新卒採用で、選考離脱を防ぐ方法とは?

2024年卒の新卒採用開始の時期が迫り、それに向けた準備をされている人事担当者の方が多いと思います。特に中小企業では一般に、大企業と比較して採用候補者の母集団形成が難しいという現状があることから、いかに応募者の選考離脱を最小限に抑えたうえで採用に繋げられるか、が採用成功のキーポイントになります。
 
ちなみに筆者も前職で採用関連の仕事を行っていました。ただし企業内の採用ではなく、エージェントとしての関わりがメインでしたが、その際に最も大変で苦労したのが「多くのコストをかけて獲得した候補者と選考途中で連絡が取れなくなってしまう」ことでの選考離脱でした。
このような経験は、皆様にもあるのではないでしょうか。実際、Indeed Japan 株式会社が実施した「採用担当者の業務実態に関する調査」(*1 ) の結果では、約75%の採用担当者の方が採用過程で応募者と連絡が取れなくなる「ゴースティング」を経験したことがあるとのデータが出ています。中小企業における採用において、このゴースティングによる選考離脱は致命的となるでしょう。
 
では、どうすればゴースティングによる選考離脱を防ぐことができるのでしょうか。それを防ぐためには「候補者との関係構築」が重要だと筆者は考えます。
前職の経験においても、候補者と関係が築けており、「将来こんな仕事はしたくない」「できれば休みが多くワークライフバランスが取れる会社で働きたい」など就活においてあまり発言しにくい内容(≠本音)を引き出せている状態であるほどゴースティングは少なくなっていました。
 
では実際、採用において候補者と関係性を構築するために必要なことはなんでしょうか。それは、候補者との頻繁なコミュニケーションだと考えます。
 
前職のエージェントの経験において、関係性が構築できていた候補者とは、選考途中で頻繁にやりとりを行っていたり、面談を複数回実施したりしていたからです。ある候補者は、初対面のときは私にそれほど良い印象を持っているようではありませんでしたが、就職の方向性が定まっていなかったために初回の面談で自己分析を行い、その結果の整理に時間をかけてやりとりと面談を繰り返すうちに関係が継続し、最終的に就職の決定まで付き合いを続けることができました。
 

採用担当者の立場においては、エージェントと比較して候補者1人あたりにかける時間が限られている場合も多いですが、候補者を限定して意図的にコミュニケーションの頻度を増やすという施策も有効です。
 
また、このコミュニケーションの頻度に関連して、「ザイオンス効果(単純接触効果)」というものがよく知られています。接触回数を多くすればするほど、その人は好感度を抱くようになりやすいというものです。この点が採用に際しての応募者との関係性向上にも当てはまるのであれば、ゴースティングによる選考離脱の防止に向けて、コミュニケーションの頻度こそ重要だといえます。
 
実際に採用過程において実践できる方法としては、連絡の手段やタイミングを工夫する・SNSを活用する・接触機会を意図的に増やすなどの方法があります。気軽にコミュニケーションが取れるよう、メールではなく企業用LINEアカウント(LINEOfficialやLINEWorksなど)を開設し、選考のやりとり以外にも会社情報も適宜発信することで接触頻度を増やすという方法があります。
あるいは、設定されている面接機会以外に、ランチ会や企業見学会を設けることでコミュニケーションの機会を確保するというものもあります。
内定を出した以降の取り組みとしては、内定者をグループ分けし、課題を設けるといった方法があります。人事担当者だけでなく内定者との接触機会も増えることにより、内定辞退率ダウンに大きな効果を発揮すると考えられます。
 
他にも「コミュニケーションの頻度を上げる」と一言で言っても多くのアプローチがありますので、まずは取り組みやすいものから実施してみてはいかがでしょうか。
 

(*1)2021年「採用担当者の業務実態」に関する調査を実施 – Indeed プレスルーム | 日本

執筆者

長尾 拓実 
(人事戦略研究所 コンサルタント)

前職では、中小企業を中心とした採用支援事業に約3年間従事。
企業・求職者双方と接する中で、働き甲斐ある職場の実現において社員一人一人が活きる組織づくりが重要だと実感。
この経験を通じて「組織づくりを基軸に中小企業の成長に貢献したい」と想い新経営サービスに入社。
課題に対して粘り強く、企業の良さが活きるコンサルティングを心掛け日々活動している。

※コラムは執筆者の個人的見解であり、人事戦略研究所の公式見解を示すものではありません。

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