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賃金設計講座(2): 諸手当の設計について⑧

2013年11月22日 カテゴリ:賃金制度

執筆者:岩下 広文

人事戦略研究所 コンサルタント

大学卒業後、国内事業会社において人事・総務等の実務に従事。その後、人事アウトソーシング会社、及び、外資系大手コンサルティングファーム(※監査法人系)にて人事コンサルティング業務に従事した後、現職。人事評価・賃金制度構築や退職金制度設計だけでなく、組織・人事面における幅広いテーマでのコンサルティング経験を有する。人事の実務経験を活かした運用性の高い制度設計に定評がある。

前回のブログでは、諸手当の一つである「地域手当」について、設計に際しての留意点等について述べた。今回のブログでは、5つ目の諸手当として「資格手当」を取り上げることとする。

■「資格手当」の定義とトレンド
資格手当とは、国家資格や民間資格などの一定の資格・免許の取得・保有状況に応じて支給する手当である。厚生労働省が2010年に実施した就労条件総合調査では、「技能、技術(資格)手当」としての採用率が約47%となっている。但し、当該カテゴリーには資格の保有に関係なく技能・技術レベルに応じて支給される手当も含まれていると推察されるため、今回取り上げるいわゆる「資格手当」の採用率としてはそれ以下になると考えられる。
なお、上記の調査で着目すべき点としては、資格手当の採用率の変化である。厚生労働省は同調査を2005年にも実施しており、その時点での「技能、技術(資格)手当」の採用率は約50%となっていた。従って、5年間で3%ほど減少したことになる。当該調査では他の多くの諸手当も2005年から2010年にかけて採用率が低下しているため、諸手当全体として減少傾向にある中で資格手当も同様の傾向を示していると考えることもできる。
ただ、採用率の減少傾向に資格手当独自の要因があるとすれば、おそらくそれは「手当から一時金への移行」というトレンドではないかと思われる。この10年・20年の間に、多くの企業が人件費の抑制や変動費化を進めてきた。その一環として、資格取得に対する報奨についても、固定費化してしまう手当方式から一時払いである一時金方式に変更している企業が増えつつあると推測される。
小生の個人的な意見としても、資格取得者に対する報奨のあり方としては、手当よりも一時金の方が良いと考えている。社員の能力開発を自己啓発の観点からも推進していく上において、資格取得者に対して何からの報奨を行うことは一定の効果性が期待できるものの、会社として本質的に重要なことは、資格取得を通じて得た知識やスキルなどを仕事上で具体的に発揮しもらうことである。資格は取得したけれど仕事上の成果やパフォーマンスは今まで通り・・・というようなケースは、実は結構あると思われるが、それでは会社として資格取得に対する報奨を支給している意味がない。従って、資格取得者に対してはその時点で報奨金等を一時払いするものの、それ以降に関しては通常の人事評価を通じて社員を処遇していくべきであると考える。

但し、本稿は諸手当(給与)についてのブログである。従って、以下では"諸手当としての"資格手当の設計にあたり特に留意すべき2つのポイントについて解説する。

【①業務との関連性を考慮すること】
ある仕事をする上で法律上必ず取得しなければならない資格や免許というものがあるが、これについては業務との関連性をわざわざ考慮する必要はない。しかしながら、職務遂行上、必ずしも法的に取得が必要とはされていない資格や免許というものも多数存在しており、資格手当の対象になるのはこちらの方が多いと思われる。このような資格・免許の取得者に対して資格手当を支給する場合には、業務との関連性を十分に見極めることが必要である。
分かりやすい例としては、例えば「社会保険労務士」の資格は人事・労務業務に携わる上では非常に役立つものの、それ以外の業務ではほとんど意味をなさない。
従って、資格手当の設計に際しては、支給対象となる資格・免許ごとに「業務従事要件」を定めるべきである。すなわち、「○○の資格に対する資格手当は、■■の業務に就いている場合のみ支給する」といった要件である。あくまでも大切なのは、「資格取得の効果を業務上で発揮してもらうこと」である。従事している業務と直接関係の無い資格にまで手当を支給することはナンセンスである。

【②支給対象となる資格の種類や手当額を定期的に見直すこと】
例えばIT系の資格などは、短期間で名称や内容が変更となるケースがある。特に、IT系の民間資格(ベンダー資格)は、その傾向が顕著である。IT業界の場合には、日進月歩で技術レベルが高度化したり、主流となる技術内容が変遷したりするため、資格についてもそれに応じて変更していく必要があるからである。
上記のように、資格自体の内容等が変更になった場合には、改めて自社の資格手当の要件や金額の妥当性を確認しておかなければならない。例えば、変更に伴って資格取得の難易度が変わった場合には、資格手当の金額の見直しも検討すべきである。
また、資格自体の変更に伴う見直しだけでなく、自社の業務との兼ね合いで資格手当を定期的に見直すことも忘れてはならない。例えば、かつては業務上の必要性が高い資格であったが、事業の見直しや業務領域の変化に伴って当該資格の重要性が低下するようなケースも想定される。そのまま放置しておくと、会社としては無駄なコストを払い続けることになってしまうため、数年ごとに自社の資格手当の有意性を検証し、必要に応じて見直しを行うことをお勧めする。

次回(以降)のブログでは、賞与について設計のポイントや留意点などについて解説をしていきたいと思う。

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※コラムは執筆者の個人的見解であり、人事戦略研究所の公式見解を示すものではありません。