評価フィードバックの進め方

 評価フィードバックに関するゴールや進め方、上司がやってはいけないことをまとめました。人事評価結果を人材育成に繋げていくために、効果的な評価フィードバックを解説しています。

-もくじ-

  1. 評価フィードバックとは
  2. 評価フィードバックの3つのゴール
  3. 評価フィードバックの進め方
  4. 評価フィードバックにおいて上司がやってはいけないこと

1.評価フィードバックとは

 評価フィードバックとは、評価者(上司)が被評価者(部下)に人事評価の結果を伝達することを指します。但し、人事評価結果を効果的に人材育成に活用していきたいのであれば、単に評価結果を伝達するだけでは十分な評価フィードバックとは言えません。人事評価の結果を伝達することに加えて、評価結果から部下の成長課題を明確にし、モチベーション喚起を図りながら、部下が更なる成長のために次の一歩を踏み出せるように導くことが肝要です。

2.評価フィードバックの3つのゴール

 人事評価結果を効果的に人材育成に活用していくための評価フィードバックにおける3つのゴールを紹介します。

①評価結果が伝わっている

“伝えている”ではなく、”伝わっている”ことが肝要です。単に評価結果を伝達するだけであれば、時間を割いて面談をする必要はありません。部下が納得できるよう、各評価項目の評価根拠について論理的(言語や数値)に説明できることが重要です。

②部下が自らの問題を認識している

上司・部下ともに点数の低い評価項目は、部下も自身の問題として認識しやすいですが、部下の点数が高く、上司の点数が低いような“ギャップ”が生じている評価項目は注意が必要です。それは、部下が「自分はできている」と判断している項目であり、放っておくと改善の努力をしません。部下が高い点数を付けた根拠を聞きながら、上司としての見解を述べることが肝要です。

③部下のモチベーション喚起ができている

部下に、「よし、チャレンジしてみよう!」と思わせることは、最も難易度の高いゴールです。「完遂するとレベルアップが約束されている」「具体的で取組みやすい」「上司の支援がある」等に注意しながら、やる気に繋げていくことが肝要です。

3.評価フィードバックの進め方

 評価フィードバックの進め方の一例は下記の通りです。あくまで一例ではありますが、評価フィードバックに慣れていないのであれば、まずは例を参考にしながら経験を積み、そのなかで自身の型を確立していっていただければと思います。

【評価フィードバックの進め方の一例】

評価フィードバックの進め方の一例

<Step1> 場を作る(アイスブレイク)

評価フィードバックと聞くと、多くの部下は「何を言われるのか…」と身構えてしまうものです。緊張を解きほぐすためにもいきなり本題に入らず、まずは共通の趣味や関心事等から話し始めてみることも一案です。なお、評価フィードバックを部下の成長のためのきっかけとするためには、評価フィードバックにおいて上司が一方的に話すのではなく、部下自身が考え、話しをする時間を多く持つことが肝要です。そのためにも、冒頭に緊張を解きほぐすための時間を設けることは効果的であると言えます。

<Step2> 論点を明確にする

一つ一つの評価結果を取り上げながら話しを展開していくと、どうしても広く浅くの話しで終わってしまいます。評価結果から部下の成長課題を明確にし、モチベーション喚起を図りながら、部下が更なる成長のために次の一歩を踏み出せるように導いていくためには、優先順位をつけて論点(例えば、社内連携に関する評価点が良くなかったこと 等)を絞り込んでいくことが必要となります。

<Step3> 解決策を考える

明確にした論点を深堀し、部下のレベルやタイプに応じた解決策を一緒に考えていきます。解決策については、大きなゴールだけではなく、部下が成長のための一歩を踏み出せるように、小さなゴールを設定することも肝要です。

<Step4> まとめる

最後に、評価フィードバック面談で話したことをまとめていきます。まとめについては、理解度を確認するために部下に話してもらうことも一案です。

以上、評価フィードバックの進め方の一例でした。限られた時間で目的を果たすためには、当日の成り行きに任せるのではなく、上司(会社)として「何を論点にしたいか?」「原因を踏まえてどのような解決策が効果的か?」等、事前にシミュレーションしておくことも肝要です。

4.評価フィードバックにおいて上司がやってはいけないこと

 最後に、評価フィードバックにおいて上司がやってはいけない3つのことを紹介します。

①制度への批判

「私の評価は高くしたのだけれども、会社が…」といったように、上司が制度を批判するような発言をすることは絶対に避けなければなりません。納得できないことや疑問があるのであれば、上司は会社や人事部に内容を確認し、評価フィードバック前に疑問を解消しておくことが肝要です。

②日常と異なる言動

「例えば、普段は”数字”しか言わない上司が、評価フィードバックの時だけ”お客様の為に”と言っても説得力がありません。部下の信頼を失う恐れもあるため、上司としての指導方針は終始一貫させることが肝要です。

③上から目線・下から目線

本人を抑えつけたり、逆に迎合したりすることも部下の信頼を失うことにつながります。評価フィードバックのゴールを意識しながら、課題解決を図るパートナーとして向き合うことが肝要です。

以上、評価フィードバックについてご紹介しました。あくまで一例ではありますが、評価フィードバック実践のご参考にいただければと思います。

執筆者

岸本 耕平 
(人事戦略研究所 シニアコンサルタント)

「理想をカタチにするコンサルティング」をモットーに、中堅・中小企業の人事評価・賃金制度構築に従事している。見えない人事課題を定量的な分析手法により炙り出す論理的・理論的な制度設計手法に定評がある。