リモートワーク「中心」の社員に対する人事評価の考え方

■一部に「出社回帰傾向」も、まだまだ主流のリモートワーク

最近では一部にオフィス出社スタイルへ回帰する傾向もみられますが、リモートワーク自体が無くなることは当面ないでしょう。それどころか、最近では人手不足への対応策から、最初から完全リモートワーク(出社ゼロ)で正社員採用する例なども聞かれるようになりました。コロナ時代にほぼ1年を通じてリモートワークで仕事をする経験を多くの企業が経験していますから、業種によっては完全にリモートワークだけで仕事が成り立つという状態も今では十分に理解できます。リモートワークを望む社員自体は非常に多いことから、企業では今後も有効にリモートワークを活用していくことが求められます。
 
■リモートワークと人事評価
 ~「部分的」なリモートワークと、リモートワーク「中心」の違い~

リモートワークの社員が増えてくることで課題となる人事管理上のテーマ、その一つに社員の人事評価が挙げられます。評価者が被評価者の仕事ぶりを十分に観察する機会が物理的に得られないため、客観的な人事評価が難しいと言われています。
最近ではオフィスに出社する機会が以前より増えていることから、リモートワークをしている期間のことをそこまで厳密に評価しなくていいじゃないか、といった企業の声もあります。もちろん、リモートワークが全体のうちの「一部分」であれば、そうした意見も分かるところではあるのですが、リモートワーク中心の社員の場合についてはどうでしょうか。前述と同じような理屈で、ざっくりと評価をするというわけにもいかないでしょう。今後、そうした社員が増えてくることも想定した上で、リモートワークの社員をどのように適切に評価するか、その考え方と手法は各企業で整理しておくべきであると考えられます。
 
■「定量評価」寄りの評価基準を軸としつつ、業務モニタリング等を評価に活用する

リモートワーク中心の社員に与える仕事というのは、どちらかというと定型業務で責任もそれほどあるわけではないから、あまり細かい評価はいらない、よほど問題が無ければ標準評価でいいのではないか、という意見も聞かれます。その意見自体に大反対はしませんが、将来的にそうした社員が増えてくることも想定すると、キャリア開発をどうしてくかということも大切になるわけですから、もう少し丁寧に評価をすることを考えていくこともするべきでしょう。
リモートワークが中心になり、同じ場所で「日々の頑張りを観察し」「問題が起きればその場で指導する」頻度が減っていくのであれば、評価基準を「定量評価」「結果評価」寄りに変えていくことが求められます。必然的に仕事を1個1個の作業レベルよりも大きな「かたまり」で捉えたり、一定期間で出してもらいたい「仕事の成果」を予め明確にした上で部下と共有しておくことが重要になります。
ただ、結果だけ評価していればよいということでは部下とのコミュニケーション不足の問題は解決しません。そこで、「1on1ミーティング」と「定期業務モニタリング」の有効活用が求められます。1on1については最近では広く知られるようになっており、リモートツールによる面談も比較的容易に行えるため、ここでは省略します。
もう一つの「定期業務モニタリング」について、これは文字通りリアルタイムでの仕事状況をリモート越しに行うというものです。全ての業務で実施できるわけではありませんが、例えばPC上で行う作業であれば、「画面共有」機能を活用することで、リアルタイムでモニタリングをすること自体は可能です。
見られながらの作業ということになるので、慣れていない部下にとっては業務効率が落ちることは承知の上で、1つ1つの作業について、どういう意図で行っているかも含めて説明をしながら作業してもらうことで、評価をする側も気づいたところはその都度部下に聞くことができます。部下側に良い意味での緊張感をもってもらいながら、評価をする側も集中して仕事ぶりの観察をする機会にしないといけないため、むしろ評価者側にスキルが求められます。モニタリング自体は月に1回、1回あたり30分程度でも十分に効果があるでしょう。 評価をする側も慣れていないことが多いと思われるため、社内では予め評価者研修を工夫して実施することも重要になるでしょう。

※コラムは執筆者の個人的見解であり、人事戦略研究所の公式見解を示すものではありません。

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