評価者・考課者側のモチベーションを高める必要性
人事考課(人事評価)
人事評価・人事考課のモチベーションを高める必要性
これは、人事担当者であれば、常に考えているテーマでしょう。しかしながら、ここに「誰の」満足度や納得性を高めるかという主体を入れると、おそらく「被評価者すなわち評価される側の社員」が念頭にあるのではないでしょうか。
もちろん、評価される側の意欲を高めることは重要ですが、今回は「評価者すなわち評価する側」のモチベーションを高めることの必要性について、考えてみたいと思います。
評価者が評価実施に意欲的になれない原因
評価者側の意欲が低いと、評価の質が低下し、結果として被評価者のモチベーションにも悪影響を及ぼす可能性があるからです。「評価時期が憂鬱だ」「できれば部下への評価フィードバック面談をやりたくない」と感じている管理者は、意外と多いものです。
では、なぜ評価に対してネガティブな印象をもっているのでしょうか? たとえば、次のような原因が考えられます。
・評価実施の手間がわずらわしい
・適切な評価ができているか不安だ
・部下の評価に差をつけたいが、低評価者の反発も避けたい
・二次評価者や人事総務で調整された最終結果に納得できない
・評価結果を本人に対して効果的に伝えるのが難しい
つなぎ合わせてみると、「忙しい時期に評価作業が求められ、苦労して評価をつけたのに、調整後の評価は変わっていて、それを部下に伝達したら反発された」といった感じでしょうか。これでは、評価実施の時期が憂鬱になるのも仕方ありません。
評価者のモチベーションを高める対策
人事評価・人事考課を実施する側である評価者・考課者のモチベーションを上げることは、公正で効果的な評価システムを維持する上で非常に重要です。
対策としては、先ほど挙げたような原因をつぶしていけばよいということになります。
対策①:評価作業の軽減
評価作業の軽減を図るには、評価表などの改善、評価システムの改善などが考えられます。
評価表については、必要以上に文章記入の箇所が多いとか、評価基準がわかりづらいといった問題があれば、改定を検討すべきでしょう。また、紙やワード・エクセルで実施しているなら、評価システム(クラウドサービスなど)の導入により、評価作業の簡素化だけでなく、その後の集計や分析作業も軽減が見込めます。
対策②:評価者としてのスキル・意識アップ
評価者が自らの評価スキルや面談スキルに自信がないということであれば、評価者研修や面談者トレーニングにより、スキルアップを図ることが考えられます。この際、「評価とは」「目標とは」といった一方通行のレクチャーを聞くだけでなく、評価実施のグループワークや面談ロープレを採り入れると効果的です。「他の管理者はどのように評価し、フィードバック面談を行っているのか」を知り、同じような悩みを共有することで、評価に対して前向きな意識を醸成し、自信を持つことができるかもしれません。
対策③:評価結果に対する納得性向上
最後に、自らがつけた評価と最終評価結果が異なることに対する対策です。具体的には、最終評価が決まった理由などについて、評価者に伝えるしくみなどが考えられます。「一次評価者としての貴方はA評価をつけたけど、こういう理由でB評価に決定した」といった説明を行うしくみです。
あるいは、最終評価の決定に参画してもらうことも考えられます。たとえば、部門ごとに評価の総枠を定める「持ち点方式」であれば、各部門は「持ち点」の範囲内で評価点数や評価ランクを調整することになります。その際、部門長だけで決めるのではなく、一次評価者や二次評価者も参加し、評価結果の決定に加わってもらうのです。こうすることで、なぜこの最終評価になったのか、といった疑問は解消されます。
以上、今回は評価者・考課者側のモチベーションを高める必要性と対策について、考えてみました。評価者・考課者の意欲をたかめることで、被評価者・被考課者の評価への意欲や納得感が高まることにもつながるのです。
執筆者
山口 俊一
(代表取締役社長)
人事コンサルタントとして20年以上の経験をもち、多くの企業の人事・賃金制度改革を支援。
人事戦略研究所を立ち上げ、一部上場企業から中堅・中小企業に至るまで、あらゆる業種・業態の人事制度改革コンサルティングを手掛ける。
※コラムは執筆者の個人的見解であり、人事戦略研究所の公式見解を示すものではありません。
バックナンバー
- リスキリングで人材流出の危険?
- 若手重視のベースアップ・賃上げを行う方法(ベースアップ・シミュレーションつき)
- 会計事務所、法律事務所など、士業の人事給与制度について
- 「年収の壁」と家族手当の子ども手当化
- 男女賃金格差は、開示のあった上場企業で約3割。その原因と今後の見通し
- 選択型・時短勤務制度とは ~多様な育児環境への対応~
- コロナ5類引き下げで、人事部・総務部が検討すべきテレワークなどの企業対応
- キーエンスに学ぶ平均年収の引き上げ方
- 先進企業に学ぶ、男女賃金格差の開示・情報公開方法
- 人事部門にエース級人材を配置するメリット
- 上場企業で、役員報酬の明確化が進む
- 70歳雇用義務化? 定年再雇用者にこそ、目標管理を。
- 正社員以外にも、家族手当、賞与、退職金が必要に?
- 「転職クチコミサイト」で、自社の評判をチェック
- 働き方改革関連法案が可決