人事評価のフィードバック面談を効果的に実施するために

1.フィードバックとは?

フィードバックとは、上司が部下に自分では気づかない長所や弱点を伝え、成長を促すことです。フィードは「食べ物」や「栄養」を意味する言葉で、成長するための材料を与えることを意味します。

 

フィードバックは、人材育成において非常に重要であり、部下への適切なフィードバックによって、部下は自分の長所に自信を持ち、弱点を改善して、会社に貢献する人材に育っていくことを支援します。「会社により高いレベルで貢献する人材に成長すること」を促すことが、フィードバックの大事な意義です。

 

今回は、代表的なフィードバック機会の一つである、期末評価について取りあげてみたいと思います。

 

2.人事評価のフィードバックの流れ(例)

期末評価で、評価表を見せて上司から部下にフィードバックを行う際、何をどの順番で伝えるかという流れにも、ちょっとしたコツがあります。経営者や人事担当者の方は、社内でフィードバックのやり方ついて、各部署の上司に伝える際などに、参考にしてみてください。

 

①目的を伝える

はじめに、フィードバックの目的は、「会社により高いレベルで貢献する人材に成長すること」を促すことだと、上司から部下に伝えてもらいましょう。それによって部下は、この場は何のために設けられているのか、理解できます。そしてその後も、「今なぜこの話がでているのか」を理解しやすくなるはずです。

 

②評価結果を伝える

次に、評価結果を伝えてもらいます。これは、上司と部下がフィードバック面談を行う機会のある会社でしたら、既に実施されているところがほとんどではないでしょうか。総合評価と各項目について、評価の点数をそのまま、上司から部下に伝えてもらいましょう。

 

③良かった点や長所を具体的に説明する

続いて、良かった点や長所を具体的に説明してもらいます。評価している点(良かった点)を、改善してほしい点より先に伝えるのが、重要なポイントです。人間は長所を伝えてもらって、相手に認めてもらったと思えないうちは、弱点の改善などによる、成長に目を向けづらいものです。

 

よく「何度部下に弱点を指摘しても直らない」という上司の方がいらっしゃると思います。これは経験上、先に部下の長所を認めることで、いくらか改善すると思われます。まずは、自尊心を持ってもらうことが大事です。そうすれば、「私のことを認めてくれる、信頼できる上司の言う事を聞こう」と思ってもらえて、成長を促しやすくなります。

 

④主観ではなく事実を説明する

上記で述べた長所を上司から部下に伝えてもらう際も、続けて改善してほしい弱点を伝えてもらう際にも、重要になってくるのが、主観ではなく、事実を伝えてもらうという点です。評価表を使ったフィードバックでよく問題になるのが、評価理由があいまいにしか伝えられないことです。社内外のうわさや部下の日頃の雰囲気などを元に、なんとなく評価を付けてしまうと、このようになりがちです。

 

長所を事実ベースで伝えられた部下は、「こういう言動を増やせば良いのか」と理解でき、更なる貢献と成長に繋がるでしょう。また、弱点を事実ベースで伝えられた部下は「こういう言動はダメなのか」と、自分自身の課題を事実ベースで考えられ、貢献を阻害する言動の減少に繋がるでしょう。フィードバックの際は、プラス評価、マイナス評価とも、その元となった事実を伝えてもらいましょう。

 

⑤最後に成長課題を共有、確認する

最後に、事実ベースの改善、成長してほしい点をふまえた上で、その後の成長課題を話し合い、確認して記録に残す時間を取ってもらいましょう。フィードバックの際によくあるのが、話しっぱなし、やりっぱなしになってしまうことです。記録に残すことで、フィードバックの後も、上司、部下ともに見直して「ここが課題だったな」と、確認できるようになっていると良いでしょう。

 

3.フィードバックを助けるための評価表の工夫

最後に、評価表を作成・改定する経営者や人事担当者の方が、評価表に施せる工夫を紹介いたします。これにより、上司から部下に、上記の流れで適切なフィードバックがしやすくなるでしょう。

 

意識せずとも理想的な流れに沿って、上司が部下にフィードバックできるよう、評価に関わる事実(下記①→②)を記入する欄と、面談での合意を記入する欄を、評価表に用意されてはいかがでしょうか。たとえば、下記のように、最初に「評価している点(よかった点)」、次に「改善、成長をしてほしい点」、最後に「面談で合意したこと」を書くという構成にするのはいかがでしょうか。

 

評価表の工夫

 

日頃から上司に①と②の欄に、長所と直してほしい弱点を、事実ベースで記入してもらいましょう。その内容をフィードバックの際に、部下に伝えてもらった上で、フィードバック面談の最後に、③に上司と部下で話し合った上で合意したことを、記入してもらいましょう。記録にのこして、見返せるようにすることで、「会社により高いレベルで貢献する人材に成長すること」がよりスムースに促されると思われます。

 
以上、今回のブログでは、評価表の作成や改定に携わる経営者や人事担当者の方に向けて、「フィードバックの定義」、上司から部下への「フィードバックの流れ」とそうする理由、「フィードバックを助けるための評価表の工夫」について提案しました。

このような評価表の運用が、御社で諸事情によって、紙やExcelでは厳しい場合は、HRテック(人事を支えるITシステム)の導入も、検討されることをおすすめいたします。

執筆者

町田 耕一 
(人事戦略研究所 コンサルタント)

大手IT企業にて、自社システム企画・顧客への人事給与システム導入・人事総務等の実務に従事、それぞれで製品化・予定の1/4の納期での導入・迅速な業務遂行による部署内表彰などの成果を出す。
新経営サービス入社後は、人事・情報技術の知見を活かし、人事制度策定・運用だけでなく、HRテックの導入と運用に対する顧客や社会への提案も積極的に行っている。新経営サービス内でのHRテック導入と運用も担当しており、各企業に合うHRテックの導入と運用に明るい。
G検定(AI活用検定)に2019年3月合格後、E資格(AI作成能力)合格者との限定コミュニティ(CDLE、5万名以上所属)で活動。「NEWS+」グループのリーダー。2022年、貢献に対するメンバーの投票等で決まる最優秀賞をグループ・個人とも受賞。
AIに関する法律や倫理を考える「AIリーガル」グループのメンバーでもあり、英国王室公認品質協会(CQI|IRCA)から、世界80か国、2万名以上の会員に発刊された『Quality Magazine』誌2022年秋号のAI特集記事への寄稿にも協力。

※コラムは執筆者の個人的見解であり、人事戦略研究所の公式見解を示すものではありません。

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