人材マネジメント領域において外部環境を認識する視点
人事制度
変化の激しい時代に適応するためには、自社を取り巻く外部環境を的確に認識することが重要です。今回は、人材マネジメント領域において、どのように外部環境を認識すればよいか、4つの視点を提示してみたいと思います。
なお、4つの視点は、経営戦略やマーケティング戦略を検討する際に使用するPEST分析(P=Politics(政治)、E= Economy(経済)、S=Society(社会)、T=Technology(技術)という4つの頭文字)を参考にしています。
まず、「政治」の観点を人材マネジメント領域に当てはめてみると、例えば「コンプライアンス」等があげられます。コンプライアンスリスクを軽減するために、労働法や労働政策の最新情報や動向を把握することが重要です。特に、昨今では、同一労働同一賃金や高年齢者の安定雇用、最低賃金のアップ、男女間の賃金格差の公開含めた人的資本開示等を押さえておくことが肝要です。
次に、「経済」の観点を人材マネジメント領域に当てはめてみると、例えば「賃金水準」等があげられます。人材の獲得力を強化したり、優秀な人材の定着を促したりするために、外部水準(初任給や月例給与、賞与、年収、賃上げ率等)と比べて自社はどの程度のレベルであるかについて定期的にウォッチしておくことが重要です。
また、「社会」の観点を人材マネジメント領域に当てはめてみると、例えば「人事制度トレンド」と「働き方改革」等が挙げられます。
人事制度トレンドについては、業界や他社における人事制度の動向を把握しておくことが重要です。昨今ではジョブ型人事制度、定年延長制度などがテーマとしてあります。他社の真似をするということではなく、あえて世間とは違う制度にすることで人材マネジメント力を上げることも含めて、自社にあった制度にするための参考情報として把握しておくことは有効です。
一方、働き方改革については、特に、柔軟な働き方として、フレックスタイム・テレワーク・副業・兼業・両立支援等の動向を押さえておくことが挙げられます。
最後に、「技術」の観点を人材マネジメント領域に当てはめてみると、「HRテック」があげられます。労務管理や給与計算等のシステム化だけでなく、最近では、採用や定着・評価・育成等、幅広い領域で、テクノロジーを活用したHRサービスが続々と出現してきています。自社の人材マネジメント機能を効率化したり強化したりするツールとして、HRテックの活用を検討することも重要です。
上記を多角的にかつタイムリーに情報収集していくことが必要です。その上で、自社の人材マネジメントの現状や将来ビジョンを検討し、その機能を強化していくことが重要です。
ご参考までに、弊社ホームページにも関連する情報を随時アップしていますので、その一例を最後にご紹介いたします。
■コンプライアンス関連(一例)
無料セミナー動画:「同一労働同一賃金の最高裁判決」セミナー等
情報提供サイト:同一労働同一賃金.com
外部情報:最低賃金引上げの影響および中小企業の賃上げに関する調査
人事ブログ:いよいよ人的資本開示が本格化!男女間の賃金格差開示で、企業間格差が露呈!?
■賃金水準関連(一例)
■人事制度トレンド関連(一例)
各種セミナー
コンサルタント執筆書籍:人手不足を円満解決 現状分析から始めるシニア再雇用・定年延長
人事制度ノウハウ:ジョブ型人事制度の構築ポイント
■働き方改革関連(一例)
人事ブログ:テレワークに関するテーマをふくむ「労務関連」一覧
人事ブログ:限定正社員(多様な正社員)制度導入のポイント
■HRテック関連(一例)
人事ブログ:人事を支える情報技術「HRテック」一覧
執筆者
町田 耕一
(人事戦略研究所 コンサルタント)
大手IT企業にて、自社システム企画・顧客への人事給与システム導入・人事総務等の実務に従事、それぞれで製品化・予定の1/4の納期での導入・迅速な業務遂行による部署内表彰などの成果を出す。
新経営サービス入社後は、人事・情報技術の知見を活かし、人事制度策定・運用だけでなく、HRテックの導入と運用に対する顧客や社会への提案も積極的に行っている。新経営サービス内でのHRテック導入と運用も担当しており、各企業に合うHRテックの導入と運用に明るい。
G検定(AI活用検定)に2019年3月合格後、E資格(AI作成能力)合格者との限定コミュニティ(CDLE、5万名以上所属)で活動。「NEWS+」グループのリーダー。2022年、貢献に対するメンバーの投票等で決まる最優秀賞をグループ・個人とも受賞。
AIに関する法律や倫理を考える「AIリーガル」グループのメンバーでもあり、英国王室公認品質協会(CQI|IRCA)から、世界80か国、2万名以上の会員に発刊された『Quality Magazine』誌2022年秋号のAI特集記事への寄稿にも協力。
※コラムは執筆者の個人的見解であり、人事戦略研究所の公式見解を示すものではありません。