げをしてもよいが、将来的に業績が落ち込んだ際には賃金を引き下げたい」といったような場合には、賞与など変動費としての性質を持った賃金にて一時的(=非恒常的)な引き上げを実施することになる。

 

読者の中には、後者の施策・方法はいわゆる「賃上げ」とは言わない・・・と考えておられる方もみえるかもしれない。確かに、一般的には「賃上げ」というと「ベースアップ」や「定期昇給」を指すため、固定費としての給与の引き上げをイメージされる方が多いのは、ある意味当然であろう。

しかしながら、固定費として引き上げられた賃金(給与)については、当然ながら人件費コントロールが効きにくいコストになってしまう。このため、中小企業や景気変動の影響を受けやすい企業などにとっては、そう簡単に実施できる施策ではない。従って、一般的な「賃上げ」の定義からは逸れるかもしれないが、企業の経営・財務状況や属する業種特性など次第では、賞与等の変動費部分で非恒常的な賃上げを行うという方法も、現実的には検討の選択肢として入ってくることになる。

なお、「固定費としての賃上げ」が可能か、それとも「変動費としての賃上げ」に留まるのかについては、先に解説した調査・分析の段階で検証・検討を行うことになる。

 

【固定費としての賃上げ施策】

 ①「給与ベースアップ」・・・全社員(又は一部社員)の給与の底上げ

 ②「給与カーブの引き上げ」・・・基本給テーブル上の昇給ピッチの引き上げ

 ③「等級別給与レンジの上限額の引き上げ」・・・基本給テーブル上の昇給余地の拡大

 

【変動費としての賃上げ施策】※業績好調時

 ④「業績連動賞与による賃金水準の引上げ」・・・業績好調時に賞与の月数等をアップ

 ⑤「業績連動給与による賃金水準の引上げ」・・・業績好調時に給与の一部をアップ

 

上記施策のうち、①~④については賃上げ手段として実際によく用いられる方法であり、本ブログでは具体的な解説は割愛させていただく。

一方、残る施策である⑤については、少々珍しいケースかと思われる。しかしながら、当該施策こそが今回のテーマに最も合致する施策である。これについては、次回のブログにおいて具体的な解説を行うこととする。

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※コラムは執筆者の個人的見解であり、人事戦略研究所の公式見解を示すものではありません。