コロナ5類引き下げで、人事部・総務部が検討すべきテレワークなどの企業対応

コロナ禍となって3年が経過し、政府は、2023年5月8日から、現在の「2類相当」から季節性インフルエンザなどと同じ「5類」に移行する方針を決定しました。コロナ感染症が5類に引き下げられると、企業としての対応は、どのように変わるのでしょうか。人事部や総務部が検討すべき事項に絞って、考えてみたいと思います。

 

1.テレワーク、在宅勤務

コロナ禍で一気に拡大したテレワーク。特に都心のオフィスワーカーは、出社する割合が減り、満員の通勤電車から解放される日が増えました。テレワークの実施については、今と大きく変わらないのではないでしょうか。一度、テレワーク環境に慣れてしまった社員にとっては、原則出社に戻すことに対する心理的抵抗感が強いからです。
パーソル総合研究所が行った「新型コロナウイルス対策によるテレワークへの影響に関する調査」(第7回:2022年7月調査)によれば、テレワーク実施者のテレワーク継続希望の意向は80.9%と、継続を希望する人が圧倒的に多いことがわかります。

 

新型コロナウイルス対策によるテレワークへの影響に関する調査

 

人材採用でも、テレワーク対応の有無は少なからず影響します。主要転職ナビサイトでは、「在宅勤務・リモートワーク可」は検索条件に入っており、応募者から質問の多い項目でもあるため、テレワークの継続を有利と考える企業も一定数あると考えられます。

 

一方で、テレワーク中心の勤務形態では、「新人など若手人材が育ちづらい」「人との交流が限定され、精神的にも悪影響が大きい」といった理由で、原則出社に戻している会社もあります。とあるクリエイティブ系企業の経営者は、「面と向かって行うディスカッションや雑談の中からこそ、創造できるものがある」と言い切られます。実際に、その会社の業績は、厳しさを増す同業他社を尻目に、コロナ以降の方が順調なのです。このあたりは、事業や組織によって、判断の分かれるところでしょう。

東京など都市部では、既にオフィス面積を大幅に縮小したため、物理的に出社人数を増やせないケースもあります。総合的に見て、現在業務が滞りなく回っている場合には、基本5類分類前と変わらない方針を採る会社が多いのではないでしょうか。
 

テレワークに付随する問題としては、時差出勤、在宅勤務手当、通勤手当があります。時差出勤については、”通勤時の混雑を避ける”という意味では取りやめて問題ないはずです。ただ、多くの社員にとって、この方が快適に勤務できるということであれば、継続する方針でもよいでしょう。

また出社抑制に伴い、在宅勤務手当・テレワーク手当を新設し、通勤手当を定期代から実費支給に切り替えた会社があります。こちらも、出社方針によりますが、原則出社となった会社は、コロナ前に戻すことになりそうです。一方、テレワーク中心の会社や部門は、ルール継続となるでしょう。

 

2.オフィス環境

オフィス環境については、どうでしょう。体温計や消毒液くらいは設置を継続したとしても、使用するかどうかは各人の判断に委ねることになるでしょうか。飛まつ対策のアクリル板は撤去の方向と考えられますが、捨てるわけにもいかず、結構な保管スペースを確保する必要があるかもしれません。

定期消毒を行っていたような会社は、医療機関や介護施設などを除いて、急速に縮小していきそうです。トイレのハンドドライヤーなどは、既に復活するケースが増えています。

接客を伴わない職場でのマスク着用は、各人判断となりそうですが、多くの職場ではマスクをつけたままの人が多いのではないでしょうか。第5類になったとしても、できればコロナにはかかりたくありません。着席時のマスク非着用が、増えるくらいでしょうか。

 

3.対外対応

営業訪問や来社方針に制限を設けていた会社では、撤廃されることになるでしょう。既に対外的には制限を解除されている会社も多いため、大きな変化はみられないものと考えられます。昨今ではWEB会議で済ませたいという傾向も強く、面談者双方の肌感覚次第でしょうか。

採用面接もオンラインが主流となりましたが、「最終面接くらいは対面で行いたい」といった企業側のニーズや、「入社前に会社を見ておきたい」という応募者側のニーズもあり、一度くらいの対面が落としどころでしょうか。新卒学生も、「会社訪問した際の雰囲気がよかったから」といった理由で、最終の内定承諾を決定するかもしれません。

 

4.会議、社内行事

社内会議、ミーティングについては、コロナ対策としては元に戻せばいいのですが、そうはならなさそうです。WEB会議の拡大もあり、「本社に出張しなくても業務が滞りなくできる」「一箇所に集まらなくても会議ができる」といった経験をしてしまった以上、元に戻す必要性が感じられません。交通費などのコスト、移動時間の節約は、会社にとっても、社員にとっても捨てがたいからです。

朝礼を行っていた会社も、工場や店舗、医療機関など、出社制限していない場所以外では、再開が難しそうです。忘年会や新年会、各種社内イベントは復活していきそうですが、これまで無視されがちであった「参加したくない層」の意見にも、耳を傾ける必要性は高まっています。強引に実施すると、社員からの思わぬ反発を招く可能性があります。再開する場合は、組織としての強いメッセージが必要となるかもしれません。

研修やセミナーは、会社としてはリアル開催が解禁となるでしょうが、オンライン開催の選択肢も増えたため、効果性との兼ね合いで判断することになると考えられます。

 

5.感染者発生時の対応

最後に、コロナ罹患時などの対応について。これまでは、コロナ罹患者が発生すると、社内にアナウンスしていたような会社も、取りやめていくことになりそうです。濃厚接触者の自宅待機要請もなくなるでしょう。ただし、インフルエンザでも、罹患者は自宅待機や休みをとるのが一般的ですので、同じような対応が想定されます。

コロナ発生時は、上司や人事総務部への報告を義務付けていた会社は、悩ましいところです。インフルエンザと同じであれば、人事総務部は罹患者の把握を止めてもよいように思われます。ただ、クラスタ発生などは避けたいので、報告義務ではなくても、報告の呼びかけくらいは残してもよさそうです。

また、コロナ発生時には特別休暇を与えている会社では、特別休暇としての扱いを取りやめることになるかもしれません。インフルエンザと同じ扱いをするのが妥当でしょう。ワクチン休暇なども同様です。インフルエンザ予防接種を業務時間中に許可している企業は継続、そのような制度がない会社は不要ということになるでしょうか。

 

 

以上、コロナ感染症が5類に分類された際の、人事部や総務部が検討すべき事項を挙げてみました。まとめると以下の観点で方針検討が必要になります。

 

区分 主な検討事項
テレワーク・在宅勤務 テレワークや在宅勤務体制/時差出勤体制/各種補助手当(通勤手当、在宅勤務手当)/オフィス面積
オフィス環境 社内マスク着用義務/感染対策措置(体温計、消毒液、ハンドドライヤー、アクリル板、定期消毒)/会議室・食堂等の施設利用制限措置
対外対応 営業訪問・来客制限措置/採用活動・面接方法
会議・社内行事 社内会議/出張/朝礼/慰安旅行/歓送迎会・忘新年会/研修・セミナー
感染者発生時の対応 報告義務/特別休暇(感染時・ワクチン接種)

 

こうしてみると、考えるべきことが多岐に亘っていることがわかります。5類に引き下げられたからといって、コロナが完全になくなるわけではないため、頭の痛い問題です。いつまた感染者が急増するかもしれません。周囲の様子を眺めつつ、対応策の検討だけでも、早めにはじめておかれる方がよさそうです。

執筆者

山口 俊一 
(代表取締役社長)

人事コンサルタントとして20年以上の経験をもち、多くの企業の人事・賃金制度改革を支援。
人事戦略研究所を立ち上げ、一部上場企業から中堅・中小企業に至るまで、あらゆる業種・業態の人事制度改革コンサルティングを手掛ける。

※コラムは執筆者の個人的見解であり、人事戦略研究所の公式見解を示すものではありません。

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