キャリアパスの見える化⑨

前回のブログでも述べた通り、社員の多様な働き方ニーズに対応する仕組みとして限定社員制度は注目されています。
 
ただ、限定社員制度を導入すると、会社側は一部の社員に対して一定水準以上の命令を下せないことを意味します。具体的には、
 
 
 地域限定社員・・・適用社員に対して「転居を伴う転勤」を命令できない
 
 職務限定社員・・・適用社員に対して、「職種転換・配置転換」を命令できない
 
 時間限定社員・・・適用社員に対して、「適用時間外の業務(残業など)」を命令できない
 
 
といったものです。場合によっては、組織運営や業務遂行に支障を来す場合があります。例えば、
 
 
 ① 地域限定社員が多すぎると、欠員の発生している拠点に別拠点からの人員補給ができない。
  (新規採用に頼らざるを得なくなる。)
 
 ② 時間限定社員が多すぎると、繁忙期は業務が遅滞しがちになる。
 
 
このようなことが発生すると、必要以上に社員が増えてしまい、人件費の高騰を招くリスクがあるだけでなく、一部の社員に負担をかけすぎてしまい、限定社員制度が却って社員の不満を招く種になる可能性もあります。
 
したがって、制度導入にあたっては、こういった不具合が発生しないかを事前に確認した上で制度導入の可否を判断することが重要です。
 
 
 
◆限定社員制度を機能させるために
 
限定社員制度は、社員の多様な働き方ニーズに応える仕組みとして社員からの受けもよい仕組みです。そのため、社員側のメリットばかりに目を向けてしまいがちです。ただ、限定社員制度をうまく機能させていくためには、
 
 
 ① 会社側にとって、どのようなメリットがあるか?
 
 ② 導入すると、会社にどのようなデメリットが想定されるか?
 
 
といった会社視点に立った議論を忘れてはいけません。会社・社員双方の視点から限定社員制度を導入する意義や目的を明確にする。そして、その目的に沿った制度設計を進めることが限定社員制度をうまく機能させていく上でのキーポイントとなります。

執筆者

岸本 耕平 
(人事戦略研究所 シニアコンサルタント)

「理想をカタチにするコンサルティング」をモットーに、中堅・中小企業の人事評価・賃金制度構築に従事している。見えない人事課題を定量的な分析手法により炙り出す論理的・理論的な制度設計手法に定評がある。

※コラムは執筆者の個人的見解であり、人事戦略研究所の公式見解を示すものではありません。

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