ホーム > ブログ > 人事ブログ > 「選択制」確定拠出年金という選択

関連ブログ
新着記事
カテゴリ
月別アーカイブ

「選択制」確定拠出年金という選択

2015年10月10日 カテゴリ:人事制度

執筆者:山口 俊一

人事戦略研究所 所長

人事コンサルティング、講演、執筆活動を中心に活躍している。職種別人事をベースにした独自の発想と企業の実状に沿った指導により全国からコンサルティング依頼を受け、定評を得ている。現在までに中小企業から一部上場企業まで、200社以上のコンサルティング実績を持つ。主なコンサルティングテーマは人事評価・賃金制度の構築、組織運営など。

「選択制」確定拠出年金をご存知でしょうか。

確定拠出年金は、月々の掛金を、あらかじめ設定された投資商品(貯金や投資信託)の中から、社員本人の判断で資産運用する年金制度です。その中でも、「選択制」確定拠出年金は、年金掛金として拠出するか、毎月の給与として受けとるかを、社員が選択できる制度です。

給与の一部を原資として掛金を捻出するケースが多く、会社が新たに資金負担することなく導入できるのが特徴です。もちろん、会社がこれに上乗せして、掛金を拠出することも可能です。

例えば、基本給のうち一定額を、「ライフプラン手当」のような名目で切り出して制度設計します。それを、社員各人が、給与として全額受取るか、一部または全額を年金掛金として拠出するかを選択するのです。

例)基本給20万円の社員 → 新基本給18万円+ライフプラン手当2万円
  基本給30万円の社員 → 新基本給28万円+ライフプラン手当2万円
                                       ↓
                       各人が、全額もしくは一部金額について、掛金拠出か給与受取りを選択

                

選択制確定拠出年金の最大のメリットは、掛金分が所得から控除されるため、所得税、住民税、社会保険料が軽減できることです。毎月2万円を掛金とした場合、年収500万円の社員で、年間6万円前後の軽減効果(手取り増)が見込めます。

会社側、社員側の主なメリットは、以下の通りです。

【会社側】
 主なメリット
  ●資金負担なしで、社員に対する年金制度が導入できる
  ●掛金に応じて、社会保険料の会社負担分が軽減される
 主なデメリット
  ●運用コストが発生する(社会保険料負担軽減とのプラスマイナス)
  ●運用の手間が増える(投資教育など)

【社員側】
 主なメリット
  ●掛金に応じて、所得税、住民税、社会保険料が軽減される
  ●運用益が非課税となる
 主なデメリット
  ●受取りが、原則60歳以降となる(貯金のように必要な時に使えない)
  ●社会保険料の軽減分、公的年金の額が減少する

2015年10月現在では、他の企業年金(確定給付年金など)がある会社:月27,500円、他の企業年金がない会社:月55,000円まで拠出可能です。ただし、「選択制」とはいえ、上限額目一杯に掛金設定しようとしても、給与水準の低い社員がいれば、都道府県ごとの最低賃金に抵触する恐れがあります。そのため、給与水準との見合いで、制度設計しなければなりません。

例)給与16.5万円の社員:16.5万円-5.5万円=11万円
  月間所定労働170時間:11万円÷170H=時給換算で647円
                                 ↓
                             最低賃金に抵触

また、本制度導入により、残業代の時間単価が減額されるようなことがあっては、社員にとって不利益変更となっていまいます。そのため、先ほどのケースであれば、「ライフプラン手当」も残業代の単価に入れておくなどの措置が必要となります。

このように、いくつかの留意点はあるものの、退職金水準の低い中小企業にとっては、非常に有効なしくみです。
是非一度、導入を検討されては、いかがでしょうか。

バックナンバー

※コラムは執筆者の個人的見解であり、人事戦略研究所の公式見解を示すものではありません。