旅館・ホテル 人事制度の構築ポイント

-もくじ-

  1. 旅館・ホテル業の人事制度を構築するにあたって
  2. 構築のポイント

1. 旅館・ホテル業の人事制度を構築するにあたって

 様々なところで、「消費者が旅館・ホテル選びで重視すること」といったアンケートが実施されています。
 上位には「料金」「設備の充実度」「客室の広さ」といった項目が並びますが、これらを充実させるためには多額の費用が必要となり、その割りに思った程の”費用対効果”が得られないといった現実があります。
 それであれば、同じく上位に並ぶ「サービス・接客」「雰囲気」「食事」といった項目に力を入れる方が現実的です。

 そして、これらを強化するには、”ヒト”に対する投資が必要になります。従業員満足(ES)を向上し、従業員の能力を強化し、それにより顧客満足(CS)をアップさせる施策は、費用対効果も高く、また競合他社が真似できない”競争優位”を保有することにつながります。

2.構築のポイント

職種(部門)別とする

 ホスピタリティが求められるフロント職、集客力が求められる営業職、技術が求められる調理職など、旅館・ホテルは様々な職種特性をもった従業員の集まりです。

 求める職務(資格等級基準)やその評価(人事評価)は当然として、必要であれば賃金についても、職種別に考える必要があります。また、旅館とホテルによる違い、あるいは同じホテルでもシティホテルなのかビジネスホテルなのかの違いといったこともありますので、柔軟な発想が求められます。

 評価項目は、全社一律にはせず、できる限り「職種毎に必要な役割・能力」を洗い出し、人事評価表を作成すると良いでしょう。

職種別の評価基準

フロント職営業職調理職
マナー(挨拶、身だしなみ…)顧客・取引先管理調理・食材知識
語学力企画力探究心
クレーム・トラブル対応力新規開拓の実績安全・衛生への意識

 また、社風や必要性を十分に考慮した上で、可能であれば職種別の賃金も検討します。

職種別の給与体系

職種給与例
フロント職等級と号俸によるオーソドックスな「テーブル方式」による基本給設計→人事の書式・シート
営業職基本給(固定給)を押さえ、成果連動のインセンティブを重視した設計
調理職等級(職位)レベルを基本とした「洗い替え方式」→人事の書式・シート
非正規社員(アルバイトや契約社員)向けに人事制度を設ける

 現場の第一線には、パート・アルバイトや契約社員が多く働いています。非正規社員は、雇用形態が正社員と異なるだけで、求められる仕事の多くは正社員と変わりません。それであれば、非正規社員にも評価・処遇制度を設けておき、レベルアップと必要な処遇を行うべきだと考えられます。

 もし、パート・アルバイト社員を「手軽な労働力」と考える社風があれば、それを正すことから始めます。企業によっては、「パートナー」や「クルー」等、呼称の変更により意識改革を行う企業もあります。

 まずは、ランクを設定し、仕事内容とレベルを明確にするところから始めます。社員でいう「資格等級制度」です。 弊社の策定事例では、3ランク程度(非常に優秀・優秀・一般的)になることが多いですが、企業の状況により異なりますので、「会社目線ではなく、パート・アルバイトから見て、その差が認識できる」ということに留意して決定して下さい。

非正規社員(アルバイトや契約社員)向けの
ランク(例)

ランク職務基準
エキスパート <ルーティン以外の判断業務も担当できる>
  • 正社員不在時でも、担当部門を一通り任せられる
  • 発注が一人でできる
  • 新人パートへの仕事の指示ができる
・・・・・
ミドル <ルーティンを高いレベルで遂行する>
  • イレギュラー以外は、担当を一通り任せられる
  • クレーム内容を正確に社員に伝えることができる
  • マニュアルに沿って、新人の教育ができる
・・・・・
ジュニア <ルーティンを正確に遂行する>
  • クレーム以外の顧客対応ができる
  • 日常業務は、マニュアルを見ずに作業ができる
  • 積極的に掃除を行い、店を美しく保っている
・・・・・

 時給の決定ルールを整理すると良いでしょう。一口に時給といっても、それを構成する要素として、次のようなものが考えられます。

 時給 = 職種給+職務給+職位給+資格給+地域給

【 職種給 】 職種の”不人気度”や”難易度”により「ベース時給」を設定
【 職務給 】 上記ランク(エキスパート・ミドル・ジュニア)により設定
【 職位給 】 リーダーとなる者には、役割給として+αを支給
【 資格給 】 有資格者に+αを支給
【 地域給 】 勤務地ごとの採用の難しさを考慮して設定

複雑な決定方式は避け、”分かり易さ”を重視するのが基本です。
※上記は、「会社が何に対して時給を支払うか」の参考例として、複数の要素を示しています。

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