選考辞退 をされないために必要な2つのポイントとは?

「採用したい人材に選考辞退(内定辞退)されてしまう」といった悩みを抱える企業は多いのではないでしょうか。

近年の採用市場(特に新卒)では、複数の企業から内定を得ることが当たり前になっています。つまり、他社より魅力であることが伝わらなければ自社に入社してもらえない可能性が高いということです。

 

もちろん採用において「自社で活躍し、定着する人材を見極めること」は重要です。しかし、近年の採用市況においては「いかに自社に関心を持ち、入社したいという意欲をもってもらえるかという働きかけ(=動機づけ)」も欠かせない要素であるといえます。

本稿では、採用面接時にできる動機づけのポイントをご紹介します。

※動機づけには、テレビCMや市場動向、口コミサイト、周囲の評価など、企業が直接コントロールしにくい要素も含まれます。本稿ではそうした要素を除き、「採用面接時」に絞ってご紹介します。

 

ポイント① 求職者のニーズを把握する

まず重要なのは、「求職者が企業に何を求めているのか」を正確に把握することです。

このとき留意すべきは、関心の対象や価値観は人それぞれ異なるという点です。すべての求職者に画一的なアプローチをしても、効果的な動機づけにはつながりません。

そこで、求職者のニーズを把握するために2つのフレームワークを紹介します。

※求職者のニーズを把握する方法は様々ありますが、あくまで一例です。

 

A:採用版4P

人が組織に共感する要素は4つに区分される、と心理学や組織行動論などで整理されています。それが「Philosophy=理念」「profession=仕事・事業」「people=人」「privilege=特権」です。さらにこれらを具体化すると、8つの要素に分類されます

 

(採用版4P )                (8つの要素)

Philosophy = 理念

(その組織が掲げている理念や思想)

理念・ビジョン
戦略・目標
Profession = 仕事・事業

(その組織が行っている事業)

事業・商品・サービス
仕事・ミッション
People = 人

(その組織に属している人)

風土・慣行
人材・人間関係
Privilege = 特権

(その組織に関わることで得られる特権)

施設・職場環境
制度・待遇・ブランド

 

これらを把握するためには、「採用活動の軸」「志望動機」「今後のキャリアイメージ」など、未来志向の質問を行い、その回答を深堀りすることが有効です。

 

B:ヒューマン・シックス・ニーズ

ヒューマン・シックス・ニーズとは米国コーチのアンソニー・ロビンズが提唱した「人が根源的に求める6つの欲求」のことです。

具体的には下記6つに分けられ、人によって優先度や重みづけが異なります。

 

1.確実性 不安を減らし、安定感や予測可能性を持ちたいというニーズ
2.変化・多様性 日常の反復作業を嫌い、新鮮さや刺激を求めるニーズ
3.成長 自己向上やスキルの向上を追求したいニーズ
4.貢献 他者への奉仕や貢献を通じて満足感を得るニーズ
5.愛・繋がり 他者との関係や会話を通じて愛情や所属を求めるニーズ
6.自己重要感 自分が認められ、大切にされていると感じたいニーズ

 

これらを把握するためには「これまでやりがいに感じた活動/仕事」「モチベーションが上がる瞬間」「失敗/成功した時の自身の感情」など、過去を掘り下げ、さらにその際の感情を引き出すことが有効です。

 

<仮説設定の例>

  • 目標に向けて継続的に努力しているエピソードが多い → 成長のニーズが高い
  • 人間関係を大切にしている → 愛・繋がりのニーズが高い
  • ボランティアの活動実績がある、縁の下の力持ちとされる役回りであることが多い → 貢献のニーズが高い  等

 

採用版4Pは“組織に共感する軸”を、ヒューマン・シックス・ニーズは“個人の根源的欲求”を捉える視点となります。このようなフレームを意識し「目の前の求職者はどの要素に強く共感しそうか」という観点で接することで、より精度の高いニーズの把握が可能になります。

 

ポイント② 求職者の価値観やニーズに応じた自社の魅力を伝える

求職者の価値観やニーズを把握したあとは、それに応じた自社の魅力を伝えることが重要です。

上記で示した「A:採用版4P」「B:ヒューマン・シックス・ニーズ」における魅力の洗い出しイメージをご紹介します。

 

A:採用版4P

 

(採用版4P)            (伝える魅力の例)

Philosophy = 理念 ・ 経営理念が社内に浸透している

・人を大切にする社長の想いが強く出ており、
 それが企業経営や人材育成に現れている

Profession = 仕事・事業 ・関東トップクラスの規模を誇る

・生活に欠かせない「食」を支える仕事ができる

・若いうちから裁量をもって顧客と関われる

People = 人 ・タテヨコの繋がりが強い

・風通しの良い職場である

・その結果、定着率が高い

Privilege = 特権 ・研修制度や福利厚生制度が充実している

・オフィスや職場環境がキレイで働きやすい

・有給取得に関する取り組みを積極的に実施している

 

B:ヒューマン・シックス・ニーズ

 

(ニーズ)            (伝える魅力の例)

1.確実性 会社業績が今後も安定する見込みであること・転勤がないこと 等
2.変化・多様性 入社○年後に海外転勤がある・定期的なローテーションがある 等
3.成長 若いうちから裁量をもって働ける・研修制度が充実している 等
4.貢献 自身の仕事が社会に大きな影響を与える・感謝される 等
5.愛・繋がり チームで仕事を進めることが多い 等
6.自己重要感 表彰制度がある・キャリアステップが明確 等

 

ポイントは、ただ要素を伝えるだけではなく、求職者がイメージしやすいようにエピソードを交えて話すということです。

例えば「3.成長」の場合、「どんな仕事でどのような裁量を与えられたのか?」「その経験を経てどう成長したのか?」など、具体的な事例を交えて伝えると効果的です。

 

このように、求職者の価値観やニーズに沿った情報を提供することで、「自分の希望がこの会社で実現できそうだ」という安心感と納得感を醸成することができます。ぜひ、選考辞退の防止や動機づけの強化に役立てていただければと思います。

 

本稿では「動機づけ」に焦点を当て、そのポイントをご紹介しました。

採用活動の一助となれば幸いです。

 

※コラムは執筆者の個人的見解であり、人事戦略研究所の公式見解を示すものではありません。

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