先進企業に学ぶ、男女賃金格差の開示・情報公開方法

2022年7月8日施行の女性活躍推進法に関する制度改正により、労働者が301人以上の事業主においては、「男女賃金の差異」の情報公表が義務化されることになりました。「施行後に最初に終了する事業年度の実績を、その次の事業年度の開始後おおむね3か月以内に公表」となっていますので、7月末決算の会社であれば、早くも2022年10月末が、公表期限の目安ということになります。
 
また、上場企業では今後、有価証券報告書において、男女間の賃金格差を開示することが義務付けされる見通しとなっています。
 
しかしながら、まだ実際に男女賃金格差データを公表している企業事例が少なく、どのように開示すればよいか、担当者を悩ませています。そこで、先進開示企業の事例を見ながら、自社での情報公表について考えてみることにしましょう。
 
株式会社資生堂では、自社のWEBサイト上で、男女活躍に関するさまざまなデータを詳細に開示しています。その中で、賃金水準に関するデータを抜き出すと、以下の通りです。(本ブログ執筆時点)

 


 

 
まず、役員は資生堂グループ全体、社員については国内資生堂グループのデータを「管理職」「総合職」「美容職」といった職種区分ごとに一覧化。更に、一覧表の下には、国内資生堂グループ 非管理職(総合職、特定職、生産技術職、美容職)ベース給与における比率が ☑ 男性100:女性85 であることが記載されています。職種ごとの人員構成も含めた、(管理職を除く)男女の賃金バランスとしては、後者の方が参考になるかもしれません。
 
 
次に、TOTO株式会社では、WEBサイト上で男女の賃金格差について、以下のように開示しています。
 

 
同社の女性正社員の平均賃金は、管理職に限定すれば男性正社員に比べて93%ですが、一般社員では88%となっています。加えて、賃金水準に男女差が生じている理由も述べられています。
 
 
一方、ホームセンター業界大手の株式会社コメリでは、有価証券報告書で以下のように、男女別の平均賃金を開示しています。

 

 

女性平均賃金が、男性比で80.8%である点について、平均勤続年数など男女差が発生している理由を示しています。
 
 
厚生労働省の資料によると、男女の賃金差異の公表について、
 

・「男女の賃金の差異」は、男性労働者の賃金の平均に対する女性労働者の賃金の平均を割合(パーセント)で示します。

・「全労働者」「正規雇用労働者」「非正規雇用労働者」の区分での公表が必要です。

 
となっています。
 
まず、正規労働者、非正規労働者ごとに男女の対象者を特定し、平均年間賃金(総賃金÷人員数)を求め、男性平均値に対する女性平均値の割合を示すということです。総賃金には、通勤手当や退職金を除く、給料、手当、賞与の全てとなっています。
 
計算自体は可能と思われますが、各企業の情報公開が本格化すると、業種特性などにより、さまざまな問題や混乱が発生してきそうです。先行する他社の開示事例に注目しながら、自社の開示方法や補足説明などを検討してください。

 

執筆者

山口 俊一 
(代表取締役社長)

人事コンサルタントとして20年以上の経験をもち、多くの企業の人事・賃金制度改革を支援。
人事戦略研究所を立ち上げ、一部上場企業から中堅・中小企業に至るまで、あらゆる業種・業態の人事制度改革コンサルティングを手掛ける。

※コラムは執筆者の個人的見解であり、人事戦略研究所の公式見解を示すものではありません。

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