病院・クリニック 人事制度の構築ポイント
-もくじ-
1.病院・クリニックの人事制度を構築するにあたって
多くの医療現場では、身心ストレスや仕事への達成感の不足などから、職務への意欲低下や離職率の高さが問題となっています。結果として人員不足などによるサービスの低下や看護基準を満たさない状況を招き、病院の評判を落すことになり兼ねません。
達成感や使命感が感じられる評価・処遇制度の実現、院内協力体制の構築や、”働きがいのある職場づくり”をいかに具現化できるか、かが肝要です。
2.構築のポイント
クリニカルラダーの設定
目指す人材像をもとにクリニカルラダーを設定し、これとキャリアパスをイメージした職務要件を一致させ、評価にも使用すると良いでしょう。
キャリアパスイメージ
職務要件の作成
クリニカルラダーは人材育成としても活用しますが、これを職務要件として人事評価に活用し、これらを一体運用することで、各人のレベルアップを目指すしくみとします。
職務要件イメージ
等級 | 共通項目 | 技師 | 看護 |
---|---|---|---|
6 | ・・・ | ||
5 |
|
||
4 | ・・・ | ・・・ | ・・・ |
3 | ・・・ | ・・・ | ・・・ |
2 | ・・・ |
|
・・・ |
1 | ・・・ | ・・・ | ・・・ |
期待成果・期待行動を表現した評価表
評価表は、「職種・職務レベル」ごとの期待成果、期待行動が分かりやすく表現することがポイントです。
評価基準の抽出においては、以下から検討すると良いでしょう。
①役割基準 ・・・職務要件を使用
②行動基準 ・・・等級レベルにおいて、普遍的に必要な価値観
③貢献基準 ・・・業務の質や量(一部は業績数値などを使用)
また、職位に応じて評価のウェイト配分を工夫することで、職位ごとに重要な業務・重要な指標を社員に意識づけすることができます。
医師の評価項目例:量的指標
量 的 指 標 (例) |
項目例 | 算定指標 |
---|---|---|
医療・ADL区分 | 特定期間内に医療・ADL区分2・3以上の患者割合。 | |
平均在院日数 | 特定期間内に入院担当患者の総在院日数を該当入院患者数で序した日数。 | |
検査点数 | 特定期間内に画像・検査等を実施いた点数。 | |
救急受入患者件数 | 特定期間内に時間内・時間外の救急患者受入件数。 | |
・・・ | ・・・ | |
紹介患者受入件数 | 特定期間内に他病院等から紹介を受け入れた延べ患者数。 |
評価ウェイト配分例
病院が職員に求める基本姿勢や行動指針、人事理念などを評価項目として組み込むことで、病院の方針に対する理解を促し、個人の行動をその方向へと導くためのツールとしても活用できます。
理念を評価表に落とし込んだ評価項目のイメージ
項目 | 着眼点 |
---|---|
・ ・ ・ |
患者様・ご利用者様中心と医療介護者中心(良心的自己満足)の医療・介護の違いを理解し実践しているか |
患者様・ご利用者様の社会・家庭環境を理解・把握しているか | |
・・・ | |
患者様・ご利用者様からの要望や苦情を速やかに上司へ報告・相談しているか | |
・ ・ ・ |
院内行事に積極的に参加しているか |
部門内で開催される会議で積極的に発言しているか | |
・・・ | |
多職種で開催されるカンファレンスや回診に積極的に参加しているか |
職員・医師ごとの給与体系
賃金制度は、「求める貢献」と「配分」の関係が職員や医師にとってクリアになり、やる気に繋がるような体系にすることが大切です。
職員向けの給与体系については、優秀な職員” あるいは “努力した職員”には十分な還元できるよう、評価結果を処遇に反映できるように設計します。賞与は基本給連動式またはポイント式を基本として検討します。「等級・資格(職種)・評価・役職の4つの視点」と評価との連動具合によっては、メリハリをつけた仕組みに変更することも可能です。
職員の給与制度例
医師向けの給与体系については、年俸制も視野に含まれます。年俸は、固定部分と変動部分の二本立てで構成し、固定部分は、職務レベルに応じて一定額を、変動部分は、職位・責任範囲や経営業績に応じて変化するしくみによって、成果責任の意識づけにつながります。
これに業績貢献に関する評価を追加する賞与に近い業績年俸を取り入れることもあります。
医師の年俸制度例
年 俸 の 考 え 方 |
a.固定部分 | b.変動部分 | ||
---|---|---|---|---|
固定的な基礎給与 | 職位や責任範囲によるランク (上下変動あり) |
半期もしくは通期の業績貢献に対する 変動賞与型の有無 |
宿直など | |
職務レベル年俸 | 責任年俸 | ― | 諸手当 | |
業績年俸 |
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