目標管理における部下の目標設定
教育・能力開発
さて、そろそろ新年度という企業も多い中、部下の目標設定に悩まれている上司の方もいらっしゃるのではないでしょうか。
ここ数年、目標管理制度の運用のお手伝いをする機会が多いのですが、上司の方から「部下の目標設定レベルが低い」とのご意見を伺うことがあります。詳しく聞いていくと、①部下の成長のためにより高い目標を持ってほしいのに、評価のことを考えて低いレベルの目標しか設定しない。②部門目標との連動を考えると、結局部下に目標を引き上げさせることになり、部下の納得が十分に得られていないこともある。
部下の目標設定レベルの引き上げと納得性に関する課題です。なかなか難しい課題ですのでこうすればよい、というミラクルな手法はないのですが、改善ポイントが2点あるかと思います。
まずひとつめは、「期待レベルをダイレクトに伝えてから、じっくり話す」ということです。「こういう理由でこれだけの目標をやってほしい」と上司として期待したい目標レベルを最初にはっきりと伝えることで、「上司からの期待感」や「部門目標達成への貢献」など、部下にとってその目標を設定する意味付けがはっきりします。その上で、部下からの反論や否定があれば、そこからじっくりと話を聴いていくと、部下の本心もはっきりしてくる上に、不満感につながりにくいのではないかと思います。
もうひとつは、部下のキャリアプランとのつながりを明確にしてあげることです。つまり部下にとって、人生または仕事において「こうなりたい」「将来こんな仕事がしたい」という目標と、今の役割、立場における目標が、どうつながっているのか?について、明確にしておくことです。そのためには、まず「こんな仕事がしたい」という将来像を部下にできるだけ具体的に語らせ、明確にイメージできるまでコーチングしてみましょう。(仕事レベルでの目標がなければ、人生レベルの目標やどんな生き方がしたいのか、などより大きなスケールで目標を具体化しましょう。)
具体的にイメージが持てれば、その将来像と今の仕事や目標との関係性について、部下に考えさせ、部下自身の内発的な理由づけをしてあげるとよいかと思います。この時、上司はついつい自分の意見を伝えがちですが、ここはなるべく自分の意見を言わず、あくまでも聞き役に徹してみて下さい。じっと話を聴いて、オーム返しを続けていれば、部下自身がきちんと考えて話をしてくれるものです。
目標設定において、部下が内発的に「やろう!」とする気持ちを強く引き出すきっかけになるかも知れません。
執筆者
川北 智奈美
(人事戦略研究所 マネージングコンサルタント)
現場のモチベーションをテーマにした組織開発コンサルティングを展開している。トップと現場の一体化を実現するためのビジョンマネジメント、現場のやる気を高める人事・賃金システム構築など、「現場の活性化」に主眼をおいた組織改革を行っている。 特に経営幹部~管理者のOJTが組織マネジメントの核心であると捉え、計画策定~目標管理体制構築と運用に力を入れている。
※コラムは執筆者の個人的見解であり、人事戦略研究所の公式見解を示すものではありません。
バックナンバー
- 70歳雇用義務化に向けて何をすべきか
- 2024年最低賃金引上げの動きと今後
- 2024年の初任給水準
- 2024年の中堅・中小企業の賃上げ動向 ~中小企業では賃上げに限界感!~
- 70歳までの雇用が義務化されるのは、いつごろか?
- 令和5年度(2023年度)最低賃金はついに全国加重平均で1000円超え
- 2023年の初任給平均の実態と今後
- 2023年の賃上げ動向 ~中小企業は二極化か?~
- 役職手当(役付手当)の相場と設計ポイント
- 中小企業が人事制度を導入する際の留意点
- 社員50名以下の中小企業が人事制度を作成する価値②
- 社員50名以下の中小企業が人事制度を作成する価値①
- 評価制度の改善に着手する前に②
- 評価制度の改善に着手する前に①
- オンライン会議活性化のポイント②