人の話が聞けない理由
教育・能力開発
コーチングをする上で、相手の話を聴く姿勢が重要であることは何度かお話ししています。
まずは、聴こうとする気持ちが重要です。
しかしながら、人は普段のコミュニケーションの中で、ちゃんと「聴く」ことができていない場合は非常に多いものです。
なぜ聴けないのか?
具体的に上司にありがちな、「聴くことの阻害要因」を整理してみたいと思います。
ひとつは「自己の価値観・判断基準によるジャッジ(判定)」です。
例えば、上司が「仕事はスピードが大事だ!」という強い価値観をもっているとしましょう。長年の経験上、「仕事が遅いやつに、仕事ができる人間がいた試しがない」という判断基準が培われているとすると、もし部下がコツコツと時間をかけて仕事をするタイプの場合、「ダメな人間だ」「できないやつだ」と意識の中でジャッジ(判定)してしまうことがあります。
また、元気で明るい性格の部下とそうでない部下。こんなときも、上司のタイプによって「判断」が出てきます。
コミュニケーション上でも同じことが起こります。わかりやすい例でいえば、帰宅後の奥様との会話。
「ねえねえ、今日さ、近所の○○さん家の奥さんがね・・・・」と話しかけてこられた時、
「また近所のつまらない噂話かよ・・・疲れているのに・・・」と心の声が呟いたとしましょう。この時点で既にちゃんと「聴く」ことはできなくなっています。
今までの経験と自分の価値観で相手の話を「つまらない」とジャッジし、恐らく「うるさいから適当にうなづいておこう」という思考が働きます。で、結果適当に聞いている感じが見え見えの態度になって、「あなた!!ちゃんと聞いているの?(怒)」
自分にとって「つまらない噂話」ですが、奥様にとっては日常を取り巻く大事なことかも知れません。
仕事においてもこのようなことは頻繁に起こります。
例えば、部下がまだ経験の少ない仕事について質問してきた時、「わかってないなぁ・・・」と思ってしまうかも知れません。これがジャッジです。すると、なんとなく態度に表れ、部下が「こんな質問しなければ良かった」と萎縮してしまい、報連相の回数が少なくなる・・・・ということが起こる可能性もあります。
「そんなこと、いちいち気にしていたらコミュニケーションがとれない!」と思いませんか?
そうなのです。人は人と会話しながら、実は常に自分の頭の中でも会話をしています。 だからこそ、コミュニケーションは難しい・・・とつくづく感じます。
まずは、人にはそういう傾向がある、ということを頭の片隅に置いておいて下さい。
そうすれば、「相手の話を純粋に聴く、心で聴く」というところにまた少し近づけるのかも知れません。
執筆者
川北 智奈美
(人事戦略研究所 マネージングコンサルタント)
現場のモチベーションをテーマにした組織開発コンサルティングを展開している。トップと現場の一体化を実現するためのビジョンマネジメント、現場のやる気を高める人事・賃金システム構築など、「現場の活性化」に主眼をおいた組織改革を行っている。 特に経営幹部~管理者のOJTが組織マネジメントの核心であると捉え、計画策定~目標管理体制構築と運用に力を入れている。
※コラムは執筆者の個人的見解であり、人事戦略研究所の公式見解を示すものではありません。
バックナンバー
- 70歳雇用時代に向けたシニア社員の活用
- 2024年最低賃金引上げの動きと今後
- 2024年の初任給水準
- 2024年の中堅・中小企業の賃上げ動向 ~中小企業では賃上げに限界感!~
- 70歳までの雇用が義務化されるのは、いつごろか?
- 令和5年度(2023年度)最低賃金はついに全国加重平均で1000円超え
- 2023年の初任給平均の実態と今後
- 2023年の賃上げ動向 ~中小企業は二極化か?~
- 役職手当(役付手当)の相場と設計ポイント
- 中小企業が人事制度を導入する際の留意点
- 社員50名以下の中小企業が人事制度を作成する価値②
- 社員50名以下の中小企業が人事制度を作成する価値①
- 評価制度の改善に着手する前に②
- 評価制度の改善に着手する前に①
- オンライン会議活性化のポイント②