サムスンを再逆転する方法

世界不況が尾をひく中、いち早く業績の急回復を果たした韓国・サムスン電子。利益額でも株式時価総額でも、日本電機業界のトップ企業が束になっても追いつけないほどの実力差がついてしまいました。
 
日本国内においては、家電量販店に行っても、サムスン製品を見つけるのに苦労するくらいですので、まだ実感はありません。ところが、一歩海外に出ると分かります。アジア、中東、ヨーロッパと、看板広告も家電ショップも、一番目立つ場所にサムスン製品が展示されています。
 
サムスンの人事政策の特徴を挙げると、以下のようなものです。
 
①語学、海外経験を積ませる、グローバル人材の養成
②最優秀人材層の採用と、必要人材のヘッドハンティング
③徹底した実力主義の人材登用と、成果主義の処遇制度
 
もともと多くの韓国企業では、労働組合が強いこともあり、日本に近い人事・給与制度でした。ところが、1997年の経済危機に対して韓国にIMFが介入し、財閥解体を断行するなど、大幅な経済改革が行われました。価値観の大転換が起こったわけです。 これを機に、その後10年あまりで大躍進を遂げた代表的企業がサムスンです。この10年で、日本企業との立場が逆転してしまったのです。
 
では、日本企業は、どうすればよいのでしょうか。10年で追い抜かれたのですから、次の10年で抜き返すことも不可能ではないでしょう。
 
事業戦略を素人の私が論じることはできませんが、人事の観点からは、『優秀人材の確保、定着』に尽きると思います。韓国では、サムスンやLG電子など一部のトップ企業に、学生の就職人気が集中します。自ずと、韓国国内の最優秀人材群が集まることになります。
 
一方、日本では、電機業界だけでも、パナソニック、ソニー、日立、東芝、NEC、富士通、シャープ、三菱電機、キャノンなど、有力企業がひしめき、その分、人材が分散することになります。アメリカは有力企業数も多いですが、例えばグーグルが世界中から優秀なIT技術者を集めているように、グローバルなマーケットから人材を確保することに成功しています。
  
『優秀人材の確保、定着』のために、報酬制度、採用方法、育成方法を1から見直す。簡単なことではありませんが、これがサムスンを再逆転するために必要な人事方針ではないでしょうか。

執筆者

山口 俊一 
(代表取締役社長)

人事コンサルタントとして20年以上の経験をもち、多くの企業の人事・賃金制度改革を支援。
人事戦略研究所を立ち上げ、一部上場企業から中堅・中小企業に至るまで、あらゆる業種・業態の人事制度改革コンサルティングを手掛ける。

※コラムは執筆者の個人的見解であり、人事戦略研究所の公式見解を示すものではありません。

バックナンバー