社員50名以下の中小企業が人事制度を作成する価値①

これまで弊社にいただいたお問合せから推察すると、「社員数が50名程度の規模になってくると、そろそろわが社も人事制度が必要か」と検討される企業が多いようです。
人数が少ない頃は、社長の目が届くので、それなりに公平に評価して給与や賞与を決めることができたが、50名を超えてくると現場まで目が届かない、という理由から、弊社へ人事制度策定のご依頼が入ることがあります。確かに人事制度における「公平な処遇」という意味では、規模が大きくなれば社員全員のことを誰か一人で見ることができなくなり、制度の必要性が生じてきます。人事制度を策定することで、社員の仕事ぶりを「何をもって評価するのか」「できればどの程度の昇給をするのか」等をルールに定めることができ、一定の公平性が保たれることになります。
 
では50名以下の企業では、人事制度は必要ないのでしょうか。
これについては、個人的な考えですが「人事制度はあるに越したことはない」と考えています。そこで人事制度の目的から考えてみたいと思います。
人事制度は、広義の意味で捉えると経営計画を実現するために適正な人材マネジメントを行うことを目的としています。そのために、社員の能力を最大限に引き出し、且つ組織への信頼や社員モチベーションを維持・向上できるものである必要があります。
 
もう少し具体的に人事制度の目的を捉えると、次のようになります。
 
1.方針の伝達
会社が、経営方針を評価指標などに落とし込み、社員に「どのような成果・行動を求めているか」を具体的に示し、それに向けた社員の行動ベクトルを合わせる機能
 
2.公平な処遇の実現
会社が求める成果の達成、行動の遂行について、一貫性のあるルールに基づいて評価することで、公平性を担保し、社員のモチベーション維持・向上を図る機能
 
3.社員の成長促進
人事制度を定めることにより「何ができれば」「どうなるのか」を可視化することで、社員から見て努力すべき方向性が見え、成長への動機づけ、行動を促進する機能
 
人事制度は上記3つの目的を考慮しながら設計していく必要があります。
次回は、50名以下の企業でも「人事制度はあるに越したことがない」と述べた理由について、この3つの観点でご紹介してまいります。

執筆者

川北 智奈美 
(人事戦略研究所 マネージングコンサルタント)

現場のモチベーションをテーマにした組織開発コンサルティングを展開している。トップと現場の一体化を実現するためのビジョンマネジメント、現場のやる気を高める人事・賃金システム構築など、「現場の活性化」に主眼をおいた組織改革を行っている。 特に経営幹部~管理者のOJTが組織マネジメントの核心であると捉え、計画策定~目標管理体制構築と運用に力を入れている。

※コラムは執筆者の個人的見解であり、人事戦略研究所の公式見解を示すものではありません。

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