日本は格差社会ではなく、貧困化へ向かっている

ここ数年、格差社会に関する批判が、テレビや雑誌で活発になっています。その多くは、成果主義や規制緩和によって所得格差が拡大し、貧困層が増えていることはケシカランといった内容です。更に、リーマンショック後の不況による「派遣切り」や「ワーキングプア」のクローズアップが、このムードに拍車をかけてきました。
しかしながら、本当に格差社会は拡大しているのでしょうか。
 
国税庁の「民間企業の実態調査」によると、1999年と2009年の10年間で、約460万円から400万円強にまで、ほぼ一貫して平均年収が減少しているというのです。こんな国は、世界じゅうで日本くらいしかありません。中国やインドといった新興国はもちろん、アメリカやヨーロッパといった先進諸国ですら、この間の平均賃金は上昇しています。日本人=お金持ち、というイメージは、はるか昔の出来事となったのです。
 
【格差社会ではなく、実は貧困化社会】
 
同じ調査の「給与階層別人数の変化」では、先ほどと同じ10年間で、日本人の給与水準別の人数がどのように推移したかを示しています。
年収2000万円超の超高所得者層こそ若干増えていますが、それも人数にすれば微々たるものです。一方で、年収400万円超から1500万円超まで、中所得者層から高所得者層が軒並み減少してしまいました。それに変わって、年収300万円以下の低所得者層が、急激に増えているのです。
 
これらの現象の一番大きな原因は、パートタイマーや派遣労働者など非正規社員比率の増加です。正社員で働いていた人が、リストラなどで退職し、非正規社員となって収入が減少する。新卒で正社員として就職できなくてフリーターとなり、その後いつまでたっても正社員になれない。労働者全体に占める非正規社員の割合は、一貫して増えています。
 
また正社員の給与水準自体も、ボーナスカットや残業抑制などで、全く伸びていません。
 
日本では、所得格差が拡大したというより、全体的に年々貧乏になっているという表現の方が正しいと言えるでしょう。

執筆者

山口 俊一 
(代表取締役社長)

人事コンサルタントとして20年以上の経験をもち、多くの企業の人事・賃金制度改革を支援。
人事戦略研究所を立ち上げ、一部上場企業から中堅・中小企業に至るまで、あらゆる業種・業態の人事制度改革コンサルティングを手掛ける。

※コラムは執筆者の個人的見解であり、人事戦略研究所の公式見解を示すものではありません。

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