3つの能力評価

自社の評価を「能力評価」と定義している企業があります。ただ”能力”という言葉は非常に曖昧で、何を評価すべきか混乱している企業もあるようです。

一般的に”能力”は、「潜在能力」「発揮能力」「保有能力」に分かれます。それぞれに意味づけをしてみますと、
 
・潜在能力 … 未だ、顕在化していない力
・発揮能力 … 現在、実際に顕在化している力
・保有能力 … 過去、顕在化した実績のある力
 
といったことになるでしょうか。
 
「潜在能力」は、未だ顕在化していないため、人事評価には適しません。潜在しているかどうかは採用で見極めようとしますし(実際には難しいですが)、潜在している場合は、教育により発揮させようとしますので、人事評価の対象から外れます。
 
「発揮能力」は、実際に顕在化している最中であるため、業績・成果・行動といった側面で見ることができます。人事評価にて判定し、賞与や昇給を決定材料にします。
 
「保有能力」は、過去の発揮能力です。過去に発揮され、既に評価されているため、能力給等の名称で本人の基本給となっているはずです。役割が変わったりして、実際に発揮する機会がない場合も多いため、人事評価には適しませんが、昇進・昇格の時などには考慮すべきでしょう。

 

たまに見受けるのが、保有能力を潜在能力と混同して捉え、「持っているかどうか分からない能力は評価できない」となったり、成果や行動を評価しているのにネーミングが能力評価になっており、「これは能力ではない」という議論になったりします。
 
自社の評価ポリシーを考える際には、何を評価すべきかもそうですが、そのネーミングも重要です。改めて確認してみてはいかがでしょうか。

執筆者

森谷 克也 
(人事戦略研究所 所長)

5~10年先の内部・外部環境を想定し、企業の成長を下支えする 「組織・人事戦略」 の策定・運用が図れるよう、 ≪経営計画-人事システム-人材育成≫ を連動させる組織・人事戦略コンサルタントとして実績を積んでいる。また、カタチや理論に囚われない、「中小企業の実態に即したコンサルティング」 を身上とし、現場重視で培った独自のソリューションを多く開発している。

※コラムは執筆者の個人的見解であり、人事戦略研究所の公式見解を示すものではありません。

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