コーチングは機能するのか?(2)
教育・能力開発
もう1つの理由は「継続した努力」がなされていないこと、ではないでしょうか。
コーチング・・・というスキルを一度学んで使えば、それなりに機能するものだという思い込みがあるかも知れません。コーチングを「知っている」レベルから「体得する」レベルに至るには、それなりの時間を要するものだと思います。
例えば、英語。日本人ならほとんどの人が6年以上の月日をかけて学びます。でも実際使っていないために、ほとんどの人が話せないままですよね。先日ある方とお話をしていて伺ったことですが、「英語が話せるようになるにはどうすればよいか?」という質問を、”英語が話せる人”を対象に聞いたところ、実に様々な方法が出てきたそうです。でもその中で、たったひとつ共通していたことは 「継続すること」 だったそうです。
コーチングも同じではないでしょうか。コーチングさえ学べば、魔法のように部下との関係性が変わるわけではありません。またその手法も一度学べばわかったような気になってしまい、偏ったスキルに頼ってしまう・・・。そんなことが起こっているのではないでしょうか。部下にしてみれば、今まであまり愛想の良くない上司が、急にニコニコして「で、どうすればいいと思う?どうしたい?」と聞いてきても、戸惑ってしまいますよね(笑)。
上司にしてみれば、部下の反応が今ひとつで、うまくいかないことが続けば、今までの自分のやり方に戻してしまう。そうしているうちに「コーチングは使えない、使いにくい」と思ってしまうのも無理はありません。
コーチングは一朝一夕で身につくものではありません。七転八倒、何度も失敗を繰り返してはじめて筋肉となり、ごく自然に使いこなせるようになるのだと思います。そうでないとプロのコーチの存在価値がありませんよね。
「よし!今日はコーチング的アプローチで、部下に接してみよう!」と、決意してやってみる。するとはじめのうちは、相手の話を聴いて、いい質問をしようする。ところが段々、「こうすればいいのに」とか自分のあるべき論が出てきて、「これが大事だろ!」「君のこの部分については、もっとこうした方がいいんじゃないの?」と助言してしまい、最後には”熱血指導!”なんてことはよくある話です。
で、反省・・・・。そうして何度もトライしているうちに、身についていくものなのでしょうね。
次号から、コーチングを現場で機能させるポイントをご紹介していきます。
執筆者
川北 智奈美
(人事戦略研究所 マネージングコンサルタント)
現場のモチベーションをテーマにした組織開発コンサルティングを展開している。トップと現場の一体化を実現するためのビジョンマネジメント、現場のやる気を高める人事・賃金システム構築など、「現場の活性化」に主眼をおいた組織改革を行っている。 特に経営幹部~管理者のOJTが組織マネジメントの核心であると捉え、計画策定~目標管理体制構築と運用に力を入れている。
※コラムは執筆者の個人的見解であり、人事戦略研究所の公式見解を示すものではありません。
バックナンバー
- 70歳雇用時代に向けたシニア社員の活用
- 2024年最低賃金引上げの動きと今後
- 2024年の初任給水準
- 2024年の中堅・中小企業の賃上げ動向 ~中小企業では賃上げに限界感!~
- 70歳までの雇用が義務化されるのは、いつごろか?
- 令和5年度(2023年度)最低賃金はついに全国加重平均で1000円超え
- 2023年の初任給平均の実態と今後
- 2023年の賃上げ動向 ~中小企業は二極化か?~
- 役職手当(役付手当)の相場と設計ポイント
- 中小企業が人事制度を導入する際の留意点
- 社員50名以下の中小企業が人事制度を作成する価値②
- 社員50名以下の中小企業が人事制度を作成する価値①
- 評価制度の改善に着手する前に②
- 評価制度の改善に着手する前に①
- オンライン会議活性化のポイント②