IT・ソフトウェア業 人事制度の構築ポイント
-もくじ-
1. IT・ソフトウェア業の人事制度を構築するにあたって
IT・ソフトウェア市場は今後も潜在的には拡大傾向にあります。
しかし、リーマンショックを境にした企業の投資意欲減退により、IT業界は厳しい状況に陥っています。それは、昨今の不況の影響のみならず、中国やインドIT企業急激な伸び、大手企業による業務の再々委託の禁止なども一因として考えられます。
今後、厳しい競争を勝ち抜くためにIT・ソフトウェア開発企業では、経営体質の強化、顧客ニーズをいち早く捉え、ニーズにあった提案を行い受注につなげる体制・人材の整備、特定分野への特化等の差別化が必要になります。
また、一方で携帯ゲームやネット通販市場の拡大により、インターネット関連の中には急成長する企業も目立ち始めました。このような成長企業では、優秀な技術者人材の採用・定着率向上や早期スキルアップが重要経営課題となっています。
2.構築のポイント
賃金水準は労働市場に合わせ、20代の立ち上がりを早くする
SEなどIT技術者の職種特性として、企業規模による賃金格差が小さいことが挙げられます。すなわち、中小IT企業であっても、転職市場を意識した賃金水準の設定が求められ、人件費が高くなる構造をかかえています。
また、IT技術者が転職を考える際、30歳前後が「売り時」となるため、20代における立ち上がりの賃金水準を高めに設定しておく必要があります。ただし、30歳以降は、
- プロジェクトリーダーなどマネジメントができる人材
- 高度な専門性を身につけ、スペシャリストとして活躍できる人材
- スキルアップが頭打ちとなり、生産性が伸びなくなる人材
に分かれていくため、マネジメント人材、スペシャリスト人材の処遇を引き上げる一方、生産性の伸びない人材の処遇は抑えていく賃金制度が求められるでしょう。
社員規模別・システムエンジニア(男子)
年収グラフ

厚生労働省『 賃金構造基本統計調査 』
システム・エンジニア(男)より
生産性とスキルアップにつなげる人事評価を実施する
IT技術者は、自らのスキルアップや担当業務に対する意識は比較的高いものの、仕事の生産性やコストなどの成果・業績面を軽視しがちです。
そこで、職種別の役割等級基準や人事評価基準を整備することで、社員の生産性やスキルアップにつなげることが重要です。たとえば成果評価については、チーム業績に加え、生産性指標(担当付加価値高、工数計画達成率、コスト予算達成率)の導入を検討します。
また、プロジェクトテーマごとの達成度評価として、納期、品質、仕様書、テーマの新規性・難易度、リピート受注など、自社が重要視する観点を設けることも有効です。
一方、プロセス・スキル評価については、自社が求める重点知識や技能、対応力を評価要素とすることで、期待する人材像への成長を促します。
プロジェクトリーダー職用 プロセス評価項目例
評価項目 | 定義 |
---|---|
ユーザーニーズへの意識 | ユーザーニーズの製品取込み |
開発テーマの提案 | 業績を意識した開発テーマ提案 |
進捗管理 | 適切な計画づくりと納期への強い意識と対処 |
プレゼンテーション力 | 顧客にわかりやすい説明を心掛けているか |
メンバー指導 | 能力に応じた支援・指導 |
情報共有化・提供 | 積極的かつ有益な開発情報報告 |
クレーム対応 | 的確な対応とニーズ発掘 |
営業・販促支援 | 技術講習、販促支援物作成 |
競合製品研究 | 技術的解析、比較データ整理 |
顧客対応 | 好感のもてる顧客対応 |
責任感 | 担当職務をやりぬく意思 |
社内連絡・報告 | 上司・同僚との報・連・相 |
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