目標管理 第15回 業務は目標ではない

今回は目標を設定する場面で、目標内容のレベル向上あるいは適切な目標なのか、という点がなかなか改善されないケースの一つです。
第6回『目標の具体的なイメージ』で、「業務そのものではなく業務を通して成し遂げることをイメージ」する、と言及しましたが、もう少し詳しく見てみましょう。
 
実際に書かれた目標管理シートを拝見しますと、目標あるいは具体的なアクションプランに業務そのものを書くケースが非常に多いです。初めて書く場合では、多くの方がそのような状態、制度導入して長い時間が経っていてもやはり、その割合は非常に高く5割以上は確実にある、という感覚です。
 
初めて行う未経験の業務であれば、チャレンジしている状態なので確かに業務そのものが目標といえるでしょう。しかし、それ以外では、やはり業務を通して何を成し遂げるのか、その業務の難易度の高い達成水準は何か、ということがなければ目標とはなり得ません。
時間が経てば終わるものは、目標とはならず、単なるToDoリスト、つまり比較的重要な業務一覧を記載しているにすぎません。
 
例えば、経理部門でよく見られるのが、「決算を期日までに行う」等の決算や税務に関わることです。この場合、これ自体は業務(仕事)としてやらなければならないことであり、目標でもなんでもありません。前述しました通り、初めて行う状態であれば問題ないでしょうが、そうでない場合は、昨年よりも5営業日早く、というようなことがあって「まともな」目標といえるでしょう。このとき、5日縮めようとすると伝票の流れを抜本的に変えたり、ITシステムの変更、あるいは顧客との関係まで踏み込む必要があったりします。そうしたことに「チャレンジする」ことが目標となるのではないでしょうか。
 
ぜひご自身、あるいは部下の目標を見たときにToDoリストになっていないか、チェックしてみてください。

執筆者

佐藤 耕一 
(人事戦略研究所 パートナーコンサルタント)

鉄道会社にて信号通信設備及びITシステムの設計業務を担当し、その後、教育事業会社で管理本部長として学習塾の運営と教育機関向け経営コンサルティング業務に携わる。前職では、電子部品メーカー系列のコンサルティングファームにて人事コンサルティング業務に携わるとともに、部長として同事業部門を率いる。国内外にて、中小企業から一部上場の大企業まで様々な規模を対象にし、あらゆる業種業態への人事諸制度の導入・運用実績がある。経営統合や分社化、経営破綻後人事、新設労働組合対応、海外法人、医療、介護、特殊法人など、豊富な事例と経験があり、特に運用に強みを持つ。

※コラムは執筆者の個人的見解であり、人事戦略研究所の公式見解を示すものではありません。

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