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賃金設計講座(3): 賞与制度について⑤

2015年08月10日 カテゴリ:賃金制度

執筆者:岩下 広文

人事戦略研究所 コンサルタント

大学卒業後、国内事業会社において人事・総務等の実務に従事。その後、人事アウトソーシング会社、及び、外資系大手コンサルティングファーム(※監査法人系)にて人事コンサルティング業務に従事した後、現職。人事評価・賃金制度構築や退職金制度設計だけでなく、組織・人事面における幅広いテーマでのコンサルティング経験を有する。人事の実務経験を活かした運用性の高い制度設計に定評がある。

前回のブログでは、賞与制度を設計する際の2つ目の観点(項目)である「評価間のメリハリ」について、その制度的意義や目的を中心に解説した。今回のブログにおいては、当該観点の後半の解説として、個人評価によるメリハリのつけ方について触れるものとする。

■ 個人評価の賞与への反映方法
社員一人ひとりの貢献度すなわち評価結果を賞与に反映する意味合いについては、前回ブログで既述した通りである。すなわち、賞与の「業績配分的」性質を考慮するのであれば、会社業績のベースとなる個々人の成果やパフォーマンスを賞与算定において一定割合加味するというのは、目的以前の話しとして自然な流れである、という内容である。
なお、上記とは別角度の話しとして、目的的な観点から述べるのであれば、賞与への個人評価の反映を通じて社員の「動機付け」を図るという点が挙げられる。一般的に、経営者や人事が意図して個人評価を賞与算定に反映するのは、当該目的を主眼としているケースが多い。分かりやすさの観点からあえて月並みな表現を使うと、「頑張った社員には頑張った分だけ賞与を支給する」ということである。もちろん、当該目的に基づき評価を賞与に反映するのであれば、その逆も然りであり、成果やパフォーマンスが悪ければその分だけ賞与を削ることになる。

では、今回のブログのテーマである「具体的な反映方法」については、どのような手法があるのであろうか。ここでは代表的な以下の3つのパターンをご紹介する。
 ① 係数方式
 ② 金額方式
 ③ ポイント方式

いずれのパターンであっても、最終的には「評価によって支給額にメリハリつく」という点においては同じである。従って、実際には、"賞与算定方式"の違いによって個人評価の反映方法も異なるというのが本質であろう。

<①係数方式>
賞与算定方式として「給与連動方式」を採用している場合には、算定基礎額(基本給や所定内給与の一部など)に会社業績に基づく支給月数を乗じたあと、さらに個人評価による係数を乗じるという方法がある。当然ではあるが、評価ランクの高低に応じて個人評価係数も上下することになる。例えば、「A評価:1.2」「B評価:1.0」「C評価:0.8」などである。
この仕組みは、非常にシンプルで社員にとっても分かりやすいという点が第一義的なメリットとして挙げられる。また、動機付けの観点からは、支給月数も含めた賞与全体を個人評価係数で上下変動させるため、例えば会社業績が良くて個人評価も良ければ、累乗的に支給額が増えることになる。
なお、もし等級や役職などの階層によってメリハリの程度に変化をつけたいのであれば、階層ごとに評価ランク別の係数を設定することが必要になる。例えば、上位の階層ほど評価ランク間の係数格差を大きくすることにより、役割レベルに応じた処遇を実現させるケースもある。

<②金額方式>
賞与算定方式として「給与連動方式」を採用している場合には、上記①のやり方を採用しているケースが最も多いと思われる(※筆者推測)が、もう一つの方式として、評価ランクごとにあらかじめ固定額を設定しておき、「算定基礎額×支給月数」で算出された金額に当該固定額をプラス(またはマイナス)するという方法がある。
当該方式の場合には、①の方式とは異なり支給月数の部分に個人評価は直接的に影響を与えないため、個人評価反映分と未反映部分を分けたい場合に適している。例えば、労働組合がある会社の場合には、労組側がそのような要求を出してくるケースがある。
なお、もし階層ごとにメリハリの程度に差をつけたいのであれば、考え方のベースは①と同じである。すなわち、②の方式の場合には、階層ごとに評価ランク別の固定額を設定することになる。

<③ポイント方式>
「ポイント制」の賞与制度とは、あらかじめ等級・役職や人事評価に基づいて付与ポイントを設定しておき、そのポイントに1ポイント当たりの単価を乗じることで、各人の賞与額を算出する仕組みである。具体的には、「等級・役職(=階層)」と「個人評価ランク」のマトリックスで賞与ポイントテーブルをあらかじめ用意しておくことになる。
従って、評価結果に基づくメリハリを強くしたいのであれば、ポイントの評価間格差を大きく設定することになる。また、階層ごとにメリハリの程度に差をつけたい場合には、評価間格差の割合を階層ごとに変化をつけることで実現できる。

なお、上記①~③のどのパターンを採用するのであっても、評価によるメリハリをどの程度の割合/水準で設定するかについては、会社の考え方次第ということになる。業種や職種、階層によっても変わってくる(変えるべき)ものではあるが、評価によるメリハリがあまりに大きすぎると、社員が個人成果の追求のみに走ってしまったり、逆に失敗を過度に恐れてしまうなどの問題を誘発する可能性があるので、注意が必要である。逆にメリハリの程度が少なすぎても、そもそもの目的である「動機付け効果」が薄れてしまうおそれがある。個人的な見解にはなるが、少なくとも隣り合う評価間で最低でも10%のメリハリはつけるべきではないだろうか。

次回(以降)のブログでは、賞与制度を設計する際の3つ目の観点である「賞与原資算出ルール」について、具体的な設計ポイントや留意点などを解説していきたいと思う。

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※コラムは執筆者の個人的見解であり、人事戦略研究所の公式見解を示すものではありません。