デモグラフィックダイバーシティとコグニティブダイバーシティ

1.デモグラフィックダイバーシティ

ダイバーシティ推進というと、女性活躍・シニア活躍・障がい者雇用といった取り組みを連想される方が多いのではないでしょうか。例に挙げた施策は、人材の「目に見える属性」に着眼したアプローチといえ、この考え方をデモグラフィックダイバーシティといいます。目に見える属性に着眼していますので、表層的ダイバーシティとも表現されます。

ヒトの外形的属性に着目したアプロ―チであるため、分かりやすく、どのような点に配慮すればよいかもイメージしやすい点が特徴です。ダイバーシティをこれから推進していきたいという企業にとっては、自社の現状も簡単に把握でき、取り掛かりやすい切り口といえるでしょう。その一方で、推進過程において、陥りがちな落とし穴があることにも留意が必要です。具体的には、以下の2点です。

 

①「活用する」という視点を欠いた議論に陥りがち

デモグラフィックダイバーシティでは、「目に見えやすい」ということもあって、推進度の比較的数値化しやすいです。例えば、女性管理職比率や障がい者雇用率といった具合です。数値化することで、成果性を測定できる点は有益ですが、重要な視座を欠いたまま議論が進んでしまうリスクに注意が必要です。ダイバーシティ推進の目的は、「多様な人材を受け入れ、活躍を促すことで、会社の成長につなげること」といえます。「受け入れる」と「活躍を促す」という2つの視点から推進度をチェックすることが肝要です。しかし、上記に例を挙げた指標は多様性の受容度を可視化したにすぎず、活躍度を測定できていません。ダイバーシティ推進に向けて、本質的な議論を行うためには「どう活躍を促すか?」といった視点を持ち合わせることが必要です。

 

②「アンコンシャスバイアス」への注意が必要

無意識の偏見、思い込みをアンコンシャスバイアスと言います。目に見える属性からダイバーシティを検討する場合、このアンコンシャスバイアスに注意が必要です。具体例を挙げると、以下のような具合です。

 ・若手社員は、出世よりワークライフバランスを望む

 ・当社の業態では、外国人社員の活用は顧客から受け入れられない

 ・女性社員は、責任のある仕事を避けたいと考えている   …等

多様性をどう活かしていくか?という議論を行う過程で、上記のような偏った見方をもとに課題設定・施策検討を行ってしまうケースがあります。本質的な議論を行うためには、外形的な属性に捉われず、ヒトの内面にまで踏み込んだアプローチが重要となります。

 

2.コグニティブダイバーシティ

コグニティブダイバーシティとは、ヒトの能力・知識や経験、価値観など「目に見えない属性」に着眼したアプローチです。深層的ダイバーシティやタスク型ダイバーシティとも表現されます。前述したデモグラフィックダイバーシティのデメリットを回避し、ダイバーシティの本来の目的を果たすためには欠かすことができない視点です。

「目に見えない」という特性もあり、自社の現状を把握することが難しく、その点が議論を進める足枷になりやすいです。特に、個人の価値観を把握することは困難です。現状把握が不十分では本質的な議論が行えませんので、以下のような方法から現状を掴むとよいでしょう。

 

 ・エンゲージメントサーベイやES調査の設問に、個人の価値観が把握できる設問を
  意図的に盛り込む。

  例)あなたはどのようなことにモチベーションが上がりますか? など

 ・社員の考えを生で聞く機会(座談会など)を定期的に設ける。

 

3.ダイバーシティ推進を加速させるには?

ダイバーシティを推進するとは、多様性への受容度と活躍度を高めることです。受容度と活用度の双方を高めるためには、表層的なアプローチだけでなく、ヒトの内面にまで踏み込んだ深層的なアプローチも必要です。後者は、まだまだ着手できていない企業も多いと思いますが、今後自社内で検討される際は、ぜひこのような視点をもって検討を進めてみてください。

執筆者

岸本 耕平 
(人事戦略研究所 シニアコンサルタント)

「理想をカタチにするコンサルティング」をモットーに、中堅・中小企業の人事評価・賃金制度構築に従事している。見えない人事課題を定量的な分析手法により炙り出す論理的・理論的な制度設計手法に定評がある。

※コラムは執筆者の個人的見解であり、人事戦略研究所の公式見解を示すものではありません。

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